第20話 偶には怒ります
店が閉店時間になり、後片付けをしているとティナが帰って来た。
機嫌よさそうにしているティナに、アオイさんに何をされたか訊ねた。
「特に何もされてないわよ。この都市に色々な所に案内されて、ついでにご飯とかお菓子とか御馳走してくれたわよ」
ティナの反応から、別にいかがわしい事をされた訳ではないようだ。
これはあれか、最初は人が良い人風に装って、徐々に警戒させないようにして、相手の警戒がゼロになった所で食べる感じだな。
むぅ、アオイさんって意外に知能犯だな。
僕はアオイさんがどんな人なのか、ティナに話した。
すると、ティナは「そんな人の相手をさせるなんてっ」と言って怒った。
一緒に居たカーミラは「寝坊して許してもらうのだから、これぐらい安い物でしょう?」と笑いながら言うと。何か、二人の間で火花が散りだした。
此処に居てはまずいと思い、僕は店を後にした。
その後、店の方から凄い音が聞こえて来たけど、明日事情を聞こうと思い、僕はそのまま宿に向かった。
翌日。
朝目覚めて、店に行ってみた。
昨日の音から、何処かしら壊れているのではと思ったのだが。
来てみてビックリだ。
昨日と同じ店構えであった。
あの凄い音はなんだんだろうと思いつつ、店のドアの手を掛けると。
ガチャッという音と共にドアが壊れた。
「「あっ⁈」」
ドアの向こうには、カーミラとティナの手には掃除用具が握られていた。
二人の姿を見て、僕は何が起こったか察した。
まぁ、とりあえず言える事は。
「二人共。その場で座る様に」
本当は正座と言いたいけど、この世界の人は正座の仕方なんて知らないだろうから。此処は座らせるだけにする。
「「はい」」
二人は特に文句を言う事なく従った。
「ふぅ、この店は借り物なんだから、壊したら賠償金を取られるんだよ。その事を分かっているのかな?」
「……わ、わかっているわよ」
ティナがそんな事を言うので、僕は目を細めて顔を近づける。
「いいや、分かってない」
「こわ、目こわいからっ」
「分かっているのなら、こんな所で喧嘩なんかしないだろう。暴れるなとは言わないけど、店の中で暴れるなんて、いい歳して自制できないのは恥ずかしい事だよ」
「そうは言うけど、リウイ」
カーミラが何か言おうとしたけど、僕は手で遮った。
「言い訳はしないの。だいたい、カーミラは僕達よりも年上なのに、どうしてそんなに喧嘩を売るのかな? 自制というよりも、もっと落ち着きなよ」
「うっ、それを言われると……」
「でしょう。それにこの店は借り物なんだから、持ち主に返還するんだよ。その時に、こんなボロボロの状態で返したら、今まで稼いだ路銀が無くなるかもしれないよ」
「「うっ」」
言葉を詰まらせる二人。
流石に反省はしているようだが、此処は一度ちゃんと言っておかないと駄目だと思い、僕は二人に説教を続けた。




