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第67話 話しは分かった

 人獅子族達との捕り物を見た僕達は、ユエの店へと戻った。

 そして、ユエの部下が料理を作っている間、先程の事を話していた。

「さっきの、あれはどう思う?」

 客間で、僕とユエは茶を飲みながら、ユエに訊ねた。

「あれとは、あの捕り物の事か?」

 その通りとばかりに頷く僕。

「ふむ。言える事といえば、あの者と人獅子族の者達とは、何かしらの確執があるとしか言えないな」

 そうだよな。良く知らない僕達からしたら、それぐらいしか言えないよな。

「だから、当人に話を聞いたらどうだ? 人獅子族の者達はお前の館にも居るのだろう?」

「ああ、うん。そうなんだ。じゃあ、館に戻ったら早速呼び出して話をするか」

「それが良い。だが、今は」

 ユエが目を扉に向けると、扉がノックされた。

『失礼します。お食事が出来ましたので、お呼びに参りました』

「ご苦労。今行く」

 ユエはそう言って、席を立った。

「では、行こうか。ノブ」

「了解。どんなのが出て来るか楽しみだよ」

 僕達はダイニングルームへと向かった。

 ちなみに、出て来た料理は中華料理であった。

 正確に言えば、中華をベースにしたこの世界風の料理だ。

 何せ材料が、熊型の魔獣の掌とか豚の姿をした魔獣の丸焼きとか鳥の丸焼きとか出て来た。

 久しぶりに中華を食べる事が出来て、僕は嬉しくてつい箸が進んでしまった。

 余談だけど、一緒の席に着いているソフィー達はあまりの量の料理に度肝を抜かれているようだ。


 翌日。

 

 ユエとの会食を終えた僕は、執務室に入るなり、デネボラを呼んだ。

 仕事の方は、昨日の書類はなんだったの? というぐらいの量の書類しかないので、問題ない。

 デネボラが来るまでの間に片付けられる量だ。

 承認の印を押しながら、頭の中で保留、不許可、許可の三通りに分けて行くと。

 書類がなくなっていく。デネボラが来るまでに終わるかなと思いつつ、仕事をしていると。

 部屋の戸が叩かれた。

「どうぞ」

 僕は誰か確認する事なく、部屋に通した。

『失礼します』

 そう言って、扉を開けて入って来たのはデネボラだった。

「やあ、こんな朝早くから呼び立てて済まない」

「いえ、別に構いません。それで、わたしを呼んだ理由は何でしょうか?」

 雑談を交えず聞いて来るとは、直球だね。

 まぁ、あまり時間を掛けても意味は無いか。

「……実はね。昨日、南地区で人獅子族がちょっとした事で騒動になったと聞いているんだけど。何か聞いてないかい?」

「……いえ、聞いてはおりません」

「そうか。その騒動を起こした人獅子族の中には、デネボラの姿もあったと報告が入っているんだけど?」

「っ⁉」

 デネボラの眉がピクリと動いた。

「存じません。それを見た者は見間違ったのでは?」

 ふむ。どうしても話すつもりはないようだ。

 此処は強引に聞くか。いや、そこまでしても教えてくれるかどうか。さてさて、どうしたものか。

 そう思っていると。

 バタン‼

 そんな大きな音が聞こそうな位に扉が開かれた。

 誰か入って来たようだ。けど、誰だ?

「ちょっと、デネボラ。本当にウォルフを見つけたの?」

 扉を開けて入って来たのは、見た事がある人であった。

 確か、人獅子族の族長の娘の一人で名前はレグルスだったな。

「レグ姉様。どうして、此処に‼」

「手紙が来たから、わたしが来たのよ。で、本当に居るの?」

「ええ、それは確かですけど」

 デネボラは僕をチラっと見る。

「そう。じゃあ」

 レグルスは僕を見る。

「リウイ様。お忙しいのは重々承知しております。其処を曲げて、お頼みしたい事があります」

「頼み?」

「はい。我が部族の次期族長候補のウォルフという者の捕縛に手を貸して頂きたい」

 捕縛? 次期族長を。これは穏やかではないな。


「そのウォルフ? という人はどういう人なのかな?」

 僕よりも年上だと思うけど、違うとか?

「ウォルフはわたし達の従弟よ」

「いとこ? 確か、レグルス達のお父さんが族長だったから、族長候補と考えた方が良いのかな?」

「その通りです。更に言えば、族長候補の中でも特に有力候補です」

「へぇ、そうなんだ」

 という事は、族長候補の中でも特に有力という事か。

 其処で気になるのは。

「どうして、そんな人がこの都市に居るのかな?」

「あの子。何というか自由奔放な所があるから、それで村での暮らしに飽きたんでしょうね」

「成程ね」

 ようは、外の世界に憧れて飛び出したという所か。

「それがこの都市に居るとわね~」

 肩を竦めるレグルス。

「とりあえず、そのウォルフという人を見つけたら良いんだね」

「そうなのよ。お願いできる?」

「まぁ、要請ぐらいは答えるよ」

「助かるわ~。御礼は、今夜、床で返して、あ・げ・る♥」

 そう言って、ウインクするレグルス。

 完全に揶揄われているな。これは。

「姉様っ、そ、そのようなハレンチな事で御礼しないでくださいっ」

「あら、いいじゃない。男女が仲良くするには、これが一番良い方法じゃない」

「そんな事をしなくても、仲良くなる方法はありますっ‼」

「ふ~ん。じゃあ、どんな方法があるの?」

「そ、それは……酒盛りしたりとか、お話ししたりとか」

「それだったら、床で話した方が簡単じゃない。お互い隠す物はないのだから」

 デネボラが何か言うと、レグルスが論破する。

 そんなやり取りする程仲が良いのは分かったから本題に入ってくれないかな?

「じゃあ、これあげるわ」

 レグルスがそう言って、一枚の紙を出した。

 その紙にはウォルフの似顔絵が書かれていた。

「これは?」

「捕まえるには、似顔絵が一番楽でしょう」

「そうだね。じゃあ、早速、これを写して至る所に貼ろう。でも、それだけじゃあ、足りないな」

「「足りない?」」

「ああ、似顔絵を見ても、通報又は捕まえてくれるとは思えないからね。……ここは、懸賞金を掛けるしかないな」

「懸賞金ですか。確かに、それが手っ取り早いですね」

「確かに、で、どれくらい掛けるの?」

「・・・・・・金貨三十枚ってところかな」

「「そんなに掛けるの⁉」」

「むしろ、それぐらい掛けないと、多分捕まらないよ」

「成程ね~。ねぇ、それって、わたしが捕まえてもくれるの?」

「勿論」

「よ~し、じゃあ、やる気が出て来た。じゃあ、わたしは捜しに行くからっ」

 そう言うなり、部屋を出て行くレグルス。

「……嵐の様なお姉さんだったね」

「見苦しい所を見せて申し訳ありません」

 デネボラは深く頭を下げた。

 まぁ、ああいう人は何処にでも居るからな。

 後はこの似顔絵を写させるか。










 


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