第96話 さて、どうやって実行するか
翌日。
目を覚ました僕は直ぐに執務室に向かう。
そこでリッシュモンドと相談する。
部屋に入ると、まずしたのは、何かしらの盗聴手段がされていないかの確認だ。
イザドラ姉上の事だ。何かしら仕掛けてもおかしくはない。
そう思い、部屋中を物色していると、ドアがノックされた。多分、リッシュモンドだろう。
「開いているから、どうぞ」
『失礼するね~』
誰かがドアを開けて入って来たけど、今は探し物中なので、少し待ってもらおう。
「すまない。今、探し物中でちょっと待ってくれるかな」
「うん? 何を探しているの?」
「イザドラ姉上が、魔法を使って盗聴しているかもしれないから、一応何か不審な者が無いか探している所なんだ」
「ふぅん。そうなんだ」
うん? リッシュモンドの声では無いな。
誰だろうと思い、僕は作業を止めて声がした方に顔を向けると、そこに居たのは。
「おっはよ~」
ミリア姉ちゃんが笑顔で挨拶して来た。
「お、おお、おはよう。ミリア姉ちゃんっ」
ちょっとどもったけど、まぁ良いか。
落ち着け。まだ、計画はバレていないのだから、平常心を持って対応すればいい。
「・・・・・・コホン。ミリア姉ちゃん。こんな朝から、どうかしたの?」
「ああ、朝の散歩に館の中を歩いていたら、リウが部屋に入るのを見かけたから、挨拶しようと思って」
「成程」
「ねぇ、リウ。聞いても良い」
「何を?」
「いや、向こうの大陸に行くにしても、どうやって行くの?」
ストレートで聞いて来るな。
これは、もしかして探りを入れられている?
もしくは、姉上あたりに遠まわしに行かない様に言えとでも言われたのかな?
「ああ、その方法ね。今、模索中かな」
本当はあるのだけど、此処は言わない方が良い。
「そうなんだ。まぁ、もし行く事になっても、イザ姉が妨害するだろうけど、頑張ってね」
ミリア姉ちゃんはそう言って、部屋から出て行った。
何か探りに来たのかな? それとも、何か勘づいたのか?
姉達の中で一番勘が良いからな、ミリア姉ちゃんは。
まぁ、その姉が居なくなったので、安堵の息を吐くと、またドアがノックされた。
「誰だ?」
警戒しておかないとな。
『リッシュモンドです』
「ああ、どうぞ」
ドアが開き、部屋に入って来たのはリッシュモンドだった。
「おはようございます。リウイ様」
「おはよう」
挨拶をして、僕は作業を開始した。
「何をしているのですか?」
「いや、不審物がないかの確認を」
「そんなのありませんよ。もし、あったとしても、朝、この部屋を掃除するメイドの誰かが、わたしかソフィー殿に報告しますよ」
「それも、そうか」
ちょっと、神経質になりすぎたかな。
まぁ、それが分かっただけでも十分か。
僕は自分の椅子に座る。
「ソフィーから計画は聞いているかい?」
「はい。という訳で、その計画の大まかな予定をお話しに参りました」
「予定か。その予定を軸にして行動するという事で良いのかな?」
「はい。段階的に話すと、こうなります」
リッシュモンドは脇に挟んで丸めていた物を、僕の机に広げた。
それは、この土地の地図のようだ。
「まずは、リウイ様が『奥地』に領主の辞めるという事を告げに行くと言う名目で、この館を出ます。そして、そのまま十二氏族から送られる者達と合流。そして『奥地』に向かいます」
「それで? 僕達が『奥地』についたら、どう行動する」
「まずは『奥地』の氏族から送られる者達と合流します。次に『奥地』の北へと向かいます。北は海岸になっています。其処から例の手段で、外海へと旅立つという計画です」
「情報の漏洩は?」
「今の所、ありません。というよりも、問題なのは」
「なのは?」
「リウイ様が本当にその者と話をつける事が出来るのですか? それでこの計画の成否が決まります」
「其処は、まぁ、信用してくれとしか言えないな」
正直に言って成功するかどうかも、自分で分からないとしか言えない。
「全ては、リウイ様に掛かっております」
「はぁ。どうして、こうすんなりと出国出来ないかな」
「其処はそれ、リウイ様の姉君がリウイ様を可愛がっているからかと」
「そろそろ、弟離れして欲しいな」
「出来たらそうしているのでは?」
「確かに」
ぐぅの音も出ないな。




