第25話 あっ、こんな所に
ティナとカーミラに運ばれて? 僕達は中央区の噴水広場に来た。
二人は、僕を地面に下ろして、周りを見る。
「母さん。まだ居ない様ね」
「何処に行ったのかしら? 先程の場所とさほど離れていないし、噴水があるから目立つ筈なのに」
「……何をしているの? 貴方達は」
背後からソフィーの声が聞こえて来たので、振り返るとソフィーとランシュエが居た。
「あ、い、う~、き、きぐうね。かあさん、こんなところであうなんて……」
ティナは目を泳がせながら棒読みしている。明らかに怪しいとしか思えない。
「奇遇ではないでしょう。貴方達。わたし達が店を出てからずっと付いてきたでしょう」
「えっ⁈ なんのこと?」
「何を言っているのか。わたくし達は分からないのですが? わたくし達は今日はお休みなので、ちょっと買い物でもしようと思って、偶々中央区に来て、偶々リウイを見つけただけですよ」
ティナがボロを出すと思ったのか、カーミラが加わり誤魔化そうとした。
「嘘を仰いなさいな。今さっき、ランシュエちゃんから聞いたけど、店を出た時からずっと付いてきたと言っているわよ」
ソフィーがそう言うと、ランシュエは済まなそうに頭を下げた。
「これはその、あれよ。母さんにも秘密にして、リウイの護衛をしようと思ってついてきたのよ」
「そうねっ。わたくしもそう思っていたのよ」
二人共。目が泳ぎ過ぎだよ。
「……はぁ~、まぁ良いわ。聞いても答えてくれないようだから、何も訊かないであげるわ」
溜め息を吐きながら、ソフィーはこれ以上訊くのは止めた。
二人は安堵の息を漏らした。
「リウイ様。娘達と一緒に行動してもいいですか?」
「僕は良いけど……」
ティナ達は如何なのだろう。
そう思い、目を向けると、ティナ達は肩を竦めた。
「まぁ、こうして見つかったんだし、一緒に都市を見て回りましょう」
「そうね。リウイ達の後を追いかけても暇だしね」
「ご一緒しても良いですか? リウイ様」
「僕は良いよ」
そう言うと、三人はホッとしていた。
「さて、中央区を回り終えたし、次は西区を見に行こう。時間があったら南区を見るでいいかな」
「こっちはそれでいいわ」
「わたくしも問題ないわ」
「わたしも」
「リウイ様にお任せします」
皆、反対はないようなので、僕達は西区に行く事にした。
少し歩くと、直ぐに西区に着いた。
先程まで賑やかな声が飛び交っていた中央区と違い、こちらの方は閑静であった。
人がまばらに歩いているが、店らしい店は特にないな。
そうして、何かないかと見ていると、見慣れたシンボルマークを見つけた。
赤い羽毛の鳥が対になったマーク。
「『鳳凰商会』こんな所にあったのか」
こんなに早く見つかるとは思わなかった。
 




