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第87話 三十六計逃げるに如かず

 謁見の間を出た僕は直ぐに、私室に戻る。

 私室には、お付きのメイドのティナとシャリュが居た。

「お帰りなさいませ。リウイ様」

 シャリュは椅子から立ち上がり頭を下げた。

「ああ、ただいま」

 僕はシャリュに答えていると、ティナの返事がないので周りを見ていたが。

「すー、すー、・・・・・・」

 ティナはベッドで大の字に寝ていた。

 おいおい、メイドの君が主人より先に寝ているのは駄目でしょう。

「お~い。ティナ」

「・・・・・・う、う~ん」

 僕がティナを揺らした。

 少しすると、ティナが身体を起こして欠伸をした。

「ふわ~、・・・・・・りうい、おはよう」

「おはよう。起きて直ぐで悪いけど、出立の準備をして」

「はい?」

「どちらに行くのですか?」

 二人は首を傾げていた。

「領地に戻るんだよ」

「「戻るっ⁉」」

 ああ、やっぱりそんな反応だよね。

「実は……」

 僕は先程の事を話した。

「・・・成程ね。でも、どうして領地に帰るの?」

「もう少ししたら、イザドラ姉様が駆けこんで来ると思うから、その前に逃げる」

「逃げるって」

「良いのですか? 後が大変な事になりますよ」

「大丈夫。後の事は…………ロゼ姉様に任せよう」

 困った時は、ロゼ姉様に任せるのが一番だ。

「という訳で、準備早くお願い」

「分かりました」

「了解~」

 二人は返事をして、帰宅準備をしてくれた。

 数十分後。

 帰る準備が出来たので、一筆残して僕達は馬車に乗り込んで魔都を後にした。

 さて、帰ったらやる事が盛り沢山で大変だな。頑張ろう。


魔都を出て数日後。


 僕達は都市『カオンジ』に着いた。

 そして、館の前に着き、馬車から降りると、リッシュモンドとソフィーが出迎えてくれた。

「「お帰りなさいませ。リウイ様」」

「ああ、ただいま。帰って来て早々で悪いのだけど、リッシュモンド」

「はっ」

「十二氏族の族長達と『奥地』の各氏族の部族の長達に連絡を入れてくれ」

「はっ。どのような連絡を入れるのですか?」

「出来るだけ早く『カオンジ』に参上っと」

「畏まりました」

 リッシュモンドがそう言って、各氏族の長達に出す手紙を出す為に、部下の所に行った。

「ソフィーは至急、この領地の五年間文の台帳を用意して」

「台帳ですか。分かりました」

 ソフィーは直ぐに台帳を用意しに行った。

 二人を見送ると、ティナ達と別れて僕は執務室に向かう。

 この領地の領主が次は誰になるか分からないけど、引継ぎの準備はしとかないとな。

 執務室に入って、少しすると。

 ドアがノックされた。

『どうぞ』

「失礼します」

 ソフィーが手に紙の束を持ってやって来た。

「これが今年の領地の、村、人口、収穫物の取れ高。十二氏族及び『奥地』で暮らしている部族との交易で輸入された物と輸出した物を記した台帳です」

「ありがとう」

 僕はそれを一つ一つ目を通していく。

 ふむ。どれも細かく、記されているな。

 パラパラとめくりながら、台帳を見ていると。

「リウイ様」

「何? ソフィー」

「台帳を見て、何をなさるのですか?」

「ああ、それね」

 そう言えば、まだソフィー達には言っていなかったな。

「少し待ってくれるかな。リッシュモンドが来たら一緒に話すから」

「分かりました」

 ソフィーはそれ以上は何も聞かなかった。

 それから少しして、リッシュモンドが執務室に来た。

「リウイ様。各氏族の長に送る手紙を書き終え、先程使者に持たせて出立させました」

「そうか。ありがとう」

「いえ、それよりも、どうして各氏族の長を呼びのですか?」

「……実はね」

 僕は二人に魔都であった事を話した。

「成程。そういう訳ですか」

「理由は分かりましたが、リウイ様」

「なに? ソフィー」

「この国を出て何処かに行く当てはあるのですか?」

「ああ、それはね。ディアーネ殿の伝手を借りようと思う」

「ディアーネ殿ですか」

 ソフィーは不安そうな顔をしていた。

「大丈夫。僕を騙すような事はしないだろうし」

 伊達に前世では幼馴染をしていない。

 ユエの人となりは知っている。

「ああ、そうだ。ディアーネ殿に一言言っておかないと駄目だな」

 話をしていて、ユエに言っていない事を思い出したので、僕は席を立つ。

「暫く席を外す。後は任せても良いかな?」

「お任せ下さい」

「問題ありません」

 二人がそう答えたので、僕は護衛にルーティ達を連れて、ユエの店へと向かった。







 リウイ達が魔都が出て行ってから、二時間後。

 イザドラがドタドタと足音を立てて走る音が、廊下に響き渡る。

 ある部屋の前まで来ると、ピタリと止まる。

「此処ね」

 イザドラはノックもせずにドアを開けた。

「リウイ‼」

 ドアを開けて部屋に入ったイザドラは返事も待たずに部屋の中に入って行く。

「先程の件、わたしは聞いていませんよ。どういう事か、わたしにちゃんと説明を」

 そう言っていて、部屋に誰も居ない事に気付くイザドラ。

 そして、机の紙が置かれていたので、それを手に取り見た。

『先に、領地に帰ります。リウイ』

 紙にはそう書かれていた。

 その紙を見ながら、身体を震わせるイザドラ。

「あ、あの子っ⁉」

 イザドラは直ぐに誰も魔都から出さないように指示したが、既にリウイ達が魔都から出たと聞いて地団駄を踏んだ。

 しまいには、後を追いかける兵を出そうとしたが、其処はロゼティータが止めた。




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