第76話 時が動いた。
翌日。
僕は仕事をさっさと片付けると、館を出る準備をした。
姉さん達に見つからない様に。
「……よし、ここまでくれば大丈夫だな」
玄関まで来て、誰にも見つかっていない事を喜びながら、外に出掛けようとしたら。
「リウイ様?」
「ほわああっ⁉」
声を出して思ったけど、結構高い声で出せるんだな。僕って。
と、そんな事はどうでもいい。
僕に声を掛けたのは誰だと思い振り返ると。
其処には、意外な組み合わせの二人が居た。
「アリアンにアルネブじゃないか。何かあったのかい?」
「あったのというか・・・」
「リウイ様は、何処かにお出かけですか?」
「あ、ああ~、うん。そうだね」
「お供は?」
そう言えば、誰にも声を掛けていなかったな。
アルトリアでも呼ぼうか。
「ルーティとアルトリアなら、マスターのお姉さま方に呼び出されていましたよ」
「はい?」
何で、その二人を呼んだんだ?
う~ん。何を意図しているのかサッパリ分からない。
しかし、此処で姉さん達から何をしているか聞きだそうものなら、長年の経験から確実に何かさせるのは目に見ている。
なので、ほっとく事にした。
でも、護衛が居ないのは問題なだ。おうしたものか。
「護衛が居ないのでしたら、わたし達がお供しましょうか?」
アルネブがそう言い出した。
「……そうだな」
実力的に言えば、問題ないので大丈夫だな。
「じゃあ、お願いできるかな?」
「喜んで」
「ええ、別に良いですよ」
二人がそう言うので、僕はアルネブ達を連れて、ユエの店へと向かった。
館を出て少し歩くと、ユエの店の前まで来た。
店の中に入ると、丁度ユエが客の応対をしていたので、店員に行って先に部屋で待たせてもらった。
部屋に入り、茶を飲んで待つ事暫し。
「待たせたな。ノブ」
ユエは部屋に入るなり、声を掛ける。
「いや、それほど待ってないよ」
「そうか。それならいいが」
ユエは僕の対面の席に座る。
「それで、今日は何の用で来たのだ? デートの誘いなら何時でも良いぞ」
「いや、違うから」
何でそんな風な話に持っていくのかな?
「では、何の用で来たんだ?」
「実はこの前の話で変更する事があって」
「その話か。丁度良かった。わたしもその事で話があったんだ」
「話? とう事はっ」
「相変わらず察しが良いな。そうだ。『ランページクラブ』と『クリムゾン・ティガー』が今夜あたりぶつかりそうだという情報が入ったぞ」
「そうか。いよいよか」
想定よりも、少し早かったが。まぁ、誤差の範囲だな。
「ユエ。実は」
「皆まで言うな。『プゼルセイレーン』が動いたら『ビアンコ・ピピストレロ』を動かせと言いたいのだろう? 心配するな。今、出撃準備を進ませている。夜までには完了するだろう」
「そうか。助かる」
「なに、お前とわたしの仲ではないか」
そして、僕達は話し合い、大まかな段取りを決めた。




