第40話 うわっ、喋った⁉
翌日。
開店準備をしていると『鳳凰商会』の人達が『ファンへ商会』から強奪、もとい倉庫の中に入っていた商品に類似した商品を持ってきた。
「わざわざ、ありがとうございます」
「いえ、では、自分達はこれで」
商品を持って来てくれた人達が僕に一礼して、店に戻って行った。
「さて、商品の確認をするか」
僕は荷車を見ようとしたら、既に武闘派の方々が荷車の中を見て、どんな商品があるか見ていた。
開店準備を手伝わないで、何で店に居るのかと思ったら、そういう訳ね。
まぁ、良いけどね。
「ボス。これ何か、良いんじゃあないですかい?」
カブーモスが荷車の中から、何か剣を持って来て僕に見せる。
随分と細身だけど、それなりに長いな。
刃長は大体六十三センチはあるな。
鍔の部分も、何か中国風の造りになっていた。
「これを僕にくれるのかい?」
「ええ、ボスも何か一つぐらいは貰いませんと、他の人達も取る事が出来ませんよ」
「そういうものかな?」
別に欲しい人が居たら貰えば良いと思うのだけどね。
とりあえず、カブーモスが選んだのから、ありがたく貰っておくか。
カブ―モスが持ってきた剣を手に取り、刀身を見る。
「これは鋒両刃造の剣か」
片刃だが反対側の峰の部分から数センチほど刃になっている。
珍しいな。この世界でもこんな剣があるんだ。
「如何ですか?」
カブーモスが僕の顔をジッと見る。
これは受け取らないとまずいか。
「ありがとう。これからも使わせてもらうよ」
「ところで、この剣の銘は?」
「さぁ、何処にも銘がうたれてないので、無銘じゃあないんですか」
「そうか。じゃあ、僕が銘をつけても良いのか」
「良いと思いますぜ」
う~ん。何て、銘にしようかな。
鳥の名前の様な銘は却下だな。もっとカッコいい銘をつけよう。
「良し。叢雲と名付けようっ」
『我はそんな名前ではない』
えっ、なに、何処からか声が聞こえて来たんだけど?
誰が話しかけて来たんだと思い、僕は周囲を見る。
『何処を見ている。我は此処だ。此処』
その声は僕が持っている剣から聞こえて来た。
「って、剣が喋った⁉」
「これ、もしかして魔剣か⁉」
おお、ビックリだ。まさかインテリジェンス・ソードだったとは。
「誰かっ、この剣が入る大きい箱を持って来て、それと布もお願い。縄でふん縛って箱の中に入れて、深く穴を掘って封印しないとっ」
『待て待てっ、何で、儂が話しかけた瞬間、いきなり封印するんじゃあっ』
「えっ、何か手に負えそうもないので、誰かに売っても巡り巡って不幸が自分の身に降りかかりそうだから、封印が一番良いと思うけど」
『わ、儂をそんなそこいらに居る血を欲しさに持ち手を操る魔剣と一緒にするでないわっ。この大戯けがっ』
「そうなの?」
『ふん。そんな魔剣共と一緒にするなど不愉快じゃ』
何か、この人? ぷんすかと怒っているようだ。
「はぁ。そうですか。じゃあ、カブーモス」
「はい」
「悪いけど、これは皆に見せてくれる?欲しい人が居たらあげるから」
「いいんですか? かなり良い魔剣だと思いますけど」
『そうじゃ。儂はこれでも凄い剣じゃぞ。その剣をこうして手に取る事が出来たのじゃから、有り難く腰にさすが良い』
「ふうむ。でもな」
正直、こんな魔剣使う事あるかな。僕はどちらかと言うと、頭を使って勝つ方策を練るから、あまり振らないと思うのだけど。
「ほっほほ、何やら面白い物を手に入れたようじゃな」
この声はアクパラか。
声が聞こえた方に顔を向けると、小さい亀が宙に浮かんでいた。
「アクパラ。この剣はどう思う?」
「使う使わないに関わらず、魔剣を持ってる事で、己の権威を高める事が出来るぞ」
ふむ。所謂、あれか。会社の社長が良い服を着たり、高そうな時計をするというみたいな感じか。
「……まぁ、これも何かの縁か。僕の佩剣になるけど良いかな?」
『うむ。儂は文句ないぞ』
「じゃ、銘を聞かせてもらるかな」
『我が銘はアンゼリカだ』
「アンゼリカね。長いので、愛称はアンで良いね」
『ふむ。良かろう』
こうして、僕は魔剣を手に入れた。
まぁ、何かの役に立つだろう。多分。




