第11話 その内、ドンとか言われたりして
「母さんがラサツキ家の現当主の娘⁉」
「はい。聞いていなかったんですかい?」
僕は頭を縦に振る。
「ティナは聞いた事ある?」
「ないない。というか、あたしの母さんも知らないし、多分知っているのって、へいじゃない、リウイの御父様ぐらいだよっ」
だよな~。
というか、父さん。よく、そんな身分の人を妻に迎えたな。
それとも、母さんが押しかけ女房でもしたのか?
馴れ初めの事を聞いても教えてくれないから、どうやって夫婦になったのか、未だに謎なんだよな。
「まぁ、姐さんの事ですから聞かれても『忘れた』とか言ってすっとぼけるでしょうね。リウイさじゃなかった。あ~、何って呼べば良いでしょうか?」
「普通にリウイで良いと思いますけど」
「いやぁ、流石に姐さんの子にそう馴れ馴れしく呼ぶのも、何なので、此処は言いやすくてピッタリな呼び方と言えば、……そうだ。今度から『若』と呼ばせてください」
「若?」
「はい。ピッタリだと思いますよ」
何だろう。何か、マフィアのボスの子供みたいな呼ばれ方だな。
僕はカンノ―リは好きだけど、家族を騙し討ちはしないぞ。
「で、若。これからの予定を聞いても良いですか?」
う~ん。訂正したいけど、様付けで呼ばれるよりも良い事にしよう。うん。そう思う事にした。
じゃあ、気持ちを切り替えてっと。
「これからの予定? 全然考えてない」
正直に言って、大陸に着いたら何処かの都市で情報収集して、それからユエと連絡を取って、ユエが用意してくれた所で暮らしながら、何か商売になる物を探すという感じにしか考えていない。
「でしたら、暫くの間、あっしらと行動を共にしませんか?」
「えっ?」
「若はこの大陸に来たばかりですから、何にも知らないでしょう。ですから、不肖このダイゴクと『義死鬼八束脛』もお供しますぜ」
ティナとアルネブはそれは心強いという顔で喜んでいるけど、僕は違った。
「…………」
「おや、何か不満でも?」
「いえ、その。何というか、母が無理が言ったんじゃあないのかなと思って」
「えっ⁉」
身体をビクンと震わせるダイゴク。
やはり、母さんの差し金か。
不思議だったんだよな。どうして、この都市に来た僕と母さんの知り合いのこの人が会えたのか。
偶然にしては出来過ぎている。
多分、母さんが何らかの手段でダイゴクさんと連絡を取って、だいたいこの辺りに来ると予測して、網を張ったんだろうな。
「……い、いやぁ、手紙には書いてありましたが、流石は若ですな。勘が良いようで」
「じゃあ、やっぱり」
「はい。あっし以外の幹部連中は他の都市にいます。若が来ても出迎えれる様に」
「母さんの知り合いなのは分かりますけど、部隊を分散して出迎えなくても良いと思うのだけど?」
「いやいや、流石に『儀式八束脛』初代総長の息子さんを出向かえるのですから、これぐらいはしませんと」
「……何となく、そんな気がしていたけどやっぱりか」
さっきのダイゴクさんの名乗りで『義死鬼八束脛』二代目総長と名乗っていたから、もしかして初代総長は母さんなのではと思っていたけど当たっちゃった。
「皆、姐さんの子供である若に会いたいと思って、行動していたんです。その気持ちを汲んでくれませんかね」
「はぁ、まぁ特に予定はないので待つのはかまいませんよ」
「ありがとうございます。そんなに時間が掛からないと思いますけど、どうか暫くこの都市で待っていてください」
という事で、僕達は暫く、この都市に留まる事にした。
都市の外に居る皆も呼び寄せるか? でも、どうやって呼ぼう。




