第88話 ユエに相談
館を出た僕達は、ユエの店に着いたのだが。
「ええ、今日はディアーネ殿が居ないの⁉」
「はい。申し訳ありません。会長は今、向こうの大陸にある各支店の視察をしに行っています。なので、こちらに来るとしたら、早くても一週間後になります」
リメイファンは平謝りしながらそう言う。
「一週間か」
困ったな。向こうの大陸で暮らす場所を提供して貰おうと思ったのだけど。
「連絡は取れないかな?」
流石に無理だろなと思いつつも、一応聞いておこう。
「それでしたら、大丈夫です。ですが、連絡を入れても帰って来るのは一日か二日変わるくらいですね」
「いや、それでも十分だ。今からディアーネ殿に手紙を書くから、それを出してくれるかい」
「畏まりました」
「上の部屋を借りるけど良いかい?」
「どうぞ。お好きに」
僕は上の部屋を借りる。部屋の前にはルーティ達に警備してもらってから手紙を書いた。
部屋の中に居られると、手紙に集中できないんだよな。昔から。
いや、この場合は前世からと言うのが正しいのか? まぁ、そんな事はどうでも良いか。
誰かに見られても書いている事がバレないように、中国語で書こう。
昔、ユエに教わったので読みと書きと自己紹介ぐらいは出来る。更に、この世界の文字ではないから、読めるのはユエと僕だけだ。
なので、もし、誰かに見られても特に問題ない。
数分後。
「よし、こんな所か」
手紙を書き終えたので、その手紙をたたんで封筒の中に入れる。
そして、その手紙を持って部屋を出た。
部屋の前で警備していたルーティが僕を見るなり頭を下げた。
「もう書き終わりましたか?」
「ああ、これをリメイファンに渡したら、後は各氏族の長達に会う準備をしないとな」
「父も喜ぶと思います」
「そうだろうな」
十一人いる部下の中で、特に忠実だったのがリッシュモンドとボルフォレだったな。
もう一人の『踊る牙』はあれは、忠実と言うよりも狂信っていう感じだった。
勧誘はしたけど、どうして仕えるようになったんだろう?
多分、生きているだろうから、もし会えたら、コッソリと正体をばらして聞いてみるか。
そう思いながら、僕は階段を降りて行き、手紙をリメイファンに渡して、店から出て行った。
リウイが店を出た後。
リメイファンはリウイから渡された手紙を見る。
「一応、何と書かれているか確認しておかないと、どなたからの手紙だけではどんな内容かと聞かれても困りますからね」
リメイファンは封筒から手紙を出して広げた。
そして、手紙を見るなり目を疑う。
「・・・・・・なに、この文字?」
カクカクして見た事もない文字で書かれていた。
意味がサッパリ不明であった。
「・・・・・・会長にはリウイ様からの手紙を言って渡せばいいわね」
リメイファンは手紙を封筒に戻してディアーネに渡す手段を取った。
後日。
ディアーネからの手紙の返事が来た。
「『手紙は受け取った。もし、リウイ殿がお前を頼って来たら、手を貸す様に』か」
その手紙を読み終えたリメイファンは思った。
(あの文字、解読できたのね。それにしても、何時の間にあのような暗号で連絡を取る手段を取ったのかしら?)




