第20話 実戦訓練
訓練が始まってから数日が経つ。
僕達は最初に持った武器で素振りをしながら、文字の書き取りを行なう。
中には、違う武器で素振りをする人も居るが殆どは、最初の武器のままで素振りをする。
今もグレイブで素振りをしている。
「百、百一、百二、百三」
始めた頃は百回も素振りをするのも一苦労だったが、今では数百回は素振りを出来る程の体力が出来た。
「二百っ!」
そこまでグレイブを振って、手を止めた。
額にはびっしょりと汗を掻いたので拭う。
周りを見ると、まだ素振りをしている人が沢山居た。
(う~ん、僕って体力ないな~)
そう思っていると、西園寺君が近づいて来た。
「猪田、もう終わりか?」
「うん、どうも。僕は体力がないようだから、二百回素振りしたら、もうへとへとで」
「日頃の運動不足がたたったな」
苦笑する西園寺君。
事実だけに反論が出来ない。
「そうだね。もし帰る事が出来たら、少し体を動かすよ」
「まぁ、お前は動かない方がモテるだろうがな」
どうゆう意味と思っていると、西園寺君が顎で示した。
見ると、マイちゃん達が何か持って僕の所に来る。
「ノッ君、お疲れ様。はい、タオル」
「ノブ、喉が渇いただろう? ほら、程よく冷たい水を持ってきたぞ」
「猪田君、塩を振ったレモンを持ってきたよ。食べて」
三人が、同時に突きだしてきた。
(ど、どうしようっ⁉)
どれをとっても、後で何か言われそうで困る。
悩んでいたら、壇上に人が上がるのが見えた。
誰だろうと思い、顔を見ると数日前に王女様と一緒に来た側近の人だ。
名前は聞いていないので、どんな人か分からない。
見ていると、側近の人が壇上に上がると、深く息を吸う。
「御客人達よ、しばし手を止めて話を聞いていただきたい」
その声はそれほど大きい声を出した訳ではないのに、訓練場に良く響いた。
素振りをしていた人も手を止めた。
全員が動きを止め、壇上に上がった人を見る。
それを見てとった側近の人は口を開く。
「明日、実戦訓練の一貫として近くの森で魔物狩りを行なう。歩いて直ぐの所なので、それほど強い魔物は居ない筈だ。必要な物はこちらで用意しする。なお、午後の訓練はないので、今日はゆっくり休んで明日に供えるように。解散」
伝える事を伝えたら、側近の人はさっさと行ってしまった。
午後は訓練がないと知ったので、皆がぜんとやる気がでてきた。
「魔物狩りか、どんな魔物が出るか後で調べておかないと」
それほど強くないと言っても、僕達は訓練しかしていないし、何より、動物を殺した事もない。
なので、少しの油断で命の危機につながる筈だ。
確か、この王宮には図書室があった筈だから、昼ご飯を食べ終えたらそこに行って調べよう。
そう考えていると、肩をトントンと叩かれた。
振り返ると、三人が色々な物を突き出したまま僕を見ている。
(・・・・・・どうしよう、この状況・・・・・・)




