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第56話  ユエに姉達の顔を見せることに

 仕方がなく、僕は姉さん達を連れて、ユエの元に行く。

 護衛代わりに連れて行くと思えばいいか。 

 そう思う事にしよう。

 館を出ると、僕達はユエの店に行く事にした。

 

 館を出て東地区に向かう。

 向かうのは良いのだけど、その途中なのだが歩いている人達が僕達を見る。

 まぁ、その理由は分かる。ちらりと横を見る。

 そこには姉さん達がいる。

 みんな、見目麗しい女性達なので、目を奪われているのだろう。

 正直に行って、綺麗だと思う。外面は。

 優しそうな見た目で、実は悪戯好き。

 目付きは怖いけど、実は優しいけど、どじっ子。

 可愛い見た目でトラブルを招くのが好き。

 という、色々と面倒な所があるのでどうとは思わない。でも、知らない人からしたら。

「……綺麗だな」

「ああ、本当にな」 

「あの子も可愛いな」

「本当、惚れ惚れするな」

 姉さん達を見ている人達は口々に言う。

 内面を知らないからそんな事を言えるんだよな~。

「ねぇ、一緒にいるあの子も可愛いくない」

「あの男の子の事?」

 うん? 僕の事か? 

「そうよ。可愛い見た目でしょう」

「うんうん、分かる~」

「近くにいる女の人達に見劣りしないわ~」

「可愛いわね」

 何か、僕も言われているな。

「ねぇ、ヘル姉さん」

「何だ?」

「僕って可愛いのかな?」

「うむ」

 即答で言うとは。

「むう、可愛いか」 

 正直に言って、格好いいとか素敵と言われる方が嬉しい。

 でも、こんな見た目だからな。

 内心で溜め息を吐いた。

「大丈夫。大きくなったら、格好良くなる」

 ヘル姉さんはそう言って、頭を撫でる。

 頭撫でるの好きだな。この人。 

「あ~、ヘル姉だけズルいっ」

 僕の頭を撫でるのを見て、ミリア姉ちゃんがぷんすかしながら、僕を抱き締めてくる。

 それなりに大きな胸が僕の頬に当たる。

「あらあら」

 フェル姉さんは僕達を微笑ましく見ている。

「ちょっと、ミリア姉ちゃんっ」  

「良いじゃん。別に~」

 ミリア姉ちゃんは抱き締めながら、頬擦りしてきた。

 そんな事をするから、周り人達主に男性から羨望と嫉妬の混じりの視線をぶつけてくる。

「ちょっと、フェル姉さん、ヘル姉さんも助けてよ」

「・・・・・・」

 フェル姉さま?

 何ですか。その獲物を見つけた獣のような笑みは? これ以上、何をするおつもりで?

「楽しそうだから、わたしもま~ぜて~」 

 と言って、僕を抱きついた。

 くっ。ミリア姉ちゃんの胸よりも遥かにあるボリュームが僕の顔を襲う!

 そこはまるで、別天地のようだ。なんて、思えたのは一瞬だった。

「ふががが~~~~~~」

 その大きい胸により、呼吸困難になった。

「う~ん。ウ~ちゃんは相変わらず良い抱き心地ね~」

 そう言って、僕の頭を抱き締める腕に力を込める。

「ぐむむむむ~~~~~」

 ジタバタ暴れるけど、フェル姉さんからしたら何とも思わないようだ。

 ヘル姉さん。助けて!

 という思いを込めて、ヘル姉さんを見ると。

「・・・・・・仲良いな」

 そんなじゃあないから、助けてっ⁉


 ようやく姉さん達の拘束から逃れた僕は、ユエの店についた。

 店の中に入ると、丁度ユエが店員に業務について話している所だった。

「だから、この商品の仕入れはもっと増やすように、買い付けの者達に指示しろ」

「畏まりました。会長」

「後は、これとこれだが、……うん?」

 ユエがようやく僕達に気付いた。

「やぁ、ディアーネ」

 手を挙げて挨拶しようとしたら、僕の横を風が通り抜けた。

 ああ、やっぱりこうなるか。

「むむ。これは、かなり大きい」

「えっ? んんっ⁉」

 ミリア姉ちゃんがユエの胸を鷲掴みした。

「この大きさ、質感、どれもイザドラ姉並だけど、それでいて柔らかい。まるで、パンをこねているかのような気分ね」

 ユエの胸を揉みしだきながら、胸の批評をするミリア姉ちゃん。

 それを見て、僕達は。

「はぁ、あの子は」

「……困った者だ」

「あの、人の胸を揉むのはいい加減止めて欲しいな~」

 僕達は揃って溜め息を吐いた。

「ち、ちょ、これは、お、おきゃくさま?」

「むううう、今まで揉んだ胸の中でトップスリーに入る胸だね。これは」

「こ、こまります。おきゃくさま、こんなところで……」

 喘ぎながらユエは僕を見る。

(これはどういう事だ?)

(後で説明するから、とりあえず今は耐えて)

 アイコンタクトで言葉を交わす僕達。

(後でちゃんと説明してもらうからなっ)

 ユエは目でそう言うので、僕は頷いた。

 とりあえず、ミリア姉ちゃんが胸を揉むのを止めるまで、僕達は待つ事にした。


「・・・お騒がせしました」

 ミリア姉ちゃんから解放されたユエに、僕は深々と頭を下げる。

「全くだ」

 ユエはぷんすか怒っている。

 ユエの胸を揉みだして、数十分後。

 ミリア姉ちゃんは飽きたのか、ようやく胸を揉むのを止めた。

 その隙に僕はミリア姉ちゃんをフェル姉さん達に任せて、僕はユエを連れて二階へとあがる。

 部屋に着くと、ユエが椅子に座りたいと言うので座らせて、今に至る。

「ところで、わたしの胸を揉んだあの女を、ノブの事を『リウ』とか呼んでいたが? 幼馴染か?」

「今世の姉です」

「姉君か。そう言えば五人くらい居るとか言っていたな」

「この前会ったのは、長女のロゼティータ姉様。今回、一緒に来たのは三女のフェル姉さん。四女のヘルミーネ姉さん。で、ユエの胸を揉んだのは五女のミリアリア姉ちゃんなんだ」

「ふむふむ。成程、次女は来ていないのか?」

「次女のイザドラ姉さんは、この国の宰相をしているから忙しいから、滅多な事が起こらない限りは、此処には来ないと思うな」

 そう思いつつ、イザドラ姉さんなら何かしら理由を作って来そうな気がする。

「ふむ。あの人達が将来の義理の姉になるのか」

「いやいや、その考えは早すぎない」

 正式に公表された訳ではないのだから。

「まぁ、そう言うな。そういう心構えでいるというだけだ」

「・・・・・・ユエらしいね」

「そうだろう。で、今日は何の用で来た?」

「ああ、それね。ユエが許可して欲しいって言ってた北地区と西地区だけど」

「その話か。で、そちら的にはどうなのだ?」

「別に構わないけど、僕の館にスパイでも潜ませているの?」

「ふっふふ、企業秘密だ」

「あっ、そう」

 少し気になった程度の事なので、深く訊ねるつもりはない。

「それともう一つ、今夜にでも『プゼルセイレーン』のたまり場になっている店に『ビアンコ・ピピストレロ』から使者を出してくれるかな」

「お安い御用だ。で、そちらの頼みを聞いたのだから、こちらの頼みも聞いてくれるか?」

「何かな? 中央地区と南地区の二つも自分の組織の縄張りにしたいの?」

「いや、それは我が商会がノブの御用商人をする事が出来たのだから、別にいらん。だが、最近、南地区がやけにうるさくてな。済まんが、その原因を探ってくれないか」

「南地区か」

 目をつぶり少し考える。

 南地区には『クリムゾン・ティガー』と『ランページクラブ』の二つのグループが抗争中って、前にガイウスが言っていたな。

 今でもそうなのだろうか? うるさくなったという事は、どちらかのチームが勝って南地区を自分達のモノにしたから、その勢いに乗って、他の地区も自分達の縄張りにする為に動き出したとも考えられるな。

 何にしても、今は情報が足りなすぎるな。判断が出来ないな。

「・・・手の者を送って調べさせるね」

「頼む。それと」

 ユエが真面目な顔をする。

「先程は、ミリア殿の襲撃で挨拶が遅れたからな、改めてお前の姉達にわたしを紹介してくれ」

 ・・・・・・真面目な顔で言う事は、それかい‼


 結局、ユエがどうしてもと頼むので、僕は姉さんたちをユエに紹介する事となった

「お初にお目に掛かります。わたしはこの『鳳凰商会』の会長ディアーネと申します」

 ユエは営業用の笑顔で挨拶する。

 その笑顔を見て、姉さん達は。

「「「……………」」」

 挨拶を返さず、ただ、ユエをジッと見ている。

 そんなに見つめられても、ユエは笑顔を浮かべるだけだった。

 僕は姉さん達の隣に座りながら、これからどうなるか見守った。

 最初に口を開いたのは、フェル姉さんだった。

「・・・貴女がディアーネさんね。ええ、話しはロゼ姉さんから聞いているわ」

「そうですか。ありがとうございます」

「う~ん。・・・・・・まぁ、わたしが決める事じゃないから良いか」

「? それはどういう意味でしょうか?」

「そうね。簡単に言えば、怖~い龍を説得すれば、婚約者に成れるという事よ」

「龍ですか?」

 ユエは首を傾げる。

 それはどういう意味なのか分からないからだろう。

「まぁ、いずれ分かるわ」

 フェル姉さんは、そう言って、出された茶を飲む。

「あたしは別に良いと思うな。胸大きいし、綺麗だし」

 胸が大きいから認めるのはちょっと。

「…………」

 ヘル姉さんだけ、目を細めて睨むようにユエを見ている。

 初対面だし無言だから、怖いと思うな。

 あっ、ユエがこっち見て来た。

(このヘルミーネという方は、何でわたしを睨んでいるんだ?)

(生まれつき目つきが悪い上に、人見知りだから、睨んでいる様に見えるだけだから)

 僕達はアイコンタクトで会話した。

 それで、成程とばかり頷いた。

「是非、我が商会をお引き立て下さると嬉しく思います」

「ええ、そうさせてもらうわ」

 フェル姉さんが皆を代表して答えた。

 その後は、他愛のない世間話をした。

 話すのは良いのだけど、姉さん方、僕の小さい頃の黒歴史をユエに言わないで下さい。

 それなりに長く話していたようで、昼頃についたが、店を後にする時には日が暮れていた。

 僕達はユエに「お近づきの印」と言って土産を貰って、館に帰った。




 

    






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