第3話 ようやく到着
陸地が見えてから、数時間後。
ようやく陸地に着いた。
霊亀が首を岸に置いてくれたので、僕達は行きと同じ要領で、首を伝い梯子などで下りた。
皆、さっさと降りて行ったのを見ると、どうやら海上生活が飽きていたようだ。
僕も降りて、地面を足をつけた。
「う~ん。久しぶりの陸地だ。揺れない大地というのは良いものだ」
僕は身体を伸ばしながら呟いた。
『ほっほほ、儂から言わせれば、さほど変わらないと思うがのう』
「そりゃあ、それだけ大きかったらね~」
海を歩けるのだから、陸地もそう変わらないよね。
「ありがとう。霊亀。助かったよ」
『なに、久しぶりに身体を動かしたかっただけじゃから、問題ない』
「これからはどうするの?」
『そうじゃな……』
霊亀が僕をジッと見る。
『行く宛ても無し。よければ、お主の供をしても良いかの?』
おっ、マジで。助かるな。
「こちらとしても問題ないよ」
『ふむ。では』
そう言って霊亀は身体を小さくさせて、宙に浮かんだ。
そして、僕の肩に乗った。
「この姿ならば、問題なかろう」
「そうだね」
「では、行くとしようかのう」
「ああ、その前に名前とかあるのかな?」
魔獣には真名というのがあるそうだが、それは契約した者にしか教えないから、この場合どういう風に言えば良いのかな?
「そうじゃな。……儂の事はアクパラと言うが良い」
「アクパラ?」
「長かったら、略してアク爺で良いぞ」
「・・・長くはないと思うけど、まぁ、その呼び方が良いのだったら、それでいいけど」
アクパラね。真名から取ったのか、それとも昔、誰かに付けられた名前なのかな?
「儂の友人がつけた名前でな。結構気に入っておるのじゃ」
「成程。じゃあ、アクパラ」
「うむ」
アクパラは笑顔で答えた。
「さて、早くこの場を離れないとな」
「そうじゃな。儂の姿を見た者達が此処に来るかも知れぬからのう」
話しが速くて助かる。
「それで、最初の目的地は何処にするのじゃ」
「ああ、それはね」
僕は懐にあるポケットから小さい地図を出した。
今、僕達が居る大陸の大まかな地形を書き記した物だ。
前に雑貨屋で、この大陸の地図を見つけたので買っておいたのだ。
「僕達が居るのが、此処だから・・・・・・」
僕は地図を見ながら現在地点を指差す。
「このまま南下して、最初は此処に行くよ」
僕は指をすす~っと下に動かして、ある一点で止まる。
「ふむふむ。湾岸都市『ヨドン』か」
「この都市は商業都市としても有名だし、流通拠点でもあるからね。まずは、この都市に入って、情報を集めてから、何処に行くか決めるよ」
「それが賢明じゃな」
「まぁ、母さんから手紙を貰ったから、鬼人族の領地には行くつもりだけど、時期を見てからでもいいだろうしね」
僕は地図をポケットに入れて、皆が居る所に向かう。




