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第24話 いざ、実戦へ

 西園寺君の部屋で一夜過ごした僕は、流石に朝食は食堂で取らないとまずいと思い、西園寺君にお礼を言って部屋を出た。

 一緒に行こうかと西園寺君に言われたが断った。

 これ以上、西園寺君を巻き込むのは少々気が引けたからだ。

 部屋を出て、一度自分の部屋に戻る。

 多分、マイちゃんが起こしにくるだろう。なので、部屋に居ないと不審に思われるだろう。

(昨日、部屋に居なかったのは、図書室で本を読んでいたら何時の間にか朝を迎えていたって言おう)

 かなり怪しいと思われるが、椎名さん以外は僕ならあり得ると思うだろう。

 残る問題は。

「椎名さんの事をどうしよう・・・・・・」

 正直、あんなに思い込みが激しい人とは思わなかったし、そうなった理由も西園寺君から聞いている。

 クレープを奢っただけで、あんなになるなんて誰も想像できないだろうなぁ。

(まぁちゃんと話し合えば、納得してくれると思うけど)

 自分の部屋に着き、ドアを開ける。

 部屋の中を覗いて見たが、誰も居ないので安心して中に入る。用心の為に鍵を掛ける。

「ふぅ、マイちゃんが来るまで少し仮眠するか」

 西園寺君の部屋で寝た時は、部屋にあったソファーで寝たので少々体の節々が痛い。

 西園寺君はベッドで寝たらどうだと勧められたが、僕が断った。

 匿ってくれるのに、ベッドまで借りるのはちょっと図々しいと思ったからだ。

 ソファーを借りてそこで横になって寝たが、どうも僕の体型には少々きつかった。

 マイちゃんが来るまで一眠りしようとしたら、ベッドに紙が置かれているのに気付いた。

「? なんだろう?」

 僕はその紙を取り見た。その紙には字が書かれていた。

『猪田君へ♥ 後ろを見て♥ 椎名雪奈』

 僕はその紙に書かれた通りに後ろを向いた。そこには。

「・・・・・・・・・・・・・」

 |笑顔を浮かべた椎名さん(・・・・・・)が居た。

「うわあああああああああああああっ⁉」

 さっきまで誰も居なかった所に突如、椎名さんが現れたので、僕は悲鳴を上げた。

 後ずさりしようとしたら、ベッドに足が縺れて仰向けに倒れてしまった。

 椎名さんは笑顔を浮かべながら近寄って来る。

 逃げないといけないと頭で分かっているのに、恐怖で足が竦み動けない。

 あまりに恐怖で、歯もガチガチ震えている。

 椎名さんは何も言わないので、余計に怖い。

 そして、椎名さんはベッドまで来た。

「・・・・・・・・・・・・・」

 何をされるか分からず震えていると、椎名さんは無言で僕に抱き付いた。

「えっ⁉」

 いきなり抱き付かれたので、変な声を出してしまった。

 抱き付かれた事で、女性の甘い匂いと共に豊満な胸の感触が当たる。

(おおおおおおおおおおおおっ! 昨日に続いて今日も女性に胸に触れるなんてっ!)

 内心で叫び声をあげる。

 その甘い匂いを嗅ぎながら、僕は訊ねた。

「し、椎名さん、そ、そのなんで抱き付くのかな?」

「・・・・・・・・・・・・・」

 僕が訊いても、椎名さんは何も言わない。

 というか、自分の胸を押し付けながら、自分の顔も押し付けてくる。

 まるで、犬がマーキングしているようだ。

「し、椎名さん」

「・・・・・・・昨日、ご飯は食べた?」

「えっ? うん、食べたよ」

「そう、・・・・・・・・・ねぇ、訊いてもいい?」

「なに?」

「わたしの事、嫌い?」

「い、いや、別にそんな事は」

「じゃあ」

 椎名さんは顎をあげて目を瞑る。

 これは、もしやいわゆるあれですか?

「え、ええええええええっ‼」

「・・・・・・・しないの?」

 椎名さんは目を開けて拗ねたような顔をする。

「いやいや、何でしないと駄目なの?」

「じゃあ、嫌いなんだ」

 椎名さんはそう言うと、体を起こして何処からか短剣を出して自分の首元に当てる。

 それを見て、僕は慌てて椎名さんが持っている剣を抑えた。

「ちょちょちょ、いきなり何をするの⁉」

「だって、わたしの事が嫌いなんでしょう? 猪田君に嫌われたら、わたしはもう生きていけない。だから死ぬの、邪魔しないで」

「いやいや、まだ嫌いとは言って無いから!」

「じゃあ、好き?」

「そ、それはちょっと・・・・・・・」

「じゃあ、やっぱり嫌いなんだ」

 椎名さんは剣を持っている手に力を入れようとしたが、僕が力で抑え込む。

「待って~、早まらないでっ!」

「離してよ。もう、猪田君に嫌われたら、わたしはっ」

 剣を持った椎名さんから剣を奪おうと縺れ合う僕達。

 激しく動いたので、そのまま僕達はベッドに倒れ込む。

 倒れた拍子で、剣は床に落ちた。

 だが、それに喜んでいる場合ではなかった。

 ベッドに倒れた拍子で、僕が椎名さんに伸し掛かるような体勢になってしまった。

 しかも、僕の唇が椎名さんの頬に当たった。

 僕は直ぐに離れた。

「い、いのたくんのくちびるが・・・・・・・きゅう~」

 椎名さんは僕の唇ガ当たった所を手で押さえながら、顔を赤くして気を失う。

「わぁ~、椎名さんっ」

 僕は肩を揺する。

 そうしていたら、ドアがガチャガチャと音を立てる。

「あっれ~、今日は空いてないな。どうしたんだろう? まぁいっか」

 この声は、マイちゃん⁉

 まずい、この状況ではっ‼

 何とかしないといけないと思っていたら。

 ガシャーンッ‼

 ドアが突然蹴破られた。

「お~い、ノッ君、朝だよ~。おはようだよ~」

 マイちゃん、それは反則でしょう!

 そう思っている間も、マイちゃんは部屋に入って行く。

「もう、昨日の夜は何をしていたか、ちゃんと話して・・・・・・ね」

 マイちゃんが部屋に入り見に入ったのは、気を失っている椎名さんに襲いかかる僕の図だ。

 それを見たマイちゃんは一瞬無表情になち、そして般若のような顔を浮かべた。

「こ、こ、この~、変態っ‼ あたしに手を出さないで、その女に手を出すかっっっ‼」

 鬼となったマイちゃんは、猛然と僕に襲いかかる。

「ぎゃあああああああああああっ‼」

 僕の悲鳴が王宮中に響きわたった。

 朝食を食べに食堂に行くと、クラスメート達が僕の顔を見て怪訝な顔をする。

 両頬に赤い紅葉が出来ているのだ。そんな顔をしても不思議じゃない。

 椎名さんは顔を赤くしながら僕の右腕の袖を掴み、マイちゃんはやっちゃったと言う顔をしながら僕の左を歩く。

 二人を見て、更に僕の顔を見て状況を察したのだろう。ユエは笑いながら「朝からお楽しみだったようだな」と言う始末。

 朝食を食べていると、メイドさんに僕達は訓練場に集まるように言われた。

(いよいよか、初めての実戦だけど頑張ろう!)

 僕は拳を握り、気持ちを新たにした。













 

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