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第37話 これが

 その後も商人達はひっきりなしに来て、商品を買って行く。

 コレを見越して商品を大量に用意していたので、今の所問題はない。

 さぁて、狩猟班は何時来るかな。

 そう思いながら、仕事をしていると、狩猟班の一人でバイアが店に駆けこんできた。

「リウイ。そろそろ、狩猟班が都市に入るぜっ」

「そうか。ありがとう。じゃあ、もうバイアはやる事はないから宿に戻って休んで良いよ」

「ああ、分かった。……なぁ、聞いても良いか?」

 店内には客は居ないのを確認する所を見ると、今回の事で聞きたい事があるのだろう。

「何だい?」

「どうして、こんな面倒な仕返しをする事にしたんだ。別にダイゴク達に店にカチコミを掛けさせた方が簡単だろう?」

「こうした方が利益が出るし、その上足がつかないからだよ」

「利益が出るのは分かるが、面倒くさくないか?」

「昔読んだ本で謀多きは勝ち、少なくば負けるって言葉があるんだ」

「どういう意味だ?」

「簡単に言えば、手間を惜しまなければ勝つが、惜しめば負けるという意味さ」

 バイアに分かりやすく言うとしたら、こんな感じだろう。

「はぁ、ようはあれか。今回は手間を惜しまなかったから、お前が利益を得たと言いたいのか?」

「そんな感じだね」

「了解。じゃあ、あたしは宿で休ませてもらうぜ」

 バイアはそう言って、店から出て行った。


 数時間後。


 店の前が騒がしくなった。

 これは来たようだ。

 そう思っていると、今回の狩猟班のアングルボザが店に入って来た。

「リウイ。ちょっと見てくれないか」

「ああ、分かった」

 僕はアングルボザに言われて、店を出た。

 店を出ると、馬車のの周りを多くの人達が囲んでいた。

「こいつは凄いな。どれもこれも一級品の武具に道具だ」

「こういう物を持って仕事をしたいものだな」

「ああ、言えてるぜ」

 馬車を囲んでいる人達が馬車に載っているを見てそう言っているので、僕も身を乗り出して馬車の載っている物を見る。

「おお、これは見事な逸品だ。何処で手に入れたんだ?」

「狩猟している最中に、黒い覆面を被った一団に出会って怪しいと思い声を掛けると、いきなり襲い掛かって来た。撃退したら、その一団が馬車を置いて逃げ出した。それで、馬車の中身を確認すると、これらが馬車に載せられていた」

「そうなんだ」

 ふむ。意外とアングルボザは腹芸が得意と見た。

 棒読みではなく感情を乗せつつ、それでいて、これらの物を手に入れた経緯を、周りの人達が不審に思う事が無く聞かせていた。

 父親があんな感じなので、てっきり同じ人種だと思っていたが、失礼だったな。

「そうか。では、早速店の倉庫に運んでくれ」

「了解した。おい、入れるぞ」

「はいはい~、お宝、お宝~」

「これで、わたし達も億万長者の仲間入り~」

 同じ狩猟班のフリとゲリが馬車に載っている商品を丁寧かつ慎重な手つきで手に取り、倉庫に運ぼうとしたら。

「どけ、退かんかっ、貴様らっ⁈」

 馬車の周りにいた人達を押しのける様な声が聞こえて来た。

 誰だと思っていると『ファンへ商会』の会頭の・・・・・・じ、じゃいなんだっけ?

 僕が名前を思い出そうとしていると、その会頭さんが馬車に載っている商品を手に取り鑑定する。

「間違いない。うちの倉庫にあった商品だっ。おい。お前達、これを何処で手に入れた?」

「何処と言われても、僕の店の商品に使う素材を狩っている者達が、覆面を被った怪しげな一団と遭遇して、不審に思って声を掛けたら、襲い掛かってきたので撃退したら、その一団が馬車を置いて逃げ出したので、こうしてその馬車を持って来たのです」

「むう、そうか。これらの商品は、昨日の未明に盗まれたうちの店の商品だ。なので、返却をしてもらいたいのだが」

「なんと、そうだったんですか⁉ これは驚いた。そうですか。分かりました。覆面を被った怪しい一団が使っていた馬車に載っていたというのであれば、恐らくこれらは盗品でしょうね。そうですか。分かりました。では、そちら(・・・)()店の(・・)商品(・・)という(・・・)証拠(・・)を見せて下さいませんか?」

「な、なに?」

「ですから、そちらの店の商品という証拠を見せて下さい。そうしたら、お渡ししますよ」

「儂がこれらの品はうちの店の商品だと言っているだろうっ」

「しかし、それだけが証拠というのはちょっと無理があると思いますよ」

「この『ファンへ商会』の会頭のジャイダンの言葉が信じられないと言うのかっ⁈」

 ジャイダンだったか。そうだ。で、息子がジャイジェンだ。ようやく思い出した。

「と、言われましても、商人は口で仕事をする者です。言葉だけを信じると言うのはどうかと思いますが?」

「な、何だとっ‼」

「出来れば、これらの品が、そちらの店の商品だという証拠を見せて下さい」

「証拠だと?」

「はい。そちらの店で扱っているというのであれば、リストがある筈です。そのリストと照らし合わせて、そちらの店の商品はそちらにお渡ししますし、失礼な事を言ったお詫びに、リストに載っていない商品もそちらにお渡しします。ですので、リストを見せて下さい」

 僕はニッコリと笑顔を浮かべながら訊く。

 すると、ジャイダンは顔を青くしていた。

 まぁ、それも当然だ。アンビアに頼んで、ジャイダンの店に蟻を大量に送り込んで、店に居た者達が店の外に出た隙をついて、ダイゴク達に店に侵入させて、金庫の金、商品リスト、食料品以外店で取り扱ってる物は全て回収させたんだから。

 つまりは商品リストは無いという事だ。

 くっくく、店で取り扱っている商品が目の前にあるのに、自分の店の物だという証拠が無い。

 これが、僕の家流の嫌がらせだ!

 店内のドアを少しだけ開けて、外の様子を窺うアルティナ。

 そして、話を聞いていた。

「リウイもえげつない事をするわね~」

「さ、流石はリウイ様」

 アルティナとシャリュはドン引きしていた。

 事前にどんな事をするかは聞いていたが、聞くと見るとではここまで違うのかと思う二人。

 しかし、アマルティアだけは違った。

「う~ん。正に神算鬼謀といえる知略。素晴らしいですリウイ様♥」

 アマルティアは頬を上気させて、うっとりとした顔でリウイを褒めていた。

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