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第65話 そんなつもりで造った訳では

 ダイゴク達と別行動になった僕達はそのまま公国の都である『ザェクセールズ』へと向かう。

 行った事がある人は、皆栄えているとか流石は公国の都とか色々と言っていたが、前世で暮らしていた僕からしたら厚い城壁で囲まれた都市というイメージしかない。

 なのでどれくらい発展したのか気になる。

「ねぇ、ティナ。公都ってどんな所なんだろうね?」

「魔都みたいに栄えているんじゃあないの? 分からないけど」

 そうだな。あれぐらいに栄えていると思った方が良いだろう。

 僕が死んでから千年は経っているのだから、魔都みたいに栄えていないとおかしいよな。

 そんな風に予想たてながら、僕達は公国へと向かう。

 

「あれが、公国の国境にある砦ですぜ」

 御者をしているカブ―モスがそろそろ公国領に着くとの事で馬車から顔を出して砦を見る。

 ふむ。昔、領地に攻め込んできた軍を撃退する為に造った砦に似た造りだな。

 僕が作ったから真似たのかな?

 砦を見ていると、国境だからか入国手続きをする為に並んでいる人達の列も見えた。

 皆馬車や乗り物に乗っているので、それなりに遠くから来たのだろう。

 僕達もその列に並ぶ。

「若様。入国の手続きなどはわたしがしますね」

「そう、じゃあ頼むね」

「はい」

 クレハがそう言うので任せる事にした。

 列に並んでいると、スムーズに列は進んでいきあっという間に僕達の番になった。

 クレハは馬車から降りて、入国審査する兵士の下に行き二~三話をした。

 少しすると。クレハが戻って来た。

「問題無いので進んでいいとの事です」

「分かった。じゃあ、カブ―モス」

「へい。了解」

 カブ―モスが手綱を操って馬車を進ませた。

 それからは問題なく進んで砦を越えた。

 砦を越える時、警備している兵士が「ようこそ。公国へ」と手を振りながら言ってくれた。

 ようやく、公国に入ったのか。

「クレハ。此処からどれくらで公都に着くのかな?」

「この馬車の進み具合でしたら、そうですね。何処の都市にも寄らないのであればざっと二週間後には着くと思います」

「そんな感じか」

 公都は国境からそれなりに離れているのか。

 ふむ。昔の僕の領地よりも広いと考えた方が良いのだな。

 そう考えていると。

 カーン! カーン!

 何処からか綺麗な鈴のような音が聞こえて来た。

 この音は、もしかして。

「綺麗な音ね」

「ああ、心が洗われる音だな」

「何処から聞こえるのかしら?」

 馬車に乗っている人達はこの音に聞き惚れていた。

 ギュルラアアアアアアアアアアアアアアッッ‼⁉

 何処からか獣の雄叫びが聞こえて来た。まるでその音を聞いて喜んでいるようだ。

 皆、その雄たけびを聞いて警戒したが、周りの人達は何と思って無いのか特に警戒した様子もなく進んでいる。

 そんな僕達を見て、クレハは手で大丈夫みたいな事をした。

「ああ。皆そんなに警戒しないでいいわ。恐らく、この雄叫びはここら辺近くに縄張りを持っている『八獣』の一体があげている雄叫びだから」

「『八獣』?」

「はい。この公国が出来る前、初代公王がペットとして飼っていた魔獣六匹と公都近くにある二つの山を住処にしている龍二匹を合わせてそう呼ぶのです」

「へぇ、そいつは初めて聞いたぜ」

「じゃあ、さっきから聞こえるこの音は?」

「わたしも人伝なので詳しくは知りませんが、初代公王は触媒なしに黄金を生み出す事が出来た人で。その黄金を使って大鐘楼を作り、時報にしたとか」

「へぇ、黄金を生み出してそれを独り占めしないで、鐘を作って時報にしたとか」

「よっぽど、良い領主だったんだろうな」

「そうらしいですよ」

 クレハと皆が話しているのを聞いて心の底から叫びたかった。

 違う。あの鐘は時報の為に造ったんじゃない。

 あの鐘は、当時僕が飼っていた魔獣達の餌の時間を教える為に作ったんだ。

 放し飼いにしていたから、魔獣達は好き勝手にしていた。

 その所為か、食事の時間がバラバラだった。

 だったら、皆同じ時間に食べさせた方が作る手間も掛からないだろうと思い、餌の時間を教える鐘を作る事にした。

 どうせ鐘を作るのだったら、海賊王を目指すアニメに出て来たデカい鐘を作ろうと思いついた。

 だって、黄金を幾らでも錬成できたから作るのに問題なかったし、アニメで聞いた鐘みたいな音がするのかなと思い製作した。

 鐘がなったら餌の時間という事を教えると、魔獣達は理解して何処に居ても鐘が鳴ると帰って来て餌を食べた。

 そう言えば、飼っていた魔獣の内の一匹がやたらこの鐘の音が好きだったな。

 僕の傍かその鐘の傍の居たな。

「『八獣』の中に居るだろうな。多分」

 どんなに成長したか見てみたいな。

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