第54話 報告して
モルべさんが僕を弄るのを止めるのを待ってから、僕は報告をした。
「…以上が報告事項です」
「ご苦労。そうか『ビアンコ・ピピストレロ』はこちらと同盟を組んでくれそうか」
ガイウスは顎の撫でて、何か思案している。
「お前も聞いているかも知れないが『デッドリースネイク』が領主の配下になった」
「はい。聞いています」
ぶっちゃけ、試合をして勝ったら、何故か向こうから配下になりたいと言ってきたんだよね。
そこら辺の事は、全部リッシュモンドに任せているので大丈夫だろう。
「だから、この都市で残っているチームは全部で六つになった。だが、その中で他のチームと同盟を結んで居ないのはうちと『ビアンコ・ピピストレロ』だけだ」
「つまり、他のチームは同盟を結んだチームで、僕達のチームを潰しに来るかも知れないのですね」
「その通りだ。だから、出来るだけ早く同盟を結びたい」
「こればかりは向こうの判断次第です」
館に帰ったら、ユエに同盟する使者を送ってくれと一報いれておこう。
「そうか。じゃあ仕方がないな。じゃあ、次だ」
次か。これは報告しづらいな。
だって、碌にこの店に来てないから、誰が敵のチームが送り込んだスパイか分かっていない。
それを正直に伝えたら、怒られるだろうな。
「・・・お前、仮メンバーのカインとアルスを覚えているか?」
「ええ、まぁ」
仮メンバーとあまり話をしないので、顔だけしか覚えていない。
カインが魔人族で、アルスが鬼人族の男性という事ぐらいしか分からない。
「その二人なんだが、今日は来てなくてな」
「へぇ、そうなんですか」
あの二人って、何処のチームの担当だっけ?
「二人には『デッドリースネイク』との交渉に行ってもらってるんだが、その交渉も上手くいってない上に、あんな事になっただろう。その所為なのか、二人と連絡がつかん」
「そうですか」
編入された『デッドリースネイク』のメンバーに二人の名前があったかな。帰ったら調べよう。
「これで話は終わりだが、まだ話したい事はあるか?」
「いえ、特にないです」
「そうか。ご苦労だったな」
僕は席を立ち、部屋を出て行こうとしたら。
「ねぇ、ウィル」
「はい。何でしょうか。リーダー」
「あなたのお姉さんって、女性にはいつも、あんな事をしているの?」
モルべさんが顔を赤らめながらそう訊ねてきた。
余程、恥ずかしかったんだろうな。
「・・・・・・胸の大きい女性にはしています。本人はスキンシップを兼ねた挨拶と言っています」
「随分と、あれな挨拶ね」
「実は、ミリア姉ちゃん以外にも姉がいるのですが、全員、その被害にあっています」
「・・・大変ね」
「はい」
あのトラブルメーカーな所を直してくれれば、まだ良い姉なのだが。
僕は今度こそ部屋を出て行った。




