第71話 状況の確認
数日後。
リッシュモンドがようやく任地から帰って来た。
その間、僕は下から上がって来る書類仕事に忙殺されていた。
さらば、書類の山に囲まれた生活っ。
でも、考えてみれば、リッシュモンドにそういう仕事を押し付けていたからこうなったんだよな。
今度から、暇を見つけて仕事を手伝う事にしよう。
そう心の中で決めると、ドアがノックされた。
「誰だ?」
『リッシュモンドです。入っても良いですか?」
「どうぞ」
入る様に促すと、リッシュモンドが部屋に入って来た。
「リウイ様。ただいま戻りました」
「ああ、視察、お疲れ様」
「有り難きお言葉。痛み入ります」
畏まった一礼をするリッシュモンド。
「さて、こうして来たから、ちょっと話を聞いて欲しい」
「はっ。何なりとおっしゃってください」
「南地区の二つのチームをどうしたらいいか、困っているんだ。意見を聞きたい」
「分かりました。では、現状で分かっている事を全て、話してください」
そう言われて、僕は現状で分かっている事を話した。
「成程。南地区はそのような状況になっているのですね」
「ああ、そうなんだ。という訳で、何か良い案は無いか?」
「……そうですな。では、このような策は如何ですか?」
「どんな策?」
リッシュモンドは顔を近づけてきたので、僕は耳を寄せた。
そして、リッシュモンドの策を聞いた。
「…成程。その案も良いな」
「現状では、この策が一番良いと思います」
「分かった。じゃあ、その策でいこう」
「はっ。では、早速そのように」
リッシュモンドは一礼して、部屋を出て行った。
さて、僕も作戦通りに行くとするか。
リッシュモンドと別れた僕はバシドを私室に呼んだ。
椅子に座りながら、僕はバシドが来るのを待っていると。
「リウイ様。御呼びにより参りました」
と言って、天上から降りて来た。
「ぶふっ‼」
此処は忍者屋敷かよっと叫びそうになったが、自制心で抑え込んだ。
「ん、んん。急に呼び立てて済まない。重要な案件があるから呼んだんだ」
「はっ。何なりとご命令を」
バシドは畏まりながら、僕の命令を待っている。
「南地区に『ランページクラブ』というチームがある事を知っているかな?」
「はい。存じております」
「そのチームの内情、特にリーダーの事を調べてくれるかな」
「畏まりました」
バシドはそう言って、姿を消した。
アラクネってこんな事も出来るのかな?
数日後。
僕は今日の分の仕事を終えて、私室でのんびりとしていた。
リッシュモンドの仕事を手伝ったのだが、その時に『何か悪い物でも食べましたか?』と言われた時には、流石にカチンと来た。
けど、そんな事で怒るのは、大人げないと思い自制した。
そして、真面目に仕事に取り組んだ。
「ふぅ、それにしても疲れたな……」
あんな山の様な書類を毎日片づけているのか、前世の僕でもあの量の仕事はした事はないな。
殆どリッシュモンドに押し付けていたな。はっはは、……もしかして、今と変わらないのでは?
「そ、そんな事はないよな。うん。多分、きっとそうだ」
茶を飲みながらそう思っていると。
コンコンッとドアがノックされた。
「誰だ?」
『リウイ様。バシドです。入っても良いでしょうか」
「ああ、良いよ」
部屋に入る様に促したが、ドアが開けられる気配がない。
どうしたのだろうか?
「失礼します」
「ぶふぅあああっ‼」
ノックされたのに、何故か天井から降りて来た。
思わず、茶を噴き出した。
「けほ、げほっ、……な、なんで、てんじょうから、おりてくるのさっ」
「この身体ですと、ドアから入るのが大変でして」
「それなら仕方がないけど、わざわざドアをノックしてから、天井から降りて来るなんて、面倒じゃないか?」
「いえ、最初から天井にいましたよ」
「へ? じゃあ、どうやって、ドアをノックしたんだい?」
「それは秘密です」
バシドは人差し指を口に当てる。
「……じゃあ、仕方がないか」
聞いても教えてくれる気がしなかったので、僕は訊かない事にした。
「で、この部屋に来たという事は、頼んだ事は出来ているのかい?」
「はい。此処に」
バシドは書類の束を僕に渡した。
その書類を手に取り、中身を見た。
よし。これなら、いけるな。
「疲れている所悪いけど、バシド。次に仕事を与えても良いかな」
別にバシドじゃなくても良いが、ついでに頼む事にした。
「何なりと」
バシドがそう言うので、僕は次の命令を出した。
「承知しました。では、直ちに」
そう返事をして、バシドの姿が消えた。
さて、後は上手くいく事を祈るか。




