第2話 後少しで着く
どんどん陸地に近付いて来るのを見ると、何か胸に来るモノがあるな。
数年しか暮らしてないのだけど。
そう思いながら、陸地を見ているとリッシュモンドが傍にやって来た。
「ようやく、この大陸に戻ってきましたな」
「ああ、そうだね」
そんな話をしていた所為か、この海上生活に色々とあった事を思い出した。
「此処まで来るのに、色々ありましたね」
「だね~」
しみじみと思う。
「僕が寝ている所に、カーミラさんが夜這いに来たけど、アマルティアとばったり会って、喧嘩になったね」
「その時以来、寝室の警備は厳重になりましたね」
「ジャミニン族から酒宴の誘いが来たから行って、飲み物を一口飲んだら、身体が痺れて声も出せない状態にされて、そのまま子作りをする事もあったね」
「その時は、たまたま通りかかったハダが止めたお蔭で何とかなりましたが、その後で、一服盛った話を聞いたアルティナが激怒して、ジャミニン族に喧嘩しそうになりましたね。まぁ、ソフィーディア殿とリウイ様が宥めて、何とか鞘に収めたようですが」
「あとは、酒宴をしていたバイアとボノビビとアングルボザとレグルスとシャリュ達が、酔っ払って何時の間にか僕が寝ている所に忍び込んで来た事があったね」
「厳重な警備の中、どうやって侵入したのか、今でも分かりませんな」
「本人達も、酔っ払ってたから覚えていないと言うしね」
「どちらかと言えば、その後が大変でしたね。リウイ様を起こしに来たアルネブとアルティナが、その現場を見て、喧嘩になりかけましたね」
「あの時は、本当に死を覚悟したね」
それぐらいティナが怖かった。
「それを見て思ったのですが。リウイ様。お尋ねしても宜しいですか?」
「うん、何かな?」
「リウイ様は結婚しないのですか?」
「……ああ、それね」
今、僕は何とも言えない顔をしているだろうなと思う。
「前世では、まぁ、王女様を娶られましたから、転生したとはいえ異性に興味がない訳ではないでしょう」
「まぁ、僕も男だからね」
「でしたら、好いた女子はおらぬのですか?」
「此処は許嫁は居ないのですか?と聞かない?」
「イザドラ様がリウイ様の婚約話が持ち上がる度に、端から潰していると小耳に挟みましたので」
「ははは、そうだね。これについては、何と言えば良いのか」
正直に言って、結婚と言われても実感しないんだよな。
なにせ、前世では結婚生活をした事が無い所為か、どういうものか想像も出来ない。
「……まぁ、相手を探す所から始めないと駄目か」
「リウイ様でしたら、傍に沢山、魅力的な女性が居ると思うのですが?」
「いやいや、皆、どちらかと言うと、僕を子供か弟扱いしているんだろうと思うのだけど」
「それはないでしょう。でしたら、ジャミニン族の者達がリウイ様と子作りをしようとは思わないでしょうに」
「発情期だったんじゃないの? 獣人にはそういう特性があるというし」
「……はぁ、そうですか」
うん? 何か疲れたような顔をしてないか?
「でしたら、どのような女性が好みなのですか?」
「う~ん。そうだな」
アルティナ。カーミラ。アルトリア。シャリュ。ボノビビ。ランシュエと色々な女性がいる。
皆、魅力的な女性だ。その中で選ぶとしたら。
「……ソフィーかな」
正直に言って、あれぐらい包容力がある女性が一番好きだと思う。
「成程。リウイ様の精神年齢で言えば、あれぐらいが丁度良いという事ですか」
「かもね」
「では、ソフィーディア殿にこの話をしても構いませんね」
「やめてくれるかな⁉」
「冗談ですよ。はっはは」
「ふぅ、脅かさないでくれよ」
その後、暫く他愛の無い話をした。
リウイとリッシュモンドが話していた時。
少し離れた所で、アルティナとカーミラとアマルティアが居た。
三人はリウイ達に見つからない様に甲羅の一部に身を隠しながら、二人の話を聞いていた。
「この距離だと、ギリギリ聞けるわね」
「ちょっと罪悪感がありますけど、どんな話をしているのか気になりますからね」
「そうね」
三人は耳を傾けていたが、波風の音で所々聞こえなかったが。
「リウイ様は結婚しないのですか?」
「「「っ⁉‼⁈」」」
リッシュモンドの口からでた言葉に、皆良く聞こうと少しづつ近付いた。
「……まぁ、相手を探す所から始めないと駄目か」
「リウイ様でしたら、傍に沢山、魅力的な女性が居ると思うのですが?」
「いやいや、皆、どちらかと言うと、僕を子供か弟扱いしているんだろうと思うのだけど」
「それはないでしょう。でしたら、ジャミニン族の者達がリウイ様と子作りをしようとは思わないでしょうに」
「発情期だったんじゃないの? 獣人にはそういう特性があるというし」
「……はぁ、そうですか」
「でしたら、どのような女性が好みなのですか?」
「う~ん。そうだな」
リウイは少し考えてから答えた。
「……ソフィーかな」
「「「っっっっっっ‼⁉⁈」」」
リウイの口から出た言葉に、衝撃を受ける三人。
そして、三人の頭の中には、口を手で隠しながら上品そうに笑うソフィーディアの姿が浮かんだ。
(((き、強敵現るっ!)))
それから、少しして。
「あら、ティナ。どうかしたの?」
ソフィーディアは自分を注視するアルティナを見て訊ねた。
「…………」
アルティナは答えず、ただソフィーディアを見ていた。
「???」
自分をジッと見る我が子にソフィーディアは首を傾げていた。




