第6話 情報収集で打ってつけな場所と言えば2
「ぎゃあああああああああっ⁉」
何か、後ろの方から悲鳴が聞こえてきた。
振り返ると、僕達から少し後ろで並んでいた人が、翼を持った魔物に襲われていた。
その人の傍には、両手で自分の身体を抱き締めている人がいる。多分、その人が先程の悲鳴をあげたのだろう。
「や、やめ、ぎゃああああっ‼‼」
その魔物に首を噛み付かれて襲われた人は断末魔をあげた。
そして、直ぐに動かなくなった。
魔物は顔を上げる。血で濡れた顔で周りを見る。
蜥蜴の顔に、両腕の代わりに翼がある所を見ると亜竜のようだ。
全長が大人二人分という感じだから、それほど大きくない種だな。
「う、うわああああああっ‼ リンドヴルムだああっ⁉」
「逃げろ‼ あいつらは群れで行動するから、その内に仲間が来るぞっ‼」
「早く入れろよっ。じゃないと、殺されちまう‼」
並んでいた人達は、恐慌状態になっていた。
我先に城門に入ろうと押し合いになっていた。人に押されて、そのまま地面に倒れて踏まれている人もいるな。可哀そうに。
「う~ん」
まぁ、亜竜は知能が無い分本能に従うから、大方お腹が減ったから人を襲ったんだろうな。
じゃないと、こんな都市の近くで人を襲う訳が無い。
そう考えていると、リンドヴルムの仲間たちがやって来て恐慌状態になっている人達に襲い掛かっていた。
「GYAAAAAAAA」
咆哮しながら襲い掛かっていく。
というか、この都市の衛兵達は何をしているんだ?
この都市に来た人達が襲われているのに、助けようとしないぞ。
ただ、城門の前で立っている衛兵二人なんて呆然と立っているだけだぞ。助けようとも、城門を閉じようともしないぞ。
この都市は大丈夫なのかな。
そう思っていると、リンドヴルムが僕に襲い掛かって来た。
「GYAAAAAAAA、Guuu⁉」
リンドヴルムは僕に口を開けて、牙を突き立てようとしたが、その前に頭を撃ち抜かれていた。
「リウイ。自分の身は自分で守りなさいよっ」
そう言いながら、ティナは僕の前に出てきて、両手に持っている魔弾銃でリンドヴルム達を撃ち落としている。
「ごめん。ちょっと、考え事をしていて」
「この状況で考え事とか、呑気ねっ」
パン‼ パン‼ 銃声を響かせながら、ティナは油断なく周囲を見る。
「まぁ、ティナが守ってくれると思ったから大丈夫だと思ったんだ」
「もうっ、世話が焼けるわね! ま、まぁ、そこがリウイらしいと言えばリウイらしいけど・・・・・・」
はい? 後半、何って言ったの?
まぁ、いいや。そうこうしている内に、皆が。
「はっ」
「Guyaaaa!」
アルトリアは駆けながら矢を放って、リンドヴルム達に当てて、確実に数を減らしている。
確か、アルトリアは魔法も使えるから、矢が尽きても魔法を放てば良いだろうし。
「なに、これ弱いじゃん」
「この亜竜の肉って美味いのかな?」
フリとゲリは双子ならではの息が合ったコンビネーションで捕まえた端からボコボコにしていた。
殴ったリンドヴルムが動けなくなると、ハイタッチする二人。余裕だな。
「邪魔」
その一言と共に、跳びながら持っているナイフでリンドヴルム達の首を斬り落とすアルネブ。
しかも、死体になって落下するリンドヴルムの死体を足場にしてまた跳んでいる。
器用だな~。やっぱり、兎だからそういうのが得意なのかな。
「ふん!」
アングルボザなんか、落ちている石を投げてリンドヴルム達に当てている。
投げているのはただの石なのに、当たるとリンドヴルム達の体は四散していた。
どんだけ~。
「ほほ、これでは、わたしがやる事はありませんな」
ハヌマーンが烏扇を出しながら煽いでいた。
「そうだね。というか、連れてきたメンバーが強すぎるだけかもしれないね」
「ほほ、そうかもしれませんな」
僕達はそのまま皆の戦いぶりを観戦して、数分後。
襲って来たリンドヴルム達は全て、地面に落ちていた。
辺りは血やら内臓やらが飛び散っていた。
「全部で何匹居るのかな?」
「さぁ、数えてみないと分かりませんな」
この場合、誰がこの死体を片付けるのかな?
そう思っていると、都市から集団が出て来た。
皆、衛兵みたいに統一された武装ではなく思い思いの武装をしていた。
傭兵かな?
そう思いながら、こちらにやってくる人達を注視していた。
やって来た集団が、現場に着くなりこの惨状を見て言葉を失っていた。
「こいつは」
「これ、全部リンドヴルムか?」
「十、いや少なく見ても、五十以上は居るぜ」
パッと見て、それぐらいはいそうだな。
やって来た集団の話を聞いていると、その集団で一番装備が良い人が僕達に近付いてくる。
「君、ちょっといいかな?」
「はい。何ですか?」
「君はリンドヴルムに襲われた様子はないが、どういう事だろうか?」
「ああ、実は」
「疲れた~、リウイ。都市に入ったら、何か奢りなさいよ~」
ティナが親父臭い事を言いながら、僕の近くに来る。
「甘い物が良いな」
「わたしも甘い物が良い」
フリとゲリが何時の間にか僕の傍に来て、両腕を引っ張る。
「・・・・・・この惨状に係わっているのかな?」
「ええ、まぁ、そうですね」
「うん。じゃあ、話を聞きたい。済まないけど、ギルドまで来てくれるかな」
ギルド⁉
この都市は交通の要衝だから、色々な情報が集まりそうだ。
これは幸先が良いぞ。多分。




