閑話 ソフィーの胸中
ソフィー視点です。
前話ではぐれた理由がわかります。
「ふ~む。この都市で売られている物は主に海産物が多いな」
「そうですね」
都市にある露店や店を回りながら、商品を見て回るわたし達。
今後は何を取り扱うかは、隣にいる幼い主人リウイ様が決めるだろう。
赤子の頃から娘と一緒に育てて来たので、不敬でしょうけど息子同然に思っている。
リウイ様が生まれた年、夫がある魔物と戦い相打ちとなった。
それにより、暮らしが苦しくなった。生まれたばかりの娘を抱えては職を探すのも困難だっただろう。
其処を夫の上官であった人が、末の弟の乳母を探しているという話を聞いた。
娘を産んだばかりなので、乳は出る。その上、学者とは言えないが知識も教養もそれなりにある。
わたしはリウイ様の乳母になる話を受けた。
上官の推薦により問題なく乳母になる事が出来た。
それからは、娘を育てながらリウイ様を育てるという生活だった。
赤ん坊の頃のリウイ様は手が掛からない子であった。
お腹空いた時や、トイレなどをした時は大きな声で泣くが、それ以外は静かだし泣かなかった。
娘のティナはとにかく泣いた。ので、余計にそう思ったのかもしれない。
最も大きくなると面倒な事を起こす子になるとは想像も出来なかった。
それでも、あの小さな子が今では親元を離れて、こうして商売をするとは、予想だにしなかった。
そのお陰か、最近はわたしに相談する事が無くなり、少し寂しいがこれも大人になったのだと思う事にした。
主を見ていると、背後から視線を感じた。
目だけ動かして視線の先を追うと、其処には怪しい人物達が居た。
身なりが少し汚れているので、恐らくゴロツキだろう。
大方、わたし達を見て、カモと思っているのだろう。
「リウイ様。少し離れますね」
「うん」
考え事をしていたからか、上の空であった。
何事も考える性格の主。考えるよりも行動する娘と正反対だ。
同じ教育をしたのに、どうしてこんなに違うのかしら?
内心で不思議に思いながら、わたしは近くにある路地に入る。
路地に入ってすぐに、路地から男性が四人現れた。
逃げれない様に、背後にも四人が現れた。
「……何か御用でしょうか?」
わたしが男性に問いかけると、男性達はニヤニヤと笑みを浮かべた。
「ちょいと、顔を貸してくれないか? 奥さん」
おくさん? ああ、リウイ様を連れているから、親子と思われたのね。
まぁ、それぐらい歳の差はあるから仕方がないわね。
「どんな御用でしょうか?」
穏便に済むなら穏便に済ませたい。
リウイ様の方は密かについてきた娘達に任せれば良い。
最初、リウイ様に誘われた時は娘も誘ったのだが。
『今日は用事があるから~』
と明らかに目を反らしながら言っていたので、何か有ると思ったが、まさか、わたし達の後に付いて来るなんて、何がしたいのかしら?
「へへ、まぁ、悪い話じゃあないぜ。お互いに」
男がわたしの胸を見ながら言う。
ふぅ、何を考えているか、その視線だけで丸わかりね。
「お断りします」
此処はキッパリと告げる。
「そうかい。じゃあ、少し痛い目にあってもらおうか」
男の一人が顎をしゃくると、男達がナイフや棒を出して構えた。
構えからして素人だと思った。
「はぁ、仕方がないわね」
わたしは溜め息と共に、手を翳した。
「『水王凄槍』」
わたしがそう唱えると、手に水が集まり槍の形になった。
その魔法の槍を手で振り回した。
「わたし、内政官になる前は異民族や魔獣討伐に出た事もあるのよ」
ニコリと微笑みながら言うと、男達は腰が引いていた。
わたしは槍を構えて、男達に襲い掛かった。




