第50話 報告を受けて、現場に行くと。
報告を受けた僕は、後の事はソフィーに任せて、アルトリアの背に乗って、その現場に向かう事にした。
リッシュモンドはは「あらゆる事態に備えて、衛兵を率いて参ります」との事で、僕は先に行く。
「アルトリア。出来るだけ早く進んで」
「承知しましたっ」
僕の命令に従い、アルトリアは出来るだけ早く駆けだした。
それに並走して、ルーティ達も駆けている。
呼んだ覚えはないけど、まぁいいか。
そうして駆けだす事、数十分後。
僕達はその現場に来た。
で、その現場なのだけど。
店の前に倒れている男達。
怪我をしている男性の傍で女性達が手当てをしている。
フェル姉さん達に挟まれている上に、首に鞭が巻かれている男性がいる。
「こ、これは、いったい」
アルトリアは驚愕していたけど、僕は周りを見る。
ふむ。何処も損害はないようだな。家や建造物の損壊などはないようだ。
それが分かり、ほっとした。
「あっ、ウ~ちゃん~」
アルトリアに乗っている僕を見つけたのか、フェル姉さんは笑顔で手を振る。
その向日葵の様な笑顔を見て、溜め息を吐いた僕はアルトリアから降りて、姉さん達の所に行く。
「フェル姉さん。今度は何をしたの?」
「むっ、酷いわね。わたしがこんな騒動を起こした犯人と言いたげね?」
「違うの?」
正直、こういう面倒事を起こすのは、フェル姉さんだと思うのだけど。
優しい人なのだけど、ミリア姉ちゃんにも負けないくらいトラブルメーカーだからな。
「失礼ね。今回はわたしは起こしてないわよ。起こしたのは」
フェル姉さんはヘルミーネ姉さんがを指差す。
「ヘル姉さんが?」
まさかっと思いつつ、僕が見ると。
「……ごめんなさい」
何か、叱られた子供みたいな顔で謝るヘル姉さん。
う~ん。とりあえず、事情を聞こうか。
「それで、何でこんな事をしたの?」
「ああ、実はね。この男に聞いたんだけど、この店の土地の立地が良いから、自分達のチームが経営している店を建てようと、交渉していたのだけど決裂して、だったら、その土地を売る様に嫌がらせをしていたそうなの。で、その嫌がらせで経営が悪化。で、それでも、店を売らないから、第三者を介して、借金をさせたのよ」
「第三者を介してね。その第三者って」
「そうなの。自分達のチームメンバーなのよ」
ああ、それを聞いて、何でこんな状況になったか分かった。
「で、払え切れないほどの借金を負わせて、店を取り上げた。で、その店を壊そうとしたら、ヘル姉さん達がやってきて、ワンサイドゲームになったって所かな?」
「そうなの、正解よ。ウ~ちゃん」
花丸代わりに頭を撫でるフェル姉さん。
「借金ね、すいません。ちょっと良いですか」
僕はこの店の店主と思われる人に声を掛ける。
「は、はい。何でしょうか?」
「その借用書って、持っていますか?」
「え、ええ、こちらです」
店主の手から渡された紙を開いて、中身を見た。
ふむ、ふむふむ。これは。
「なに? 何か? あったの?」
フェル姉さんとヘル姉さんは後ろから、その紙を覗き込む。
ちょっ、胸を押し付けないでよ。二人共。
「うん。実はね」
「おいっ、これは何の騒ぎなのだ?」
何か、男性の声が聞こえて来たので、声がした方を向くと、
其処には、老年に差し掛かろうという中年の魔人族の男性が居た。




