第81話 姉がやって来た
先触れが来たので、僕達は急いで都市の南門で集まった。
そして、姉さん達が来るまで待った。
待つ事。数十分。
ライフル型の魔弾銃を持ちながら、整然と歩きながらやって来る軍がやって来た。
銃身には、剣が取り付けられていた。
着用しているのは動き易さを重視したベストのようだ。
何か、前世の軍隊みたいな装備だなと思いつつ見ていると、馬型の魔獣に引かれている馬車が僕達の前まで来た。
御者の人が御者台から降りて、馬車の扉を開けた。
まず出て来たのは、イザドラ姉上だった。
イザドラ姉上は降りて、僕を見るなり笑顔を浮かべた。
次にロゼ姉様だった。
そして、二人は一緒に、僕の所まで来た。
「お久しぶりですね。リウイ。元気そうでなりよりです」
「はい。姉上も元気そうでなりより」
「そうですか。ふふ、だとしたら、リウイの顔を見れたからでしょうね」
微笑むイザドラ姉上。
僕は苦笑した。
次に僕は、ロゼ姉様を見た。
「ロゼ姉様もお変わりなく」
「この間ぶりじゃな。相変わらず元気そうじゃな。リィン」
「うん。ロゼ姉様も元気そうだね」
僕とロゼ姉様は微笑んだ。
「ところで、御二人は今日はどんな御用で?」
「それについては館に着いてから話しましょう。ですが、その前に」
「前に?」
「ちょっと寄りたい所かあるので、其処に行きたいのですが良いですか?」
やっぱりな。何となくそう言うと思った。
「行きたい所ですか? えっと、何処に行くのですか?」
「ええ、ちょっと行きたい所です。案内してくれますよね?」
「え、えっと、姉上達を歓迎する宴の準備が整っていますので、その行きたい所は明日にでも良いと思いますけど?」
時間稼ぎしないとな。
「今、行きたい、のですけど?」
笑顔でずずいーっと顔を寄せて来た。
これは、案内しないと面倒な事になりそうだな。
「わ、分かりました。直ぐに案内しますね」
「ええ、御願いしますね」
仕方が無く、僕は他の姉さん達と一緒に、姉上が行きたい所に向かう事となった。
で、案内した所は、予想通りユエの店だった。
「さぁ、入りましょうか」
イザドラ姉上は僕の手を引いて、店の中に入る。
その後を、ロゼ姉様達が付いて来る。
「相も変わらず、リィンには甘いのぅ」
「そうね~。まぁ、気持ちは分からないでもないけど」
「リウイは可愛い」
「確かにね~、パパとリウのお母さんとの間でよくあんなに可愛い子が出来たよね~」
ううっ、いい加減、僕はカッコいいと言われたいな。
一生無理かもしれないけど、頑張ろう。
そう思いつつ、僕達は店の中に入ると、店の中には客は誰も居なかった。
「これはこれは、領主様。ご機嫌麗しゅう」
店員をしているリメイファンが僕を見るなり挨拶して来た。
「やぁ、ところで会長は居るかな?」
「会長ですか? 今、出掛けております」
「そうか。どうする?」
イザドラ姉上を見ると、姉上は答えず店の中を見回していた。
「姉上?」
「ああ、そうですね。少し待たせてもらいましょうか」
「分かりました」
リメイファンが僕達を二階にある客間に案内してくれた。
その客間に通され、僕達は用意してくれた茶と茶菓子を味わっていた。
「美味しいな」
「うん。これはいけるわね」
「美味しいね。ロゼ姉っ」
「うむ。これは美味いな」
姉さん達も高評価のようだ。
この菓子って確かエッグタルトだよな。もしかして、ユエが作ったのかな?
と思い取って食べてみると、前世で食べたユエのエッグタルトの味のまんまだった。
懐かしいなと思いつつ食べていると、イザドラ姉上が菓子にも茶にも手をつけず、部屋を見回していた。
窓の方に行くと、徐に窓枠に指を乗せてスーッと横に動かした。
その指を目の位置まで持ってきて、ジロジロと見る。
「……っち」
何か、舌打ちしだしたぞ?
これってもしかして、あれか?
ドラマとか漫画とかで、偶に姑が嫁いびりに使う方法じゃないか。
何で、そんな事をするのかな?
茶を飲みながらそう思いつつ、僕達はユエが来るのを待った。
 




