第29話 僕って何かした?
僕は二人に引きずられられながら、会議室に向かう。
(あ~、お腹が減った~)
食べる暇もなく連れてかれたので、先程からお腹の虫が鳴りぱなっしだ。
そろそろ部屋に着くので放して欲しいのだが。
「ねぇ二人共、そろそろ放してくれないかな?」
「「駄目(だよ)」」
僕はそれを聞いて、溜め息を吐く。
先程から言っているのだが、何故か放してくれない。
どうしたら放してくれるのかなと思っていたら、会議室に着いてしまった。
会議室に着くと、二人が止まったので僕は立ち上がる事が出来た。
扉を開けると、何人か既に会議室に入っていた。
戦争参加組、不参加組と分かれているわけではなく、それぞれ好きな所に座り話している。
西園寺君も皆が見える所で、腕を組みながら椅子に座っている。
僕達も適当な所で座る。
それから少しして、クラスの皆が全員会議室に来た。
西園寺君がそれを目で確認すると、椅子から立ち上がる。
「まずは、皆に話すべきことがある、それを聞いてくれ」
少しざわついたが、直ぐに静かになった。
「昨日、訓練の最中で長坂達が死んだ」
それを聞いた不参加組の反応は様々だ。
もう知っている人も居れば、今聞いて知った人もいるという具合だ。
知っている人が4で知らない人が6と言う割合だ。
「それを踏まえて聞いてくれ。俺達はこれからどうするかを」
西園寺君は昨日僕達に話した事を話しだした。
話を聞いた皆の反応もそれぞれだ。
その手があったかという人も居れば、今の生活に不満がないと顔に書いている人も居れば外で生活できるかも知れないと聞いて目を輝かせる人も居る。
「以上が俺達が考えた事だ。皆はどうするかはよく考えて決めてくれ。皆の答えは一週間後に聞く。それまでじっくりと考えてくれ」
西園寺君はそれだけ言って部屋から出て行った。
クラスメート達も、周りに居る人に少し話して部屋から出て行く。
皆が出て行く中、僕は少し部屋に残った。
少し考えたい事があったからだ。
椅子に座り、考え込んでいると、いきなり頬を抓られた。
「はひ?(はい)」
誰が僕の頬を抓ているのだろうと思い、顔を向けるとそこに居たのは村松さんだった。
「むたはむひん?(むらまつさん)」
予想していた人と違ったので、驚く僕の頬を抓る。
村松さんは元の世界に居た頃から、それなりに接していた。
何が気に入ったのか、村松さんはよく僕に話し掛けてきた。
話してみたら、ギャルっぽい見た目に反して意外にアニメが好きなようだ。
僕の見た目からアニメが好きだと思ったのだろう。
まぁ嫌いではないので、見ていたアニメでどこが面白いか話した。
アニメの話で話せたのが嬉しいのか、ちょくちょく話しかけてくる。
でも、ユエやマイちゃん達が居る時には話し掛けず、三人が居ない時にしか話し掛けてこない。
村松さんが話しかけると言う事は、僕の周囲を見ると村松さん以外誰も居なかった。
「イノッチ、何を考えてたの~」
「う~ん、これからの事かな」
「これからって、イノッチはもう決めているんじゃないの?」
「いや、まだ決めてないよ」
「ええ~、意外じゃん。イノッチはもう決めていたと思っていた」
「そう言う村松さんは?」
「あたし? あたしわね。もう決めているんだ」
「へェ、参考に聞いてもいい?」
「あたしはね。王宮に居るよ」
「そっか、村松さんはそうするんだ」
戦争に参加するかしないかは分からないが、村松さんが残ると分った。
「イノッチさ、誰か好きな人居る?」
「ぶっ!」
いきなり、脈絡もない事を訊かれて噴き出してしまった。
「い、いいいいいいいききなり、なにをををををっ!」
「だってさ、イノッチさ三大女神を侍らせているのに、誰とも付き合う気配がないから、好きな人がいるかなと思ってさ」
「僕は別に侍らせてないよ。たださ」
「ただ?」
「三人が綺麗すぎてさ、僕と隣に居ると浮いちゃいそうでさ、流石に気まずいんだ」
「じゃあ、好きじゃないの?」
「う~ん、どうなんだろう。ちょっと分からないんだ」
「そっか・・・・・・じゃあ、あたしにも芽があるかも」
「うん? 何か言った?」
「べっつに、じゃあ、あたしはもう行くね!」
村松さんがそう言って部屋から出ていった。
よく分からないけど、機嫌よさそうだ。
村松さんを見送ると、お腹の虫が鳴きだした。
「そう言えば、まだ朝ご飯食べてないんだよね。お腹減ったし食堂に行くか・・・・・・」
僕も部屋を出て、食堂に向かった。




