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第31話 こ、これはっ⁉

 アスクレイ侯爵と共に侯爵の書斎を入る。

 入るなり侯爵にソファーに座るように勧められたので座る。

 アスクレイ侯爵も僕の対面の椅子に座る。

「先程は娘が大変失礼な事を言いまして、どうかお許しを」

「いえ、別に気にしてませんよ」

「娘という事で甘やかして育てたせいか、かなり居丈高な子になりまして、根は悪い子ではないのですが」

「はぁ、そうですか」

 僕は別に気にしてないが、侯爵がしきりに謝る。

 このままでは謝罪するだけ日が暮れそうだ。

「それで侯爵様、僕に見せたい物とは何ですか?」

「おお、そうでした」

 侯爵はそう言って立ち上がり、机の戸棚を開ける。

 そこ入っていた箱を出して、テーブルに持ってきた。

「この中にあるのですか?」

「はい、今開けますね」

 侯爵が箱を開けると、何かの布で包まれていた。

 箱を横に避けて、布に包まれた物を出す。

 そして、布を包みを剥がす。

 出て来たのは、金属の筒みたいな物だ。

 鈍く金色に輝くそれは、元の世界で見た事がある。

「これはっ⁉ どこで見つかったのですか?」

「知人が言うには、貴方方が来て数日後に知人が遺跡から発掘したと言っていました」

「そうですか、まさか、こんな物が発掘されるなんて・・・・・・」

 僕はその金属の筒を持って、ジッと見る。

「わたしなりに調べたのですが、鉛を使われている事しか分かりませんでした。イノータ殿はこれが何か分かるのですか?」

「これは〝銃弾〟です」

「ジュウダン?」

「ええ、前に火薬の事を話しましたよね。その火薬を空いている穴に詰めて鉛で蓋をするんです」

「? それはどう使うのですか?」

「後ろの方に穴がありますよね。これは雷管と言われる部品がありまして、これに衝撃を加えると発火するんです。そうすることで銃弾の中にある火薬に着火して、蓋になっている鉛を発射するんです」

「すると、その蓋になる部分が弾丸になると言う事ですかっ⁉」

「はい、その通りです」

 でも、この銃弾は使う事は出来ない。

 肝心の火薬は中に入ってないし、弾芯も付いていない。

 これは使用された空薬莢という事だ。

 それよりも、今は銃弾が何でこの世界にあるかだ。

「何故、僕の世界の物がこの世界で見つかるのですか?」

「貴方達のような異世界人達を呼ぶ際、世界同士を接触させます。その際、向こうの世界にある物がこちらの世界に見つかったりするそうです」

 成程、僕達を呼ぶとそんな事があるのか。

「それは無機物有機物関係なしですか?」

「今の所、確認されているのは無機物だけです」

「そうですか。分かりました」

 もし、生物がこちらの世界に来たのなら、僕達と一緒に活動してほしい所だ。

 アスクレイ侯爵に危険がない事を言うと、侯爵は空の薬莢をジッと観察する。

 何かに使えないかと見ている。

(ああ、でもこれがあったら、あれが出来るかもしれない)

 前々から考えていた物が出来るかも知れない。


「侯爵、お話したい事があります」

「何でしょうか?」

「実は前々から作ってみたい物がありまして、侯爵の伝手で何とかできませんか?」

「どのような物をお作りに?」

 僕はこの銃弾を見せた。

「これです」

「これですか? 話を聞いた限りでは、これだけでは只の金属の筒でしかならないと思いますが」

「ええ、これを作ってほしいんです」

「何故作るのですか?」

「本来、銃弾は穴の所に火薬を詰めますが、僕が作ろうとしているのはこの弾に魔法を込めようと思っています」

「この弾に魔法を込める?」

 昔読んだ漫画で、魔力を溜め込む魔石で出来た弾丸に魔法を充填して発射する銃を使うものがあった。

 この世界だったら、出来るかもしれない。

「しかし、魔法を込めるにしても、どのような加工をしたら良いのでしょうか?」

「この世界には魔石が有りますよね?」

 魔法が有るんだからあるだろう。

「ええ、まぁ」

「その中には魔力を充填できるものはありますか?」

「・・・・・・確か《聖石セイントストーン》と言う魔石が魔法を吸収できる聞いています」

「その魔石を加工して、この弾丸みたいにしたいんです」

「魔石を加工して、弾丸を作る⁉」

 アスクレイ侯爵は目を見開いて驚いている。

 その驚きから、この世界の魔石はどう使われているのが、なんとなくだが分かった。

(この世界の常識では、魔石は砕いて儀式の触媒か武器に付けるぐらいなんだろうな)

 僕の考えでは魔石も魔力を宿した鉱物の一種だと思っている。

 鉱物なら加工して、物を創る事が出来る筈だ。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 侯爵は目をつぶり沈黙している。僕が言った事を考えた事がなかったので、自分の考えと僕の考えのどちらが正しいかを、頭の中で分析していうのだろう。

 その沈黙がしばらく続くと思ったが、ドアがノックされた。

 多分、メイドさんがお茶を持ってきたんだろう。

(侯爵の考えが纏まるまで、お茶でも飲んでいるか)

 しかし、侯爵の許しもなしに扉が音を立てて開いた。

「お父様、お茶を持ってきたわよ」

 そう言って、お盆にティーセット載せて部屋に入って来たのはエリザさんだった。

 しかし、侯爵はいきなり部屋に入って来たエリザさんに何も言わない。

 今だに考え事をしているようだ。

(凄いな。こんな大きい音を立てたのに、気にも留めないで考え事をするなんて)

 そう思っている間に、エリザさんは何も言わず。僕と侯爵の前に茶が入ったカップを置く。

 僕はカップを持とうとしたら、エリザさんが断りもなく隣に座る。

「で、お父様はどうして熟考しているの?」

 年上なので、敬語で話した方が良いだろう。

「えっと、僕の教えた事がどうも衝撃的すぎて、驚いているようで」

「ふ~ん、そうなの。ちなみに、どんな事を教えたの?」

「これですよ」

 僕は空の薬莢を見せた。

「これは?」

「僕の世界にある武器の一つで、これをこの世界の技術で再現できないかと」

「穴が空いているわね。この穴に何か詰めるの?」

「僕の世界では火薬を詰めていましたが、この世界では魔法を詰めたらどうかと思って」

「・・・・・・面白い考えね」

「ありがとうございます」

 感心した顔で僕を見るエリザさん。

 僕はお茶に口を着けて、喉を潤した。

「美味しいお茶ですね」

「そうでしょう。この茶はね。わたくしが選んだ茶なのよ。有り難く飲みなさい」

 胸を張って威張るエリザさん。

「はい、分かりました」

「素直な子は好きよ。子豚」

 いつの間にか、子豚が愛称になってしまった。

 まぁいいか。僕の見た目からそう見えるから仕方がない。




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