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閑話 女達の愚痴

 今回はアルティナ視点です。

「……まったく、リウイにも困った者ね」

「本当よね」

「リウイ様は優しい方ですから」

 あたしとカーミラとアマルティアというメンバーで茶を飲んでいた。

 普段なら絶対に有り得ないし、不倶戴天の敵とは言わないけど、恋敵でお互いに認識している。

 そんなあたし達がどうして、暮らしている宿の一画を借りて茶を飲んでいるかと言うと、最近リウイのお嫁さん候補が一気に増えてきたので、これはどうにかしないといけないと思い、休みの日に合わせて、あたし達は話し合う事にした。

 店自体は今日もやっているのだが、何かリウイが店が順調になった途端、ふくりこうせい? とかゆうきゅうきゅうか? とか言うのを言い出した。

 意味を訊ねたのだけど、あたしにはサッパリ意味が分からなかった。

 とりあえず、休んでも給金が出るという事だけ分かった。

 そんな訳であたし達は休みを貰っている。

 で、集まって話そうとしたのだが、最初は牽制しあっていた。

 どうにも、この二人共色々な事があったので、腹を割って話すべきかどうか迷っていた。

 二人も同じ考えなのか、胸襟を開かない。

 このままでは、時間だけが過ぎていくと思った所に。

「ほっほほ、邪魔するぞ」

 何か何処からか年寄りみたいな声が聞こえて来た。

 あたし達が周りを見ると、何か大きな亀が背中の甲羅にお盆を乗せていた。

 お盆には何かの料理が盛られいる。

「この亀。確か、あたし達がこっちの大陸に来る時に乗せてくれた亀じゃない」

「確か、霊亀という魔獣と聞いているわ」

「お名前はアクパラという聞いていますが」

 普段はリウイの肩に乗ってジッとしている事が多い魔獣がどうして此処に居るのかしら?

「話し中すまんの。主が、茶菓子にこれを持って行ってくれと頼まれたのでな」

 アクパラはお盆に乗せている物を見せる。

 何か茶色やら白いのやら黒茶色の板みたいなモノが並んでいるのだけど。

「なに、これ?」

「何でも新しく発売する新商品とか言っておったぞ。お主らに試食してもらいたいそうじゃ。名前は確かチョコレートとか言っておったのう」

「「「ちょこれーと?」」」

「初めて見るけど、どんな味かしら」

「頂きます」

 カーミラとアマルティアの二人が皿に乗っているチョコレートを口に入れた。

「うんっ。なにこれ、苦いんだけど、それと同じ位に甘いわっ」

「お、おいしいですっ」

 二人が目を見開かせながら、チョコレートを美味しそうに頬張る。

 あたしも口に入れる。

「うん。ほんとうに甘いわっ」

 見た目はちょっと黒いので、どんな味なのか分からなかったけど、これは意外にイケるわね。

「ほっほほ、反応は良いようじゃな。では、儂はこれで」

 アクパラは首を伸ばして、皿を頭に乗せて、あたし達が使っているテーブルに皿を乗せると、そのまま何処かに行った。多分、リウイの下に戻るのだろう。

 その後、あたし達はこのチョコレートの味を堪能しながらおしゃべりをした。

 甘い物を食べていい気分だからか、話しが弾んだ。

 そして、今に至る。

「もう、どうしてこう女の人を引っ掛けて来るのかしら」

「魅力的な事も分かるのだけど、どうして、わたくし達の気持ちに気付かないのかしら」

「アプローチは掛けているのですけどね」

 あたし達は溜め息を吐いた。

 お互い面倒な相手を好きになってしまったものだ。

 あたしは母さんがリウイの乳母だったから、その関係で一緒に居る様になった。

 まぁ、あたしの方が先に生まれたから、お姉ちゃんとして面倒見ないといけないと思って一緒に居ただけだけどね。

 子供の頃から、リウイは危なかっしい所があったので、目を離すと、何でそんな事をしているのみたいな事を良くしていた。

 それで一緒に遊んだり、悪戯したりした。

 時々大人っぽい事をしたりするから、胸がキュンとしたのよね。

 で、大きくなると顔は変わらないのに、身体は男の子になっていったのよね。

 着替えを手伝ったりしていると、それが余計に分かる。

 同い年なのに、何でか筋肉の付き方とか声代わりしていく身体。それを見ると、ドキドキするのよね。

 あたしがドジをして落ち込んだりしている時も慰めたり、何だかんだ言ってあたしを頼ってくれるのは嬉しいし、何か包容力みたいな物を感じるのよね。

 それで何時の間に好きになっちゃったのよね。

 あれ、絶対前世は相当な女たらしだったに違いないわ。絶対にそうね。間違いない。

「このままでは、誰がリウイの嫁になるか分からないわね」

「そうね。明らかにアプローチを掛けているのは、あたし達以外だと、ハダの一族。フリとゲリ姉妹。アングルボザ。ボノビビ。シェルタンと後、シェムハザとビクインも怪しいわね」

「よくぞ、此処まで女性をタラシたと言いたいですね」

「リウイらしいと言えばリウイらしいけど、このままじゃあ、まずいわね」

「そうね。どうします?」

「……ここは手を組まない?」

「手を組む?」

「そうよ。正直に言って、あたしも一人じゃあ手が足りない時もあると思うの。だから」

「わたくし達も協力しろと?」

 あたしはそうと言わんばかりに頷く。

「悪くないですね。じゃあ、わたし達以外の女性達がリウイ様にアプローチ掛けている所を見たら妨害するという事で良いですか」

「それが良いわね。で、わたくし達はアプローチを掛ける時は邪魔しないでいいかしら?」

「ええ、誰がリウイの一番になっても恨みこっなしという事で良いわね」

 あたしがそう言うと、二人は頷いた。

 アルティア達が話をしている頃。

 店では。

「っへくしょんっ‼」

「風邪ですか? 若様」

「いや、体調には気を付けているのだけど」

「あまり無理しないで下さい。若様」

「ああ、分かった」

 クレハと店番をしているリウイは突然、くしゃみをしたので訝しんでいた。

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