第27話 これからについて
僕達は前使った会議室に入る。
席は適当に座り、僕達が全員座るのを確認したら、西園寺君が口を開く。
「この場は俺が仕切るが、皆良いな?」
全員頷いた。
「では、集まってもらったのは他でもない。今後についてだ」
予想通りの内容だ。
「俺達はこの世界に来てから、かなりの歳月が経っている。通貨の概念、風習、文化などはある程度理解は出来る程学んだ」
「そうだね。少なくとも、外に出て働いてピンハネされることはないね」
「その事を理解して聞いてくれ。俺達はどうしたら良いと思う?」
「どうしたらだって、そんなの戦争が終結するまで、国に手を貸すだけだろう?」
天城君がそう言うと、西園寺君が首を横に振る。
「少し前はそうだったが、今は違う。俺達の力と知識を持ってすれば国に仕えなくても、食べていく事が出来る」
「話が見えないぞ。何が話したいんだ? 西園寺」
「もう、王宮から出て生活しても良いのではないかと言いたいのでしょう。西園寺君」
「なっ、なに⁈」
「その通りだ。俺は明日、この事を話そうと思う」
「ちょっと待て、西園寺、俺達が王宮を出て行ったら、この国はどうなるんだ?」
「俺達を呼んだからと言って、国が亡ぶまで付き合う必要は無い」
「そうかもしれないが、俺達を呼んだんだから助ける事をしても良いだろうっ」
「助けるにしても人手が足りなくなるかもしれないのか?」
「? どう意味だ?」
「・・・・・・今回の訓練でクラスメートから死人が出た」
「そうだ。だが、あれはあいつらの不注意が招いた事だろう」
「確かにあいつらの不注意だった。だが、問題はそこじゃない」
「どうゆう事だ?」
「死人が出た事で、戦争に参加する奴らが怖くなって、不参加に回るかもしれない」
「あっ」
言われて理解した天城君。
「今回の訓練で死んだのは三名。戦争に参加する奴らは二十五名になった。更に今回の件で抜ける奴も居るだろう。何人抜けるか分からないが、戦うのに支障は出るはずだ」
「・・・・・・そうなるな」
「西園寺君、それが最初の話とどう繋がるの?」
「これから歩む道を皆に選ばせようと思う」
「選ばせる?」
コクリと頷く西園寺君。
「俺達が選べる道は三つ。一つはこのまま王国に仕えて、戦争終結まで手を貸す事だ」
「まぁ、これが無難な選択だね」
「二つ目は戦争に参加するのを取り消して、王宮で生活する」
「今、不参加組がしている事か」
「三つ目、これが一番賭けだ」
「賭け? 何をするの?」
「適当な理由をでっちあげて、王宮から出て俺達が居た世界の帰る方法を探す」
「「「「・・・・・・・・・・・・・」」」」
それを聞いて、皆黙り込む。
僕もその考えには、至らなかったので驚いた。
「王宮から出て行くって、どうやって生活するつもりだ?」
「街に出たとしても、働く方法は幾らでもある。例えば冒険者になるとか賞金稼ぎになるとか、商人になるとか傭兵になるとかな」
聞いた話だと、この世界ででは識字と四則演算が出来る人がそう多くない。
僕達は字の読み書きは問題ないし、四則演算は出来る。
不参加組も、僕達が訓練をしている間に字を習っていると聞いている。
だから、もし王宮の外に出ても食べる事に困る事はないだろう。
「正直言って、三つ目の案を選ぶ奴が居るのか疑問だ。ここでの生活はかなり優雅だぞ」
「確かに優雅だ。だが、それは俺達が戦争に参加する奴らがいるから、そんな生活が出来るんだ」
「いや、俺達を無理矢理呼んだのだから、せめてもの罪滅ぼしにさせているかもしれないぞ」
「何にせよ。向こうの心一つで待遇が変わる。だから、その前に王宮を出て、自分の力で生活できるようにするのも一つの手だ」
「そんな意見が出るんだから、西園寺、王宮を出るの?」
「ああ、そのつもりだ。だが、今では無い」
「そっ、まぁ、あたしには関係ないから良いけど。ノッ君はどうする?」
「僕? 僕は・・・・・・・・」
このまま王宮に居て、帰れる方法を探した方が良いと思っている。
だが、西園寺君の意見にも興味が湧いている。
(この世界の事を知るのも悪くないな・・・・・・)
命がけだが、それでもやる価値はある。
皆は何も言わず考えている。
「兎に角、明日この会議場で今の話をする。お前達も少しはどうするか考えておいて欲しい」
西園寺君がそう言って、話を締めくくった。
僕達は会議室から出て行く。
(・・・・・・ふぅ、悩むなぁ)
僕は自分への部屋の道すがら考える。




