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第62話 何かテンプレっぽいな

 その夜。

 

 諸々細かい仕事を終えた僕は、館を出る準備をした。

 出ると言っても、向かうのは『プゼルセイレーン』がたまり場になっている店ではない。

 向かうのは南地区だ。

 午前中行った時は、ヨシュアさん達が一緒だったのと、あのド派手な格好をした何とかさんが出て来たので見回る事が出来なかった。

 なので、改めて夜に視察に行く事にした。

 一応、姉さん達には一言言っておいた。

 それを聞いて、ヘル姉さんは渋ったが、フェル姉さんやミリア姉ちゃんが取りなしてくれたお蔭で、何とか行く許可をくれた。

 護衛を付けようとしたけど、僕が自前の護衛が居ると言って、何とか了承させた。

 準備を済ませて、エントランスホールに向かう。

 まぁ、準備と言っても護身用の剣を腰に差すだけなんだけどね。はっはは。

 私室を出て、エントランスホールに行くと、既に護衛としてルーティ達が待っていた。

 アルトリアは体が大きいし目立つので、今回はお留守番してもらう事にして貰った。

 ちなみにティナには『プゼルセイレーン』の方に行ってもらう事にした。

 あっちの情報収集をして貰う為に。

 僕がルーティ達の下に行くと、ビシッと背筋を伸ばすルーティ達。

「準備整っております。何時でも出れます」

「分かった」

 じゃあ、行こうと言おうとしたら。

 ガシッと肩を掴まれた。

 誰だと思い、振り返ると。其処に居たのはヘル姉さんだった。

 ヘル姉さんの後ろには、フェル姉さんが居る。

 そのフェル姉さんは苦笑していた。

「え、えっと、なにかな? ヘル姉さん」

「・・・・・・ちゃんと準備はした?」

「うん」

「怪我とかしないでね」

「はい」

「後、無事に戻って来てね」

 これがおかん属性? かと普通に思ってしまった。

 ヘル姉さんは、僕の返事をジッと待っている。

「うん。ちゃんと無事に怪我一つしないで帰って来るね」

「・・・・・・うん」

 ヘル姉さんはそう言って僕の頭を撫でる。

 この人、本当に頭を撫でるのが好きだなと思いつつ、好きにさせる。

「リウイ様。そろそろ」

 ルーティが申し訳なさそうな顔をしながら、話しかける。

 それを聞いて、ヘル姉さんは名残惜しそうにしながら手を退ける。

「じゃあ、行ってくるね」

「・・・・・・うん」

 ヘル姉さんの返事を聞いて、僕達は館を出た。


 館を出た僕達は南地区に向かう。

 少し歩くと、中央地区と南地区との境目に着いた。

 午前中は少し進んだだけだったので、中心部に入るのは初めてだ。

 僕達は境目を通り越して、南地区に入る。

 そして、南地区の進んでいくと、歩いている人達が居る。

 千鳥足なので、そうとう飲んでいるようだ。

 その人達にぶつからない様に歩きながら、僕は南地区がどういう地区か思い出す。

「確か・・・南地区は主に歓楽街が多かったな」

 なので、その方面に力を入れている筈だ。

 まぁ、僕には今の所用はないので来た事はない。

 しかし、書類の報告を受けているよりも、こうして直に見ると、どんな所かよく分かるな。

 娼館の窓から、女性が顔を出して僕に投げキスしてくる。

 誘っているだろうなと思いつつ、僕は歩く。

 街角にも街娼が立っている。

 そういう人達も、僕に流し目で見て来る。中にはウインクしてくる人も居る。

 誘われるのは嬉しいけど、今は仕事中だからな。

 それに誘われて、そのまんまホイホイ付いて行ったら、何もかもむしり取られそうだからな。

 そう思うと、ここは何も反応をしない方が良いのかな? 

 どうも、こういう色町みたいな所に慣れている人が居ないからあしらい方が分からない。

 誰かに教えて貰おうかな。

 そんな事を考えていた所為か、前から来る人に気付かなかった。

「おっと、失礼」

 ぶつかったので謝る。

「いててって、う、うでがっ」

「あ、兄貴‼」

「だいじょうぶですかい?」

 何か、僕にぶつかった人が腕を抑えて痛がりだした。

 取り巻きの人達が、その兄貴と呼ばれた人に元にかけよる。

 う~ん。このやりとりテレビや漫画で見たような。


「おうおう、坊主。何をしてくれるんだ? ああ?」

「兄貴の腕が折れちまったじゃあねえか。どうしてくれるんだ? ええ?」

 兄貴と言われている人達の取り巻き達が、僕達をねめつける。

 これは所謂、メンチ切る? と言う奴なのか?

 不良の知り合いが居ないので分からないけど。

「おいっ、坊主。何か言ったらどうなんだ?」

「は、はぁ・・・」

 軽くぶつかっただけで折れると言うのは、かなり無理があるのではと思うな。

「どうやら、ビビっているようだな」

 ちょっと考えていると、何か勝手にビビっていると思われだした。

 どうしよう追い払うか? 横に居るルーティ達を見ると。

 追い払いますか? と目で言っている。

 そうだな。追い払うか。

 僕が頷くと、ルーティ達は心得たとばかりに頷いた。

「おい、何か言ったら、・・・ぐへっ」

「へぷっ⁉」

「ぎゃひっ」

 男が言葉を続けようとしたら、ルーティ達が男達を地面に叩き付けた。

「て、てめえら、なにものだ?」

「騒ぐな」

 ルーティの部下がそう言って、男を黙らせた。

「リウイ様。この者達はどうしますか?」

 ルーティはそう訊いてくるけど、何か目が今すぐ痛い目見せてやると言っている。

「そうだな・・・・・・・」

 僕は、男達を見る。

 三人は怯えた顔で僕を見る。

 どうやら、自分達が因縁をつけた相手がかなりまずい男だとようやく分かった様だ。

 というよりも、ルーティ達が周りに居るのに、どうしてそんな事が出来るのか、不思議だ。

「…とりあえず、何処かで話が出来る所に案内してくれるかな?」

 此処だと目立つからな。

 現に通行人達が足を止めて、僕達を見ている。

「ここら辺は良く分からないから、案内してくれるかな?」

「あ、ああ、分かった」

 男達のリーダー格がそう言ったので、僕は手で退けるように指示した。部下達は男達を離した。

 男達は立ち上がると、逃げ出さず身体に着いた埃などを叩き落とした。

「へぇ、逃げないんだ」

「逃げても追いつかれそう気がして、逃げる気も起きねよ。ほら、案内するから付いて来てくれ」

 リーダー格の男がそう言って手で付いて来るように合図を出したので、僕達はその後に付いて行く。

 万が一、僕達を嵌める事も考えて、何人かは先回りして貰おうかな。

 目でルーティ達に伝えると、承知したとばかりに頷くルーティ。

 手で合図すると、二人程コッソリ姿を消した。

 これで大丈夫だろう。

 僕は安心して、男達の後に付いて行った。


 男達の案内で連れて行かれた先は、何処かの店のようだ。

 何かいかがわしい外観だけど、もしかして、酒場?

「此処だったら、個室も有るから密談には持って来いの店だ」

 リーダー格の人がそう言って、店の中に入っていった。

 僕達もその後に続く。

 店に入ると、其処には。

「あっはは、此処は良い店だな。今日はトコトン楽しむぜっ」

「流石、サンザの旦那♥」

「肴も酒もタップリ用意してます。飽きるまでお楽しみを♥」

 何か、派手な衣装に身を包んだ男性が、両脇に女性を侍らせて豪快に笑っている所に出くわしたぞ。

 この人は、あの時のド派手な格好をした人だ。







 




















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