第24話 はぐれた
「ふ~む。この都市で売られている物は主に海産物が多いな」
「そうですね」
中央区を歩き回り、露店やら店を回っていると、海産物を扱っている店が多いな。
海産物と言っても別に魚介類を売っている訳ではなく、真珠とか珊瑚なども売られている。
流石は異世界なのか、珊瑚と一言で言っても色々な物がある。
例えば、海水に含まれている微量の貴金属を吸収して、金を作る事が出来る黄金の珊瑚とか、宝石を生み出す事が出来る宝石の珊瑚などがあった。
と言っても、今あげた二つは高級品で簡単に手に入らない。
まぁ、陸地の国に売れば買った時の倍ぐらいで売れるかもしれないが、其処まで運ぶ運搬費など入れたら、本当にそれだけの価値があるか分からないな。
他で人気な物は貝殻を加工したり、魚の姿をしている魔物を狩って骨やその身を加工して売っているぐらいだ。
「湾岸都市だから海産物を売りにしているか。だとしたら、山で採れる物を売ればかなり売り上げが伸びるか」
う~む。ユエと連絡を取りたいけど、今、ユエが何処に居るか分からないし『鳳凰商会』が何処にあるのかも分からないからな。
それにヨットエルフ達はまだ帰還してない者達が居るから移動したら、合流するのが大変だろうな。
さて、どうしたものか。
「……ソフィーはどう思う? って、あれ?」
隣に居た筈のソフィーが何時の間にか居なくなっていた。
というか、此処って何処だ?
「やっべえ、もしかしてはぐれた?」
この歳になって保護者とはぐれるとかかなり恥ずかしいな。
迷子になった場合は、その場から動かないのが鉄則だけど、冷静に周りを見た。
色々な家があるが、一つ共通点があった。
二階建て家で間取りが広い上に、皆看板は無く扉が閉まっている。
昼なのに、あまりに人通りが少ない。
更に家の窓から女性が顔を出して、道歩く人に愛想良く振る舞っている。
中には投げキスをしている人も居た。
「……もしかして、此処って花街?」
花街というのは娼館が集まっている区域の名称だ。
僕が領地を持っている時も、そういう所は作ったが、何故かソフィーが僕にその類の案件をさせる事無く、リッシュモンドと片付けていたので、そういう所があるという事しか知らない。
この都市に来て、まだ日が浅いから何処をどう行けば、店に戻れるか分からないからな。どうしたものか。
「あら、どうかしたの。僕?」
そう僕に声を掛けて来たのは、露出が激しい恰好から娼婦のようだ。
「え、えっと、みちにまよって」
子供っぽくたどたどしく言う事にしよう。
「そうなの。何処に行きたいの?」
あっ、そう言えば、はぐれたら、何処で待ち合わせしようか決めていなかった。
此処は店に行った方が良いかな?
そう思っていると。
「あっ⁉ 居たっ」
「こんな所に居たのねっ」
「って、こ、ここはっ!」
娼婦の人と話していると、ティナ達の声が聞こえた。
「あんたね。いい歳してはぐれるんじゃないわよ」
「もう心配したわよっ」
ティナとカーミラは安堵の息を漏らした。
そして、二人は僕の両脇に手を入れて持ち上げた。
「ほら、行くわよっ」
「ソフィーさんが気付く前に戻らないと大変な事になるわ」
「えっ、それはどういう意味?」
僕がそう尋ねても、二人は答えないで、僕を引っ張っていった。
ランシュエは僕と話していた娼婦の人に頭を下げて、慌てて僕達の後についてきた。




