第78話 抗争が始まった
正メンバーが全員、ウスルとローパンとカインとアルスの四人以外の仮メンバーが揃った。
「……これ以上は無理だな」
ガイウスは時計を外を見ながら呟く。
ウスルとローパンが居ないので、少し待つ事にしたが、一向に二人は現れない。
それもそうだ。だって、もう捕まえているのだから。
「副リーダー。そろそろ行かないと、向こうの戦争が終わっちまうかもしれねえぜ」
戦争ね。そこまで酷い惨状は生み出さないと思うけどね。
メンバーの一人がそう言いだしたので、ガイウスはモルべさんを見る。
モルべさんが頷いたので、ガイウスは口を開いた。
「仕方がない。俺達もいくぞ」
「「「おおおおおおおおおおっ⁉」」」
僕達以外のメンバ―は歓声を上げた。
店を出た僕達は南地区に着いた。
「……静かだな」
「ああ、そうだな」
南地区に着いた時は、まだ静かであった。
「まだ、おっぱじめていはいないようだな」
ガイウスは周りを見る。
しかし、何処にも戦闘音は聞こえない。
「こういう場合は、下手に動かないで付近の偵察するのが常道ね」
モルべさんがそう言いだした。
意外に、戦術にも知識があるようだ。
「そうだな。じゃあ、お前等。三人一組になって、付近を偵察して来い」
ガイウスがそう言いだしたの、三人一組になって付近を偵察した。
勿論、僕達も一緒に探した。
メンバーの皆と離れた所で、僕達は足を止めた。
「さて、此処で良いかな」
「・・・・・・周りには誰も居ないわ」
カーミラさんが周囲を見る。
「よし。じゃあ、カーミラさん」
「何かしら?」
「ディアーネに伝令を送ってくれるかな」
「分かったわ。何て、送れば良いの?」
「『計画通りに進行してくれ』と」
「分かったわ」
カーミラさんの自分の影から、黒い影が出て来た。その影が蝙蝠の姿となった。
「行きなさい。わたくしの眷属」
カーミラさんがそう言うと、黒い蝙蝠は飛んで行った。
これで、後は事前に話した計画通りいけばいい。
そう思っていると。
ドオオオオン‼⁉
爆発音がしたと思うと、何処からか喚声が聞こえて来た。
「・・・始まったね」
「音が聞こえた方向は、あっちねっ」
「行こうか。二人共」
僕達は音がした方に向かう。
派手な爆発音がした音がしてた方に向かっていると、周辺を偵察していたメンバー達とも合流した。
「お前等も、あの音を聞いたか?」
「まぁ、あんな派手な音がしたら、誰でも聞こえるだろうな」
皆、走りながら話している。
結構、大きな音がしたからな。まぁ、当然と言えば当然か。
僕達がその音がした所に着くと。
「「おおおおおおおおおおっっっ」」
『ランページクラブ』と『クリムゾン・ティガー』の両チームのメンバー達が、思い思いの得物を持ちながら喚声を上げながらぶつかっていた。
「死に晒せやっ」
「そっちこそ!」
「くたばれっ‼」
「お前が先にくたばれっ!」
と言い合いながら、得物をぶつけあっている。
これは長引きそうだな。
物陰に隠れながらそう思っていると、モルべさん達がやって来た。
「戦況は?」
挨拶もしないで、モルべさんがそう訊いてきた。
「今の所、両チーム一進一退で押し込む事も抑え込む事も出来ていません」
「そう。じゃあ、このまま終わるまで観戦するのが良いわね」
同感だね。
モルべさんがそう言ったので、皆物陰に隠れながら、両チームの抗争を見ていた。
そんな中で、僕はティナ達と一緒にスッと抜け出した。『プゼルセイレーン』のメンバー全員、抗争に集中していたお蔭で、特に問題なく抜けれた。
僕達が近くの路地に身を隠し、そして周囲に誰も居ない事を確認した。
「カーミラさん。この位置で抗争が始まっているという事を、ディアーネに一報を入れて下さい」
「分かったわ」
カーミラさんが眷族を送り出したのを横目で確認した。
後は、ぶつかる時を待つだけだ。
ユエに連絡を送り、僕達は二つのチームの戦いを見れる物陰に戻る。
それから、三十分後。
徐々にだが、形勢が変わって来た。
「しゃあああ、押せ押せっ!」
「これで、南地区は俺らのものだっ」
そう言って、攻勢を掛けるのは『クリムゾン・ティガー』だった。
その勢いに『ランページクラブ』は押されてきた。
やはり、リーダーが居ないのが大きいようだ。
そう言えば『ランページクラブ』のリーダーは何処に行ったんだろう? バシドの話だと、そこら辺の森に捨てて来たとか言っていたが、魔物の群れにでも襲われたかな?
まぁ、今はそんな事よりも、こっちの方が大事だ。
僕が見ていると『プゼルセイレーン』のメンバーの皆もそろそろだと思ったのか、得物を構え何時でも駆けれる様にしていた。
更に三十分後。
形勢が完全に決まった。『ランページクラブ』の末端の人達が逃げ出し始めた。
どうやら、決着が着いたようだ。
「「「おおおおおおおっ、勝ったぞ‼」」」
勝利の歓声をあげる『クリムゾン・ティガー』の人達。
『ランページクラブ』に勝てた事が嬉しいのか、皆喜んでいる。
そんな様子を見ながら、ちょっと気になっていた事があるので、僕はガイウスの下に寄る。
「すいません。副リーダー。『クリムゾン・ティガー』のリーダーってどんな人何ですか?」
「ああ、丁度ここからでも見えるな。あいつだ」
ガイウスが指差したので、その指の先を見る。
其処に居たのは、魔人族の男性だった。
何処からどう見ても、混血とかそいうのではなく魔人族の男性だった。
「あいつが『クリムゾン・ティガー』のリーダーをしているゴルダって奴だ」
「・・・何処も虎には見えないのですが?」
「多分、強そうな動物の名前で着けただけだろう。赤い虎ってかっこいいみたいな感じで」
「成程」
その気持ちは分からなくもないけどね。
「さて、そろそろ行くぞ。手前らっ」
「「「おうっ!」」」
ガイウスが剣を抜いて、号令を下すと『プゼルセイレーン』のメンバー達は得物を持つ手に力を入れる。
そして、ガイウスの号令を持つ。
「……かかれっ」
ガイウスが剣を振り下ろして、命を下した。
「「「「おおおおおおおおおおおおおっっっ」」」」
その声と共に『プゼルセイレーン』のメンバー達は物陰から出て来て駆け出した。
僕もその後を追いかけた。




