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第32話 何か良く分からないけど、気に入られた?

 僕がエリザさんと話していたら、侯爵も思考の海から戻って来たようだ。

「失礼。考えに没頭して、お客様の相手をしないなど・・・・・うん? エリザ、何時からそこにいた?」

「さっきから、ここに居たわよ。お父様」

「そうか。それでイノータ殿」

「はい」

「貴殿の案ですが。わたしの研究所で試しても良いでしょうか?」

「試してくれるんですかっ⁉」

 正直、駄目と言われるかもしれなかったので驚いた。

「ええ、話を聞てみて試す価値はあると思いました。ですので、後日研究所に来てもらいますか」

「はい、喜んで」

 これで、この国の戦力アップに繋がる。そうしたら僕達の生き残れる確率が上がる筈だ。

 その後も話をしていたら、気付いたら夜になっていた。

「もう、こんな時間か。そろそろ、王宮に帰らないと・・・・・・」

 皆心配するはずだ。

「こんな時間まで御引止めして申し訳ない。帰りは我が家の馬車で送らせます」

「お願いします」

 王宮までどう行ったら分からないので、送ってもらうのはありがたい。

 僕が立ち上がろうとしたら、隣に座っていたエリザさんが膝の上に手を置いた。

「ん? 何か?」

「どうせ、馬車で送るんだったら晩餐を食べていったらどう?」

「晩餐ですか・・・・・・」

 何だ。何でエリザさんが僕に晩御飯を一緒に食べるように勧めてくるんだ?

 う~ん、理由がサッパリ分からない。

 侯爵の顔を窺うと、エリザさんがそんな事を言った事に驚いているようだ。

(もしかして、エリザさんって人見知りが激しい?)

 初対面の僕にあんな事を言うのだ。少々、気難しいと思う。

 だから、エリザさんが言った事に驚いているのだろう。

 まぁ、父親の侯爵も悪い子ではないと言っていたので、根は良い子なんだろう。

 横目でエリザさんの様子を窺う。

 何かすっごい不安に満ちた顔で僕を見てくる。

 その顔は雨の中濡れた子犬を連想させる。

(・・・・・・何か、断るのが気まずい)

「しかし、エリザ。イノータ殿にも予定がある筈だ。無理を言って御引止めするのはやめなさい」

 侯爵はそう言うものの、全身から「是非、晩餐を共にしよう」というオーラが発せられている。

 僕は侯爵とエリザさんの視線の圧力に負けた。

「・・・・・・今日は別にすることがないので、晩餐でしたらいいですよ」

「おお、そうですか。それは良かった」

 侯爵は嬉しそうに顔を緩ませる。

 エリザさんも同じように顔を緩ませる。こうして、二人の顔を見比べると同じ顔をしていた。

(パッと見では似てないと思ったけど、やっぱり、親子なんだ)

 二人の顔を見ていたら、直ぐにエリザさんが気を取り戻した。

「まぁ、良いわ。今日は特別にわたくしが腕を振るってあげるから、わたくしの料理を食べれる事に感謝しながら、味わいなさい。オーホッホホホホホ」

 エリザさんは高笑いしながら、部屋から出て行く。

 現実であんな悪役令嬢みたいな高笑いする人は、生まれて初めてみた。

(この世界に来てから、初めて経験することが多いな)

 そこで、エリザさんが言った事を思い出す。

 わたくしの料理と言ったよな? 

 漫画では自分は得意だと思っていても出て来るのは、暗黒物質だというパターンかも知れない。

 もしくは、見た目は普通の料理なのに味は殺人級の味がするパターンか?

 どっちだ⁉ 

 僕はどっちなのか気になり、侯爵に訊ねる。

「こ、侯爵様」

「はい、何でしょうか?」

「し、失礼ですが、お嬢様のり、料理の腕前はどうなのですか?」

「どうとは?」

「その、美味しいのでしょうか?」

 僕はガタガタ震えだす。

 せめて、食べれる物が出る事を祈る。

「娘という贔屓目を抜きにしても、娘の料理の腕はプロ顔負けです」

「そ、そうですか」

 内心、安堵の息を漏らす。

「あと、掃除や裁縫といった家事は家の使用人達よりも上手ですし、芸術にも才能があります」

「・・・・・・意外に多才なんですね」

 あの見た目で色々な事が出来ると聞いても、ピンとこない。

 でも、侯爵がそう言うならそうなのだろう。

 僕は晩餐が出来るまで、侯爵と他愛の無い話をした。

 



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