第38話 これがざまぁっと言うのかな?
顔を青くしたと思ったら、今度は赤くさせるジャイダン。
さて、次は何色になるかな?
「ぬ、ぬうう、……小僧。本当にこれは、お前の店の者がその覆面を被った者達から奪った物なのか?」
「と言いますと?」
「実は、その覆面を被った者達と言うのが、お前の店の者達で、そして、その覆面を何処かに捨てて、都市に戻って来ただけではないのか?」
ほぅ、成程。伊達に大店の会頭をしている訳ではないようだ。
こんな時でも、頭を働かせるとは凄いな。
だけど、こっちの方が一枚上手だよ。
「成程。そちらの言い分も最もですね。では、門を守る衛兵の人にその事を聞けば分かりますね」
「ふん。その通りだな」
これなら負ける事が無いと思ったのか強気な態度を取るジャイダン。
「では、衛兵の人に訊ねに行く間、この商品を預けても良いですか?」
「預ける? 誰にだ」
「ああ、大丈夫です。そろそろ、来るはずだから」
時間的にはそろそろ来る筈なんだけど。
「ああ、すいません。ちょっと退けてもらえますか。すいませんね。ちょっと通してくれますかっ」
聞き覚えがある声が聞こえて来た。良いタイミングだ。
「ふひ、いやぁ、お待たせしました。リウイ様」
「いえいえ、丁度いい時に来てくれました。トーマスさん」
僕はニッコリと笑いながら、トーマスさんと挨拶する。
僕がトーマスさんと挨拶する姿を見て、ジャイダンは目を見開かせていた。
「ほ、『鳳凰商会』ヨドン支店支店長のトーマス⁉ どうして、此処に?」
「ああ、おはようございます。ジャイダンさん。いえ、うちの店の会長とリウイ様は懇意の仲との事で、いろいろと商売で便宜をはかって貰えているんです」
「いえいえ、こちらの方が色々として貰っておりますよ」
「はは、ご謙遜を」
お世辞を交えた挨拶を交わす僕達。
それを見てジャイダンは今度は土気色の顔になった。
まずい相手に嫌がらせをしたのではという顔だな。
更にジャイダンはトーマスさんの後ろの人物を見て、ギョッとした。
「お前はっ⁉」
「……どうも」
昨日まで『ファンへ商会』でジャイダンの息子の護衛をしていた人だ。
目端が利きそうだし、悪い人ではないようなので、昨日捕まえた人達を解放する際、密かに僕の下に付かないかと誘ったら快く頷いてくれた。
他の人達は解放する際、リッシュモンドに影の死霊という死人を憑りつかせた。
解放する際、僕の店に嫌がらせした事をジャイダンに報告する事以外の事をしたら、憑りつかせた影の死霊が呪い殺して、未来永劫昇天出来ない、と。更に、僕達がする事を誰かに話しても同じだと伝えた。
まぁ、嘘だけどね。
で、この護衛の人には、もう二つの仕事を与えた。
それは『ファンへ商会』から奪った商品が、僕の店で見かけたという事を、このジャイダンに言うという役目と、もう一つはトーマスさんを呼ぶという役目を与えた。
「お前、どうして此処にいる?」
「ああ、うん。あんたのやり方に付いて行けなくなったから、此処にいるんだよっ」
「貴様っ、この恩知らずがっ」
「いや、今迄、その恩義は十分に返すぐらいの働きはしたぜ」
「ぐぬぬぬっ」
「まぁ、そちらの店の事情は知りませんが。とりあえず、衛兵の所に行きませんか。先頬のジャイダンさんの言い分が正しいかどうか分かりますから」
「う、うむ。そうだな」
あっ、今度は何か祈りだした。
まぁ、これでもし自分の言い分が間違っていたら『鳳凰商会』の取引先に難癖をつけた事になる。
その上、店には商品と資産と言える物が無い。隠し財産があるのかどうかは分からないが、流石にそこまで毟り取るのは酷だろう。
この都市で『鳳凰商会』に睨まれたら商売が成り立たなくなるだろうな。可哀そうに。
僕達はトーマスさんに商品を預けて、衛兵の詰め所に向かう。
トーマスさんも付いて行くと言うので、商品は一緒に付いて来た人達が預かってくれるそうだ。
それで、僕達は衛兵の詰め所に行き、事情を話して、その時間、各門を警備していた衛兵の人達を呼んで話を聞いた。
「黒い服面を被った奴らなら見たぜ。何か、馬車に零れそうな位に箱を載せて出て行くのを見送ったぜ。俺が何処に行くんだって聞いたら、何も答えないから愛想が悪いなと思ったぜ」
と各門を守っている衛兵達が証言した。更に。
「ああ、このリウイの店の店員だろう。俺は見たぜ。何度も顔を合わせてるから顔は覚えているぜ。覆面を被った奴らの後に門から出て行くのを見送ったぜ。こっちが声掛けたら、話に乗ってくれるから、良い奴らだよな」
と西門を警備していた衛兵が証言した。
その証言を聞いてジャイダンは膝をついた。
ちなみに、その黒い服面を被った人達は『義死鬼八束脛』の幹部の人達が自分の部隊を率いて、各門から出ただけだ。
倉庫の方はヨットエルフ達が倉庫ごと持ち上げて、そのまま『義死鬼八束脛』の人達と合流して、商品を集める。
倉庫は証拠隠滅の為に壊して。馬車も必要な分以外は壊した。
その後、狩猟班が事前に教えられた所に行き商品を回収する。
はっはは、こうも上手く行くと怖いな。
さて、手に入れた商品は半分は『鳳凰商会』にあげよう。事情は知らないだろうけど、これぐらいはしても良いだろう。
残りの商品はどうしようかな?




