第36話 ようやく、魔法を伝授されるのかな
食堂に居る使用人達に朝食を頼む。
注文を待っている間、先程から居るローブの人達を見る。
その人達は食堂の席に座り何をするのでもなく、僕達を見ている。
時折、何処かを見ながら話している。まるでそこに誰かいるかのように話している。
「あの人達、何でここに居るんだろうね?」
「あたし達に用があるのは、確実だけど」
「何の用なんだろうね。している事と言ったら、あたし達を見たと思ったら、何処かを見ながら話しているから、何をしているんだが分からないね」
椎名さん達と色々言い合っているが、結局何をしているか分からない。
ユエは先程から話に混じらないので、何かしてるのかなと見たら、ただ黙って茶を飲んでいる。
(ユエの考えも聞いてみるか)
この友人は頭の回転が速く、皆が気付かない事に気付く勘の良さがある。
まぁ、少々ちょろい所があるが、そこを除けば文句がつけるところはない女性だ。
「ユエは如何思う?」
茶を飲んでいたユエは、カップを置いて口を開いた。
「・・・・・・知らん」
溜めて言う事じゃないだろう。
僕はずっこけそうになったよ。
「と、言うのは冗談で、本当は分かっている」
「「「なら、そう言いなさいよ(ってよ)」」」
思わす叫んでしまった。
「済まない。少し揶揄ってみようと思ってな」
「まったく、冗談を言うなら笑える冗談を言いなさいよ」
「ああ、済まない。それで、あのローブを着た連中がしている事だがな」
ユエがそう言うと、顔を僕達に近付けてきた。
僕達も良く聞こえるように耳を傾ける。
「どうやら、魔法の相性を調べているようだ」
「あいしょう? この世界の魔法って相性とかあるんだ」
「どうやら、そうらしい。わたしが食堂に来る前にあの一団が話している所に出くわしてな、それを聞いてみたら、あいつらが此処に来たのは魔法の相性を調べる為らしい」
「どうやって、相性を調べるの?」
「あいつらの話では、妖精を呼んで、その妖精が相性を調べるらしい」
「じゃあ、さっきから、あの人たちが何処かを見ながら話しているのは」
「恐らく、妖精に話し掛けているのだろう。姿が見えないのは魔法で隠しているのかもな」
「成程。それでか」
それで変な方向を見ながら、話しているのか納得した。
「じゃあ、朝ご飯を食べ終えたら、向こうも話してくれるのかな」
「多分、そうだろう。もう、食べた者達は出て行こうとしたら、ローブの奴らが止めて食堂に居る」
言われて見ると、席に座っているクラスメート達は何もしてない。
そこまで、話していたらようやく朝食がやってきた。
「さて、早く食べて話を聞けるようにしましょう」
「賛成、ていうか、あたしお腹がペコペコだし」
僕達は食事を始めた。
やってきた朝食を綺麗に食べ終えた僕達。
周りを見ると、クラスメート達は戦争に参加するしない関係なく居る。
皆も何でここに留まっているのか気になりだしてきた。
その空気を感じ取ったのか、ローブを着ている人達の中から、一人立ち上がる。
「異世界から来た者達はこれで全員か?」
皆互いを見て頷いた。
「そうか。わたしは王国軍魔法師団所属第一魔法大隊隷下第二中隊隊長のカドモス・フォン・フィルマーラです。今日は皆さまの魔法適性を調べる為に来ました」
何か凄い長い身分証明だったが、とりあえず、魔法師団の所属中隊の隊長だと分かれば良いだろう。
「それで、中隊長さんはどうやって調べるんだ?」
天城君が皆に代わって聞いて来る。先程から座って、中空を見ながら話しているだけだから、分からない人から見たら何もしていないように映るだろう。
「いえ、もう適性は調べ終りました」
「なっ、何もしてないにの、どうやってっ⁉」
カドモスさんは手の平を上にした。
すると、手の平がうっすらとだが人型のの物体が見える。
その物体が段々と、形が作られていく。やがて、それは羽が生えた小人が現れた。
小人の大きさは、大人の掌ぐらいの大きさだ。
「先程から、勝手ながら妖精が皆様の適性を調べさせてもらいました」
『ピイ』
妖精は手を挙げて、可愛らしい声をあげる。
「俺達を調べたっていうけど、どんな方法で調べたんだ?」
「妖精の『鑑定魔法』で調べたのです」
鑑定魔法っ⁉
それを聞いて、THEファンタジーだと思った。
僕は二人が話しているのに、口を挟む。
「その魔法は人間も使えるのですか?」
「いえ、これは精霊族にしか使えません。あと、魔人族にも一部使える種族があると聞いているぐらいです。妖精も精霊族なので使えます」
え~、鑑定魔法が使えないの。
それを聞いて、上がっていたテンションが段々と下がっていく。
ついでに、もう何個か聞いておく。
「他に、人間が使えない魔法は有りますか?」
「他使えない魔法と言うと、竜人族が使う竜魔法。天人族が使える純魔法。後は特殊な職業を得る事で使える固有魔法ぐらいですな」
「その特殊な職業って、何ですか?」
「確認されている職業で言えば『符術士』『呪術士』ですな。他にもあるそうですが、今の所確認されておりません」
更に話を聞くと、『符術士』と『呪術士』は獣人族にしかいないそうだ。
(元の世界でも、動物を殺すと呪われるとか聞くけど、それに関係しているのかな?)
まぁ、関係性が分からないので断言はできない。
「それでは、今から名前を挙げる方々は、我々についてきて下さい」
カドモスさんは僕達の名前を挙げていく。
中には、戦争に参加しない者も居た。
当然その中には、天城君と西園寺君と僕が入っていた。
勿論マイちゃん、ユエ、椎名さんは入っていたが、村松さんは入っていない。
「まぁ、当然かな。あたしは使える職業な気がしなかったし~」
「村松さんの職業って確か・・・・・・」
「あたしの職業は『重戦士ヘヴィーウォーリア』だよ」
村松さんの見た目からは想像も出来ない職業だ。
「では、行きます。呼ばれなかった方々は申し訳ございませんが、もう少しこの場で待っていて下さい」
それを聞いて、皆騒ぎ出しす。
クラスメートの一人が席を立ち、カドモスさん達の元に寄ってくる。
「何故、待たないといけない?」
クラスメートで戦争に参加する組の一人で、名前を遠山左衛門尉春之進君が皆に代わって聞く。
二メートルある身長に、太い眉。筋骨隆々の身体。
少々、顔が老けているので同い年には見えない。正直プロレスラーと言われた方が納得できる。
性格は物静かで温厚な人だ。
クラスで男子に嫌われている僕にも公平に接してくれる人だ。
居るだけで存在感があるので、クラスの皆は「影ボス」とか言っている。
カドモスさんは大人としては高い方だが、遠山君はカドモスさんよりデカい。
なので、質問している方が見下ろすような形になっている。
「そ、それについては、この後来る。戦士団の者達から説明がありますので、もう少々お待ち下さい」
遠山君の圧迫感に押されて、カドモスさんは少し怯えながら話す。
「・・・・・・分かった」
それだけ言って、遠山君は席に戻る。
カドモスさんは掻いた汗を、袖で拭く。
「では、皆さん。参りましょう」
名前を呼ばれた僕達はカドモスさん達に案内されながら、食堂を出る。




