第90話 さて、どうしようか
「ふぅ、……いや、これは参ったな」
会談はひとまず終わったので、僕は私室に戻り椅子にもたれた。
「お疲れ様です。リウイ様」
そう言って労ってくれるのは、ソフィーだった。
そして、テーブルに茶を淹れたカップを置いてくれた。
「ああ、ありがとう。ソフィー」
僕は感謝しながら、そのカップを手に取り茶を喉に流し込む。
程よい温度の茶だから、ゴクゴクと飲んでいく。
飲み終わると、カップをソーサーに置いた。
ソフィーは「お代わりを淹れますか?」と訊いてきたので、僕は首を横に振る。
「はぁ~、それにしても今日は疲れたよ」
「そうなのですか?」
ソフィーは不思議そうな顔をしていた。今日の会談の話はまだ誰にも話してないので、知っているのは僕と会談に参加した各氏族の代表者達だけだ。
多分だけど、ソフィーの中では、僕が相談も無く王位継承権を破棄して、領地も返上した事で揉めていると思っているのだろうが、違うんだよな。
「はぁ、実はさ」
此処は年長者であるソフィーに意見を聞きたいので、僕は会談の内容を話しだした。
最初は僕が、王位継承権を破棄して領地も返上するという事を話したのだが、その際にこの大陸を出ると言うと、ボルフォレが。
『成程。では、わたし一族からも、何人か出しましょう』
何て言うものだから、各氏族の代表者達も。
『ふむ。確かに、王位継承権を破棄するとは言え、リウイ殿は王族。であれば、王族とのコネクションはまだある。ならば、側に一族の者を置いても問題無いな』
『確かに、リウイ殿。是非、我が娘を供回りに』
『我が部族からもっ』
『儂の所は、孫娘を送っているので、そのまま供周りをさせて下され。本人も喜ぶじゃろう』
『カーミラであれば、何かしら役に立つでしょう。是非に。そして、孫の顔を拝ませてください』
『え、えっと、わたしはどうしたら』
『わたしの所は誰か居るかな、後で調べさせるか』
『何カ、ヨク分カランガ、リウイ殿ガ、コノ国ヲ出ルツウンナラ、儂ノ娘ヲ連レテ行クカ? 身長ガデカイ事ヲ除ケバ、何処ニ嫁ヲ出シテモ問題ナイ器量持チジャゾ』
何で、こうなったんだろうと思ったよ。
結局、その話をどうするかで、また話し合う事にになった。
「……はぁ、そうなのですか」
何とも言えない顔をするソフィー。
僕も正直、どうしてこうなったと思ったよ。
「リウイ様。この話はどうするのですか?」
「あ、ああ、そうだね。……考えてないな」
「そうですか。では、簡単な解決方法がありますよ」
「へぇ、それは?」
「各氏族から送られてくる方々を、全員愛妾にすれば良いのですよ」
「いや、それは駄目でしょう」
「冗談です」
ソフィーは面白そうに笑う。
「・・・・・・で、結局、本当に解決方法があるの?」
「はい。各氏族から送られてくる方々を、全員連れて行けば良いのですよ」
「いや、それは」
流石に無理じゃないか?
「ですが。何処かの氏族の者達を連れて行かなかったら確執が残りますよ。確実に」
「むっ、確かに」
「それに、まさか、百人規模で送られる事はありません。多くて、三十数人です。各氏族がそれだけの人数を送るとは思いませんし、また送られても何とか出来ますよ」
「そうかな?」
正直に言って無理だと思うのだけど。
それだけの人数を連れて、歩くのだぞ。かなり大変だと思うのだが。
船に乗るにしても、馬車に乗るにしても。
「ふふ、大丈夫ですよ」
「本当に? 何か根拠でもあるの?」
「はい。ございます」
そう断言するソフィー。
「……う~ん。だったら、検討するか」
「お聞き届けくれてありがとうございます」
「別に良いのだけど、ああ、そうだ。ソフィー」
「はい。何ですか?」
「ソフィーは付いて来るよね?」
乳母とは言え、付いて来るとは限らないからな。
「ええ、勿論。親子共々お供いたします」
「そっか。分かったよ」
それだけ訊いたら十分だ。
僕はソフィーを下がらせた。
とりあえず、考えは纏まったので、明日リッシュモンドにこの事を話すか。




