第13話 災い転じて福となす、か
騒がしい傭兵ギルドの受付を見ていると、良い事を思いついた。
その為には、まずはギルドマスターのギムレットさんに話しをつけないとな。
アポなしで行っても良いか分からないが、前に行ったギムレットさんの部屋に密かに向かうか。
「皆は此処で待っていて。そうだな。ティナとアルネブは付いて来てくれるかな」
「どこ行くの? リウリウ」
「こんな所で待たされても暇なんだけど~。リイ」
「なるべく早く済ませるから」
「「ほんとうに~?」」
フリとゲリが僕を疑わしそうに見る。
「本当に早く済ませるから」
「う~ん。じゃあ。リイの言う事を聞く~」
「だから、なるべく早く済ませてね~。リウリウ」
二人は納得してくれたからこれで良いな。
後の事は任せると目でハヌマーンを見る。
ハヌマーンも承知とばかりに頷いた。それを見た僕達はギムレットさんの部屋に向かう。
部屋の前に着くと、扉越しに怒鳴り声が聞こえて来た。
『ええい『レッド・クロウ』の奴らは何処に行きおったんだ⁈ これではうちが大損害ではないかっ」
『今、手が空いている者で探させているのですが、まだ、見つからないとの事です』
『どうします。ギルドマスター?』
『どうもこうもあるかっ。とりあえず、今ギルドに居て、依頼を受けていない者達で商人の護衛をさせろっ』
『しかし、今、ギルドに居る者達は新人か万年EランクかよくてDランクの者達ですよっ』
『それにその者達を全員使っても、今受付に居る商人達の半分しか護衛できません』
『ぬぐぐぐっ……』
これはかなり大変そうだ。使えるな。
扉越しの話を聞いて、思わず笑みを浮かべた。
「? 何か、面白い事でもあった?」
「いや、何でもないよ。ティナ」
不審そうな顔で訊ねるティナに僕は、何でもないと手を振り、僕は身なりを正した。
「リウイ様。どうぞ」
アルネブが気を利かせて、手鏡を出してくれた。
「ありがとう」
お礼を述べてから、僕は鏡を見ながら変な所が無いかチェックした。
「ふふん」
「くっ」
何か、アルネブとティナが睨み合ってるけど、今は無視だ無視。
よし。変な所はないな。では。
僕はドアをノックした。
『誰じゃっ』
怒り混じりの声で訊ねるギムレットさん。
「すいません。お話ししたい事がありまして訪ねましたま」
『話? そんなもの。受付での者達が訊いてやるわっ』
「そちらにとっては良い話があるんです。聞いてみるだけ聞いてみませんか?」
僕がそう言うと、少しの間、話し声が聞こえて来た。
何を話しているか分からないが。恐らく僕を通すか通さないかで話しているのだろう。
そして。
ガチャッという音と共にドアが開いた。
「どうぞ。ギルドマスターが話を聞くそうです」
「ありがとうございます」
僕はドアを開けてくれた人に一礼して、部屋に入る。
「お前っ、な、なにをしにきた?」
ギムレットさんは若干怯えながら訊ねる。
僕は笑みを浮かべながら話し出す。
「良い話を持ってきましたよ。そちらは損害賠償を払わなくても良くなり、僕達の懐を潤うという、お互いにとって良い話を」
「何?」
「それは、本当だろうな?」
ギムレットさんと一緒に居たギルドの職員が疑いながらも、期待に満ちた目で僕を見る。
「ええ、勿論です。それは……」
僕の考えを話すと、ギムレットさんは少し悩んだが、他に代案がないので僕の案を受け入れてくれた。
さて、これで都市に居る皆を呼び寄せる事が出来るな。




