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第28話 前世でしたかった事が出来た

 この人達の知っている事を全て話してもらった。

 まさか『ブラック・タイガー』のリーダーが僕が偶々選んだ所の酒場のマスターだったのは驚いたな。

「でも、よく、そんな人が酒場のマスターをしているな」

「……俺達のチームが吸収された時に、リーダーの娘さん達が『鳳凰商会』の支店長の魔法で人質になったんだよ。それで、リーダーは支店長の言う事を聞いているんだ」

 恐らくだが、あの虎耳のメイドなんだろうな。それともう一人居ると。

「人質を取られているんじゃあ、言う事を聞くしかないね」

「そうね」

 人質を取られているのか、助けたいのは山々だけど、下手に手を出せないからな。

「ねぇ、リウイ。リウイの権限で何とか出来ないの?」

 ティナがこそこそと話しかけて来る。

「無理だね」

 僕はキッパリと断言した。

「どうして?」

「そもそも、大前提の時点でもう終わった事なんだから、領主の僕が出ても意味がない」

 そうなのだ。その黒エビ、じゃなかった『ブラック・タイガー』と『ビアンコ・ピピストレロ』との抗争が終っているのだ。

 もう『ブラック・タイガー』が負けて、チームは吸収され、リーダーの娘さん達は『表向き』は損害の補填として商会で働かせているという形で終わっているのだ。

 そんな風に解決しているのに、僕が出てどう解決しろというの。

「でも、無理矢理働かせているかもしれないのに?」

「それをどうやって認めるんだい? 多分だけど、その娘さん達は魅了されているから、僕達がどう言っても店に不利益な事は言わないよ」

「むぅ~」

 ティナはむくれる。

「こればっかりはどうにも出来ないな」

 領主と言っても出来る事と出来ない事があるからな。

 とは言え、僕としてもどうにかしたいのは確かだ。

「どうにか、あの店が何か不正をしている証拠が欲しいな。そうしたら、摘発して商会の弱みを握る事が出来るんだけど」

「こいつらが、商会に命じられてリウイを襲った事にすればいいんじゃない?」

 ボノビビさんが男性たちを指差しながらそう言うけど、僕は首を横に振る。

「商会が命じたという証拠は?」

「それは、この人達の証言で」

「人の証言だけじゃあ、商会の摘発は無理だね」

 もっと、こう決定的な証拠が欲しいな。

 僕達は頭を悩ませる。

「……わたしに良い考えがあるわ」

「デネボラ?」

「それは、どんなの?」

「簡単よ。この人達にリウイが捕まれば良いのよ」

 デネボラの言葉を聞いて、空気が重くなった。

「はぁ? あんた、何を言っているの?」

「わたし達の前でそんな事を言うとは、良い度胸ね」

 ティナとアルネブがデネボラを睨む。

「でも、それが確実よ」

「言ったわね。その度胸に免じて、本気で相手をしてあげるわ」

 ティナの身体から電気が走る。

「……よし、それでいこう」

「「「……えっ⁉」」」


「……よし、それでいこう」ここ2行

「「「……えっ⁉」」」恐らく重複削除を提案します

 そんなに驚く事かな?

「別に、僕がわざと捕まって、そこで僕が領主だとばらして、そこでヴァンガドを領主を無理矢理、拉致したという罪で捕まえるだけなんだけど」

「危険でしょうっ」

「ティナ。危険だからと言って、行動しないで手をこまねいているよりも良いと思うよ」

「それはそうだけど……」

「大丈夫だよ。それに、異世界の諺でこんな言葉があるよ『虎穴に入らずんば虎子を得ず』ってね」

 ふっ。前世の記憶が此処で役立つとは。

「コケツ? お尻がどうかしたの?」

「コジヲエズ? 何か誇る事でも示すの?」

 くっ。この世界では。前世の諺が通じないのか。

 これだから異世界はっと愚痴っても仕方がないか。

「……ようは、危険を冒さないと何も手に入らないという事だよ」

 僕がそう言うと、皆、ああっと納得した顔をする。

「でも、大丈夫なの?」

「いきなり殺される事はないと思うから大丈夫だと思うよ」

「そうかも知れないけど……」

 ティナはまだ反対のようだな。

「大丈夫だよ。ちゃんとこうなっても大丈夫なようにしているから」

「むぅ、でも」

「アルティナ。それぐらいにしておきなさい」

 まだ、ティナは何か言いたそうであったが、アルネブが止めた。

「リウイ様がそう行動すると決めたのよ。だったら、わたし達はその助けをするべきよ」

「……分かったわよ」

 ようやく、ティナが折れてくれた。

「悪いね。アルネブ」

「いえ、これも(メイド)として当然の事です」

 うん? 今何か別な言葉を言わなかった?

 気のせいか。

「まぁ、いいや。ところで、聞いても良いですか?」

「何だ?」

「僕を捕まえたら、何処に連れて行くか聞いているんですか?」

「『鳳凰商会』がある店舗に連れて来いと言われている」

「よし。じゃあ、僕はこの人達と一緒に『鳳凰商会』の所に行くから、皆はその後に付いて行って店の前で待機。で、僕が合図を送るから、それと同時に突入で」

「合図って、どうやって合図を送るの?」

「その時になったら分かるから」

 皆、首を傾げているけど、まぁ、その時になったら直ぐに分かるさ。

 僕達はまだ気絶している人達が起きるのを待って、その人達に事情を話して協力してもらい、僕()を連れて行ってもらう。

 何で、達になったのかと言うと、僕の提案を聞いて、デネボラが『わたしが提案したのだから。わたしも一緒に付いて行くわ』と言い出した。

 流石に誰か一人ぐらいは必要かと思い、僕は快く承諾した。



 で、僕達は縄で縛られて『ブラック・タイガー』の人達と共に『鳳凰商会』の店に向かう。

 縄に縛られている様に見えて、実は少しきつめ結ばれているだけなので、特にきついとは思わない。

 僕達と一緒に来た人達が店の扉をノックした。

『どなたでしょうか? 今日の営業時間は終了しておりますが』

「……白い蝙蝠の使いとして、黒き虎が要望の物を持ってきた」

 この中でリーダー格の人が、扉越しにそう言う。

 今のは合言葉みたいなもののようだ。

 少しして、鍵を開ける音がして、扉が開いた。

 そして、男性が扉から少しだけ顔を出し、僕達を見る。

「それが要望のものか?」

「ああ、そうだ」

 リーダーさんがそう言うと、扉が完全に開いた。

「中に入って少し待て」

 男性がそう言うので、僕達は建物の中に入る。

 中に入ると、少し前に来た時は商品が所せましと並べられていたけど、今は何にもない空間だった。

 その空間の中に、ポツンと座らされる僕達。

 背中には『ブラック・タイガー』の人達が居る。

「おい、これで本当に大丈夫なんだろうな?」

 リーダーさんが小声で話しかける。

「ええ、大丈夫ですよ」

「なら、良いが。おっと、きなすったぞ」

 リーダーさんがそう言うと、階段から下りて来る人達が居る。

 結構多いな。

 そして、ヴァンガドと僕達が入った酒場のマスターが居る。その周りには、屈強な男女の人達が居る。

 そのキビキビとした動き、明らかにゴロツキのチームじゃない。訓練された動きだった。

 皆、服装は違うが胸に白い蝙蝠のエンブレムをしているので、恐らくだが『ビアンコ・ピピストレロ』の構成員だろう。

 その構成員達が僕達を取り囲むようにし、ヴァンガド達は僕達が良く見える所までくる。

「やぁ、リウイ君。さっきぶりだね」

「どうも。それで、ヴァンガドさん。これはどういう事でしょうか? 僕達は何か商売のタネになる物を探していると、この人達に捕まったのですが」

「いやぁ、君には聞きたい事があってね。それで御足労頂いたのさ」

「へぇ、そうですが。それで聞きたい事とは?」

 僕がそう言うと、ヴァンガドは傍にいる酒場のマスターを顎でしゃくる。

 すると、酒場のマスターは僕達の顔をよく見ようと近付いて来る。

 毛穴まで見れそうな位な距離にまで近付く酒場のマスター。そう言えば、名前を聞いていなかったな。

 そして、僕達をジロジロと見る。

「間違いない。俺の店で『鳳凰商会』の事を色々と聞いてきた奴だ」

「そうか。では、リウイ」

 ヴァンガドは僕を見る。

 何か目が光っている様な気がする。

「どうして、この商会の事を聞いて回ったのか、正直に答えてもらおうか」

 何か、目が光っているけど、もしかして魔眼か何か発動中ですか?


 すいません。全然、効いてないのだけど。


 え、えっと、この場合、どうしたら良いんだ?

「むっ? わたしの魔眼が効いていないようだな。何かしたら対処をしていたか」

 そうなの? 自分の事なのに全然知りません。

「まぁ、よい。お前達。話したくなるようにしろ」

「「「はっ」」」

 ヴァンガドがそう命じると、僕達を囲んでいる人達がそう言って、指を鳴らしだす。

 そろそろ。頃合いか。

 僕は強く身体を揺らすと、直ぐに縄が解かれた。

「むっ。縄抜けも出来るとは。貴様、何者だ?」

「さぁ、何者なんだろうね?」

 そう言いながら、僕はデネボラの縄を解く。

「ありがとう」

「どういたしまして」

 僕達が縄を解くと『ブラック・タイガー』の人達は離れて行く。

「ふん。何者なのか知らないが、、この状況でたった二人で何ができる?」

 ヴァンガドは笑みを浮かべる。

 僕達を囲んでいる人達も、何が起こっても対処できる様に構える。

 絶体絶命のピンチと言えるけど、僕は平然としていた。

「さて、素直に言うのであれば、痛い思いはしないと思うが如何かな?」

「そうだね。じゃあ、教えるよ」

 僕はフィンガースナップの構えを取る。

「? 何をするつもりだ?」

 僕はそれに答えず、深く息を吸う。

「こおおおいいいいいぃぃ。(ヴァイス)空中機動(ルフトヴァヘ)機甲(ゾル)兵団()

 指を鳴らして、そう叫んだ。昔は、こうやって指を鳴らして呼び出したかったな。

 少しして、建物の屋根を突き破って入って来る物体があった。

 そして、そのモノ達の赤い目がヴァンガド達を見る。

「マインヘルノ命令ニヨリ、白の空中機動機甲兵団。参上」

 そう言って、口?の所から白い煙を吹き出した。











 

リウイがヴァンガドの魔眼の効果受けなかった訳は、次の話しで説明します。

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