第44話 参考に訊いてみるか
で、一晩考えた結果。
とりあえず、ラサツキ家の現当主がどんな人か人となりを聞いてから『八獄の郷』に行くかどうか考える事にした。
さて、此処は母さんの一番の舎弟のダイゴクに訊くのが一番良いなと思い、店の開店時間に合わせて、朝の挨拶にくるダイゴクに訊ねようとしたら。
「えっ、今日、ダイゴクは来ないの?」
「はい。所用で来れなくなりました。代わりに、わたしが警備を担当します」
用事があって来れないダイゴクの代わりにクレハが警備をしてくれる事になった。
ううむ。どうしたものか。
「何か問題でも?」
「いや、僕の御祖父さんって、どんな人だったのかなと思って」
「若様の祖父様ですか。それでしたら、わたしは国を出た後も会っていますからどんな方か良く知っていますよ」
「へぇ~、って、えっ?」
国を出た後も会っているって?
「正確に言いますと、ハバキ様が魔国に向かった後、ダイゴクは知りませんが、わたしは何度か国に帰っているんです」
「へぇ、そうなんだ」
だとしたら、御祖父さんがどんな人か分かるな。
「じゃあ、御祖父さんはどんな人なの?」
「そうですね。ハバキ様の父上、御名前はカリショウ様と言います。性格は厳格ですね。ハバキ様が国を出たと聞くなり『もう、あの者は娘でも何でもないわっ‼ 何処ぞで野垂れ死ぬが良いっ』と言ったそうです」
「ふむ。それはかなり厳格だね」
「と、言うのは表向きの顔で、実際は結構親バカですよ。何せ、ハバキ様に帰って来るようにと追手を出したのはカリショウ様ですから」
うんん? 何か一瞬にして厳格なイメージから、子離れ出来ない親みたいなイメージになったぞ。
「ハバキ様は偶にわたし達に手紙を出していたのです。で、その手紙で、魔国でどんな暮らしをしているのか大まかに分かりましたので、カリショウ様にそれとなく元気にしているとお伝えしていました」
「そうなんだ。で、どんな反応だった?」
「そうですね。娘の安否が分かり素直に喜ぼうとして周りの目があるので、顔を引きつらせながら『ふん。あんな娘の安否など知っても嬉しくも何ともないな』と言って、話の続きを促したりします」
人の目があるから素直に安否を喜べないけど、気になるので話は聞くか。
これって、ツンデレ?
「ハバキ様が結婚したという話をしたら大変でした。話を聞くなり、立ち上がって『誰ぞあるか、儂の武具を用意しろ。それと、兵を集めろ‼ 魔国に攻め込み、魔王の首を取らんっ』と言い出した時は止めるのに苦労しましたよ」
その時の苦労を思い出したのか溜め息を吐くクレハ。
「そ、そうなんだ」
「まぁ、カミノサラ家の現当主が遊びに来ていたので、腕ずくでとめてもらいました。その後は、暫く静かになるまで牢屋に入れられました」
ラサツキ家の現当主が牢屋に入れられるとは良いのかな?
「ですので、『八獄の郷』に行ってもカリショウ様に正体がばれない様にしたら、後は問題ないと思いますよ」
「そうか。ありがとう」
まぁ、遠くから一目見るぐらいなら良いだろう。
リウイがクレハと店の外で話している頃。
「む、むむ・・・・・」
ティナは扉を少しだけ開けて、二人が話をしているのを見ていた。
「何をしているの? ティナ」
一緒に店番をしているソフィーディアが呆れた顔で娘を見ていた。
「だ、だって、母さん。リウイとあのクレハって人とどんな話をしているのか気になって」
「はいはい。早く開店準備をしないと、リウイ様に怒られるわよ」
ソフィーは何を言っても無駄だと思い、とりあえず仕事はしろとやんわりと促した。
だが、アルティナは話を聞かず、そのまま話に耳を傾けていた。
話が終ったリウイが、アルティナが扉の隙間から見ている事に気付きお説教をした。




