第63話 こんな所で出会うとは
翌日。
店を閉めてまずは公都に行く事を告げると、ユエは「そうか。では、公都で待っているぞ」と言って、先に公都に行ってしまった。村松さん達を連れて。
それからは、色々とお世話になった人達に副都に行く事を告げに行く。
商業ギルドのギルド長のギョブウさんは出来ればこの都市に居て欲しいなみたいな事を言っていたが、僕はやんわりとだが行く事を告げた。
でも、一番不思議だったのは傭兵ギルドのギルドマスターのギムレットは。
『うん。そうか。行くのか。むぅ、そうか……』
何か行って欲しい様な行って欲しくない様などっちだが分からない事を言うので、意味が解らなかった。
とまぁ、色々な事があったが、そうして挨拶回りをしていると数日はあっという間に過ぎた。
元々、都市を出る準備は少しづつだが済ませていたので、それほど時間が掛かると言う事はなかった。
数日後。
宿の前には馬車が沢山並んでいた。
「皆を乗せるためだから、これぐらいは必要だよな」
「そうね。これで都市に来た時みたいに徒歩で歩かなくて良いと思うと嬉しいわね」
ティナは馬車に乗れる事が嬉しいのか。ニコニコしていた。
「でも、馬車が必要なくらいに長距離を移動するという事ですよね。大変ですね」
アマルティアが話に割り込んできた。
「そうだね。でも、その分実入りが良いと思うな」
「だといいけどね」
カーミラが口を挟んだ。
「何か問題でもあるの? カーミラ」
「あのディアーネと言う人が善意で色々と力を貸してくれるわけないでしょう。だから、何か考えがあってという事でしょう」
「それは言えてるわね」
「確かに」
二人はうんうんと頷いた。
「善意だと思うのだけど?」
「はいはい。年上で胸が大きい女性はリウイから見たら良い人なんでしょう」
「むぅ、わたしも大きい方なのですが」
「あんな何を考えている女よりも、もっと身近に良い女は居ると思うのだけどね~」
三人共呆れたような声をあげるけど、ここは無視だ無視。
そうして話していると、ダイゴクが近付いてきた。
「若。準備は整いました」
「そう。じゃあ、頼んだ通りに第二陣は任せるね」
「お任せください。若も何かありましたら無理な事はしないように」
僕達と『義死鬼八束脛』の全部隊を含めるとあまりに人数が多いので、二手に分かれて進む事にした。
第一陣は僕が率いて、第二陣はダイゴクが率いる事になった。
第一陣という事で僕が出発した。
『ヨドン』を出発した僕達は公国へと向かう。
地図はギョブウさんから貰っているので問題ない。
その地図を見て思ったのは、前世で見た地図よりもクオリティが上がっている。
前世の地図は王国を基点にして書かれていたが、この地図は大陸の端から端まで描かれていた。
地図一つ取っても時代が経ったんだなと思うね。
馬車に揺られながら地図を見ていると、突然止まった。
何事だと思い、馬車から顔を出すと森の前で止まっていた。
馬車から出るとアーヌルとヨットエルフが近づいてきた。
「ご報告いたします。マインヘル」
「何かあったの?」
「コノ先ノ森デ潜ンデイル者達ヲ確認」
「武装している?」
「ハイ」
「そうか。じゃあ先手必勝で」
「ヤヴォール」
アーヌル達が答えると、直ぐに部隊を率いて森へと向かう。
少しすると。
爆発音と何か放出している音と悲鳴が聞こえて来た。
あっ、数人生かしてくれと言うのを忘れていた。
大丈夫かな?
そう思っていると、戦闘音が止むとアーヌルが手に何人か掴んで連れて来た。
怪我はしているようだけど生きているようだ。
「くそっ、離せ。このロボット野郎⁉」
アーヌルの掴まれている人の一人が暴れながらそんな事を言い出した。
うん? あの顔を何処かで見た覚えがあるような。
ジッと見ていると。
「あら、あの人」
一緒に第一陣の馬車に乗っているシェムハザがその人を見て何か思い出した顔をしていた。
「うん? シェムハザは覚えているの?」
「何を言っているの。リウイ。あいつよあいつ。潰れた商会の会頭のぼんくら息子よ」
「潰れた商会の会頭のぼんくら息子? ああ、ジャイジェンか」
ああ、ようやく思い出した。




