第72話 計画通りに進んでいる
バシドからの報告を受けて、僕はニヤリと笑みを浮かべた。
そして、バシドを下がらせると、次にメイドにリッシュモンドを呼んでくるように頼んだ。
少しして、メイドがリッシュモンドを連れて来た。
「ご苦労。下がって良いよ」
僕がそう言うと、メイドが頭を下げて部屋を出て行った。
メイドが出て行くのを確認すると、リッシュモンドが口を開いた。
「お呼びという事は、例の件が上手くいったようですね」
「ああ、そうだよ」
ぼくは笑みを浮かべて頷いた。
「これで『ランページクラブ』は混乱するでしょう。これを機に『クリムゾン・ティガー』は動くでしょうね」
「だろうね。それに動かないなら、動かすだけだ」
南地区で知り合ったあの三人組を使って噂を流したり、情報をリークしたりして。
「これで『ランページクラブ』と『クリムゾン・ティガー』は衝突する。どっちが勝っても良い。勝った方は間違いなく、組織としてはボロボロだろろうな」
「そこをリウイ様率いる領主の軍で鎮圧させるのですね。罪状は騒乱罪ですかな?」
そこまではリッシュモンドが献策してきた。
だが、僕はそれにもう一工夫する。
「いや、領主の軍は動かさない」
「何故ですか? 南地区に巣くっているゴロツキ共を一掃する好機ですよ」
「其処は『プゼルセイレーン』を動かすのさ。同盟相手の『ビアンコ・ピピストレロ』と共に」
「? 何故、そこで二つのチームを動かすのですか?」
「簡単だよ。これを機に『プゼルセイレーン』も潰すからさ」
僕が事もなげに言うと、リッシュモンドは言葉を詰まらせた。
「なんと⁉」
「正確に言えば、傘下に加えるかな」
「でしたら、無傷のままで手に入れた方が良いのでは?」
「その状態で傘下に加えたら指揮系統に支障が生じそうだから、まず最初に誰が上なのかを知らしめるべきだと思う」
「成程。左様ですか」
リッシュモンドは感心した様に頷く。
本音を言えば、傘下に加わる様に要請したい。
だが、向こうが聞いてくれるかどうか分からないからな。
なので、一度『プゼルセイレーン』を解体させて、僕の私兵部隊に組み込んだ方が、後で指揮系統で揉める事はないだろう。
「でしたら『ビアンコ・ピピストレロ』を動かす必要はないのでは?」
「ああ、それはね」
僕は笑みを浮かべた。
「ユエに『プゼルセイレーン』を攻撃させるのさ」
「ほっ‼」
これには、リッツシュモンドを驚いていた。
「ユエ殿を動かすのですか? しかし、こちらの頼みに聞いてくれますか?」
「其処は頼めばいけるよ。後は、向こうの出す条件を聞けば大丈夫だろう」
「しかし、其処で『ビアンコ・ピピストレロ』を動かす必要はないのでは? わが軍だけでもいけると思うのですが」
「戦わずにして勝つ、これも軍略だよ」
「確かにそうですな」
「という訳で、これからユエの所に行くけど、いいよね」
「はっ。護衛をつけてくれるのであれば問題ありません」
「分かった」
僕はそう返事して、部屋を出た。
さて、誰を連れて行こうかな。




