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第103話 旅立ちの時

 途中予定外な事もあったが、何とか『奥地』にある北へと行く道を歩く僕達。

 その道を歩きながら、僕はぶつくさと肩に乗せている霊亀に話しかける。

「全く、ミリア姉ちゃんにも困った者だ」

『ほう、何を要求あれたんじゃ?』

「見逃してあげるから、向こうの大陸に着いて、ミリア姉ちゃんに手紙を送る時は、胸が大きい女性の姿絵を付けて送ってくれっだとさ」

『ふむ。お主の姉はあれか? 同性愛好者なのか?』

「違う違う。単に僻んでいるだけだよ」

『僻みとな?』

「自分の胸が小さいから、自分よりも胸が大きい人の胸を揉んで、そういうコンプレックスを解消しているんだよ」

『ほほ、自分が持っていない物を僻むのは仕方がない事じゃて』

 何か達観とした事を言うな。やっぱり、亀だから長生きして色々な物を見ているからか?

「まぁ、連れて来た兵士達を送ってくれるのはありがたいけどね」

『そうじゃな。少なくとも、兵士達の帰りは問題ないという事は確かじゃろうな』

 でも、その見返りに巨乳の女性の姿絵を送ると言うのは如何なのだろうか?

 とはいえ、そう言っても「別にいいじゃん」とか言い出しそうだな。ミリア姉ちゃんの場合。

 そう思いながら歩いていると、ルーティが近寄って来た。

「リウイ様。そろそろ合流ポイントです」

「そうか」

 事前に、各氏族には僕と一緒に出国する人達は指定した場所に来るようにと指示していた。なので、既に其処に居ると思われる。

「先触れは」

「既に出しております。もう、そろそろ戻ってくる頃だと、ああ、きました」

 ルーティが目を向けた方向に、ルーティ達の部下達が居た。

 そして、僕達の傍まで来るとその場に跪いた。

「ただいま戻りました」

「ご苦労様。じゃあ、報告を聞かせてもらおうか」

「はっ。わたし達が指定されたポイントに向かいますと、既にすべての氏族の者達が集結。リウイ様が来るのを待っているご様子です」

「そうか。分かった」

 僕がそう言うと、その部下達は一礼してから下がった。

「もう居るのであれば、少し急いだ方が良いな」

 僕は皆に足を速める様に指示しようとしたら。

『まあまあ、待て。リウイよ』

「うん? 霊亀。何かあるのかな?」

『既に各氏族の者達が来ているのであれば、そこまで急がなくても良かろう』

「でも、相手を待たせるのは」

『待たせても構わぬよ。お主は仮にも王族であるのだぞ。であれば、焦らずのんびりと進むべきじゃ』

「ふむ。その根拠は?」

『人の上に立つ者で理想的なのは、みだりに騒がず、慌てず、焦らない事じゃ。これからお主と共に王道する者達は、各氏族から派遣された者達じゃ。言うなれば、氏族の長からのコントロールから外れるという事になる。そういった者達には誰が一番偉いのかを分からせる事が必要じゃ』

「・・・じゃあ、こうしてゆっくりと進めと言うのは、そういう事か」

『そうじゃよ。これから一緒に行動するのであれば、自分が一番上だと分からせる事が大事じゃからな』

「成程な。よし、じゃあ、のんびりと行くか」

 霊亀の言葉を聞いて、僕達はゆっくりと進む事にした。

 それにしても、やはり長生きはしているだけはあって言葉に重みと説得力があるな。

 アドバイザーとして僕に仕えてくれないかな。

 向こうの大陸に着く時にでも聞いてみるか。


 僕達が合流ポイントに着くと、各氏族から選ばれた人達が各々好きに勝手にしながら待っていた。

「ほぅ、そのような経緯で」

「そうですね。まぁ、これも何かの縁です。今後とも良しなに」

 部族が違っていても、積極的に話しかけて何かしら得ようとする者も居れば。

「・・・・・・んん、美味いな」

「だろう? これは我が部族で今年一番の出来がいい酒を持って来たんだ。存分に飲もうぞ」

「では、こちらも」

 酒を飲みながら交流する者達も居た。

 皆、それぞれの交流をしていた。

 腹の底では何を考えているかは分からないが。

 そう思いながらその場所に着くと、カーミラさんが僕を見るなり駆け寄って来た。

 館に居たカーミラさん達には、この場所に来るように伝えた。そして一度自分達の部族に戻ってもらい各部族の長にこの事を伝えて、僕と一緒に出国する人達を連れて此処に来てもらった。

「来たわね。リウイ」

「ああ、来たけど」

 僕はカーミラさんの後ろに居る人を見る。

「何ですか? そんな盛った猿の様な目で人を見るのは失礼ですよ」

 凄い冷めた目で僕を見る女性。

 えっと、確かエヴァリアだったけ?

「いや、そんな目で見てないと思うよ?」

 多分。

「ちょっと、失礼よ。エヴァ」

「ですが。カーミラ」

「それにそんな獣みたいな目をするという事は、それだけワタクシ達が魅力的という事よ。ねぇ、リウイ」

 笑顔で訊ねるカーミラさん。

 でも、目が笑っていない様な気がするのは、何故だ?

 そう思っていると、アマルティアが僕の隣にやって来た。

「ふふ、ご立派な身体をしても、リウイ様よりも遥かに年上の方では、リウイ様も話が合わなくて大変でしょうね」

 ちょっ、其処でそんな事を言うと。

「あら、面白い事を言うのね。ふふふ」

 カーミラさんの背後から黒い炎を宿した鬼が見えるし、アマルティアは微笑みながら背中に何か虎が見えるのは、幻覚だろうか? とりあえず、僕は二人から離れる事にした。

 二人から離れると、僕は各氏族から派遣された人達と交流した。

 そして、すべての氏族の人達と話し終えると。

 僕は皆が見える所の位置に行き、皆を見回した。

「あ~、こほん。では、これより、出国準備に取り掛かる。皆は準備は完了しているだろうか?」

 完了しているだろうけど、一応形式で聞いた。

 皆は一様に頷いたので、僕も頷き返した。

「では、僕達はこれより出国するっ」

 僕が手を掲げると、皆は歓声をあげて答えた。







 これで、リウイ視点の話は終わりです。

 次からは他者視点の閑話を幾つか投稿して、この章は終わりです。

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