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第102話 手紙

「・・・うぎゃああああああっ⁉」

「ちょっと、人を見るなり悲鳴をあげるなんて失礼じゃない?」

 た、確かにそうだけど、何でここにミリア姉ちゃんが居るんだ⁉

「え、ええっと、どうして此処に居るの? ミリア姉ちゃん」

「さぁ、どうしてかな~」

 口元を隠しながらニヤニヤと笑うミリア姉ちゃん。

「もしかして、僕の計画に気付いたの?」

「う~ん。そうかもね~」

「……ま、まぁ、大丈夫か」

「うん? どうしてそう思うの?」

「此処から『カオンジ』まではかなりの距離がある。どうやっても援軍は呼べない。ミリア姉ちゃんは一人だ。幾ら強くても、この『奥地』に居る全部族とその長を相手に戦う事なんて」

「じゃ~ん。これな~んだ?」

 ミリア姉ちゃんはポケットから何かの水晶の様な物を出した。

「それは?」

「これはね、イザ姉が、自分の軍に正式採用している『魔力通話機』って言うんだって、これを使うと遠距離に居る人と話せるんだよ。あたしも使った事があるから分かるけど、これって凄いよね。どんなに離れても話す事が出来るのだから」

「話す事が出来る⁉」

「ちなみに、この魔法道具は二つで対になっているんだ。で、もう一つは誰が持っていると思う?」

「……も、もしかして⁉」

「そう。リウが思っている通り、イザ姉が持ってるんだ。これで連絡したら、どうなるかな~」

 やべぇ、龍の姿になって此処に飛んでくる姿が目に浮かぶ。

 そして、霊亀と戦う姿も容易に想像できた。

 流石にそんな怪獣大決戦みたいな事を、此処でさせるのは駄目だ。

 僕は即座に行動した。

「お願いします。姉上には僕が国を出る事を秘密にしてください」

 僕はその場で土下座した。

 こんな時に、自尊心とかは関係ない。

 此処はお願いするしかない。

 そう思い、僕は皆が見ているのも構わず土下座した。

 皆の視線が僕に集まるが、此処は気にしたら負けだ。

「・・・・・・リウ」

「なに?」

「何をしているの?」

「はい?」

「いや、頭を地面につきそうなくらいに下げて、その場で座り込むなんて人なんて見た事無いから、何をしたいのかサッパリ分からないのだけど」

 ああ、そう言えば、この世界では土下座するという風習がないんだった。

「え、ええっと、ふ、伏してお頼みします!」

 こう言えば、皆納得するだろう。

 そして、皆の視線がミリア姉ちゃんに集まる。

「う~ん。可愛い弟の頼みだから、どうしようかな~」

 くっ、顔を見なくても分かる。今はすっごく悪い笑みを浮かべているぞ。

 昔から、こういういじめっこ気質な所があったからな。ミリア姉ちゃんは。

「……ぷっ、ぷははは、ごめんごめん。冗談だよ。リウ」

「えっ?」

「別に、あたしはイザ姉に言うつもりはないから、ここに来たのも、リウを見送ろうと思っただけだし」

「見送りに来たの?」

「そうだよ~。ああ、それと」

 ミリア姉ちゃんは懐に手を入れて、何か探しだした。

 そして、見つけたのか。懐から手を出した。その手には、封に包まれた物が出て来た。

「それは?」

「リウのお母さんから、魔都から出る時に渡されたの。国を出る時に、これを渡せって」

「母さんが?」


 僕に手紙にをくれるとは、何だろう?

 そう思いながら、僕は封を破って、中身を出した。

 そして、出て来たのは封蝋された手紙と折り畳まれた紙が出て来た。

「手紙が二通か。とりあえず、こっちの紙の中を見るか」

 僕は折り畳まれた紙を開いて中を見た。


『リウイへ。


 この手紙を見ているという事は、何らかの手段で、出国の手段を見つけて出る時だろう。

 お前の事だ。後始末は適当にするだろう。そこら辺は、ロゼティータあたりが何とかするだろう。

 向こうの大陸に行っても行く宛てがなかったら、鬼人族の国に行ってシュテン家のゴウマという者に封蝋された手紙を渡せ。暫く暮らしには困らないだろう。

 向こうの大陸に行っても、怪我や病気など罹らないように。

 後、土地によっては水で腹を壊す事があるから気を付ける様に。

 知らない人に声を掛けられても、無暗に返事するな。

 偶には、手紙を書く様に。

 

 追伸。


 世界は広いぞ。その広さを知って来い。


                                    ハバキ』


 手紙を読んで思ったのは、最後の所は別の人が書いたのではと思ったね。

 だって、どう考えても母さんがこんな手紙を書く訳が無い。

 それとも誰かが代筆したのかな?

「そんなに衝撃的な事が書かれていたの?」

「あ~、うん。僕的には」

「まぁ、それだけリウの事が心配という事だよ。きっと」

「そうだね」

 まぁ、悪い人ではないからな。何だかんだ言って、僕の母さんだし。

 僕がこの『オウエ』の領地に赴任しようとしたら異議を申し立てたり、僕に付いてきたからな。

 愛情がないという訳ではないのだろう。

「シュテン家ね。まだ残ってたんだ。もう、家は滅んでいると思ったのに」

 という事は、前世の僕が生きていた頃に鬼人族の名実ともに支配していた『九大氏族』はまだ残っていると考えた方が良いのかな。

 まぁ、向こうの大陸に行けば分かるか。

 僕は封蝋の手紙を懐に仕舞い、ミリア姉ちゃんを見る。

「ミリア姉ちゃん。悪いんだけどさ」

「ああ、あれでしょう。連れて来た兵士達を『カオンジ』まで連れて行ってほしいんでしょう」

 その通り。

 まだ領主という事で、護衛の兵士も連れて行く事になった。

 なので、誰かが率いて都市まで帰さないといけない。

「お願いします」

「はは、可愛い弟の頼みだもん。お姉ちゃんに任せなさい」

 ミリア姉ちゃんは胸を叩いた。

「その代わりに、頼みがあるんだけど良いかな?」

「……出来る事であれば」

「別に、そんな難しい事を頼まないよ。…………って事をして欲しいの」

「……分かったよ。言われた通りにするよ」

「やったっ。流石はリウだ」

 ミリア姉ちゃんは笑顔で僕を抱き締めてくる。



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