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閑話 二度目の十二氏族会議

一日遅れですが、祝一周年。

これからも、拙作を御笑読してください。

 前回、十二氏族の族長の会議が行われた場所にて、再び会議が行われていた。

「さて、あのリウイと言う者が『奥地』に入って、約一月が経ったが、どうなっているだろな?」

 会議が始まるとスグリーヴァが話し出した。

 その言葉のニュアンスはどちらかと言うと心配というよりも、どうなったのか気になっている好奇心で言っているようだ。

「流石に死んではいないと思うが、どうなっているかは状況ぐらいは知りたいな」

 アウズンブラは状況が分からないので、苦い顔をしていた。

「まぁ、死んだら何かしら分かるだろう」

 この前の会議に居なかった虎顔で虎髭を生やしている男が居た。

「チアンリアン。お前の部族の所に何人か『奥地』に送ったのではないのか?」

 マルコシアスがその虎顔の男に訊ねた。

 その者こそ『タシエル』族の族長のチアンリアンだ。

「吸血鬼の領地に入ったのは分かっているが、それ以外の足取りは掴めていないそうだ」

 チアンリアンは首を横に振りながら答える。

「ふむ。だとしたら、吸血鬼の所に行ったのは間違いないようじゃな」

 エアレーは顎を撫でながら言う。

 部族の村に襲撃の事後検証から、襲撃を掛けて来たのは吸血鬼だと思われた。

 なので、吸血鬼の所に行った事で襲撃は無くなると思われた。

「そう上手く行くかしらね」

 アルネブは髪を弄りながら言う。

 その声は何の期待をしていない思いを込めていた。

「しかし、何の情報も入っていないのは、流石に気になるな」

 アルタイルは何の情報も入って来ないので、かえって不気味な感じがしているので、そう話す。

 確かに、情報らしい情報がないので不気味と言えるだろう。

「そうですね。わたしもそう思います」

 ラタトスクは尻尾を不安そうに動かす。

 その尻尾の動きを目で追いながらワルタハンガは溜め息を吐く。

「困ったわね。失敗したのなら失敗したとか、成功したのなら成功したとか報告がないと、これからどう動けば良いか悩むわ」

「だが、所詮は我らの部族の者ではないのだから、被害と言える被害は無いと言えるだろう」

 ディオメデスは特に問題ない顔をしながら言う。

「いや、確かエアレーの孫娘がリウイについて行ったそうだが、そこの所は問題だろう」

「そうだな。エアレー。その娘は確か次期族長候補なのだろう?」

 エリュマントスが娘の事を尋ねた。

「うむ。そうじゃな。最も、当の本人はそんなものになるつもりはないようじゃがな」

 エアレーは困ったように息を吐く。

「まぁ、酷な話だが、孫娘とはいえあくまでも候補だからな、他にも候補は居るから死んでも問題ないと言えるな」

 チンロンが冷静に言う。

「・・・・・・確かにそうじゃ」

 エアレーはチンロンの言葉に内心では同意したくないようだが、理性ではチンロンが言っている通りなので頷いた。

「それで、提案なのだ。我らの部族から選抜した者達による部隊を送り込んで、リウイ殿の状況の確認をさせたいと思うのだが、皆はどう思う?」

 チアンリアンは部族の者にそう提案した。

 だが、皆難色を示した。

 皆、自分の部族の戦力を割くのは嫌なようだ。

 その後は、チアンリアンの提案で議論が交わされた。

 議論を交わされている中。

「し、失礼しますっ」

 会議場のそとを護衛している『タシエル』族の者が会議場にいきなり入って来た。

「何事だ⁉ 会議中だぞ」

「そこは分かっているのですが、緊急事態ですっ」

「何かあったのか?」

「はっ。この会議場に向かって、巨人族の兵団がこちらに向かって来ておりますっ」

「「「「何だと⁉」」」

 部族長達は驚愕した。

 まさか、巨人族が『奥地』から出てくるとは思わなかったようだ。

「しかも、見た事も無い籠を背負った者達を囲むようにこちらに来ております!」

「籠だと?」

「はい。人が入れるような箱を担いで」

「・・・・・何故、そんな者を担いでいるのだ?」

「分からん。だが、巨人族の者達は何が目的で来たのだ?」

「何の用で来たんだ?」

「迎撃の準備をするか?」

「いや、ここは様子見を」

「失礼します!」

「今度は何だ⁉」

 別の護衛が入って来たので、マルコシアスは声を荒げながら尋ねる。

「はっ、ダークエルフの者が使者として先触れとしてきましたっ」

「先触れだと?」

「まぁよい。その者を通すのじゃ」

「はっ」

 護衛の者が頷き、部屋を出た。

 そして、直ぐにダークエルフの者を連れて来た。

 ダークエルフはルーティであった。

「お連れしました」

「ご苦労。下がってよいぞ」

「はっ」

 護衛の者は一礼して、会議場から出て行く。

「それで、お主は何者だ?」

「お初にお目にかかります。わたしはダークエルフ族の族長のボルフォレが娘でルーティと申します。此度、この場に来たのは、我が主の手紙をお届けに参りました」

「主だと?」

「誰だ?」

「我が主の名はリウイです」

「「「っ⁉」」」

 会議場に居る族長たちは驚きのあまり言葉を失った。

「我が主の手紙です。どうぞ。御賢覧を」

 そう言ってルーティは紐で纏められた紙を、近くに居るアウズンブラに渡す。

 直ぐにアウズンブラは手紙を広げて中身を見る。

 ざっと見まわして、驚きの顔を浮かべるアウズンブラ。

「どうかしたのか? アウズンブラ」

「・・・・・・リウイ殿が『奥地』で暮らしている部族を全て従属させたそうだ」

 アウズンブラの言葉を聞いて、皆言葉を失った。

「ほ、本当なのか?」

「手紙にはそう書かれている上に、ダークエルフの者が居る以上、嘘ではないだろう」

 皆、何も言えなかった。

「もう少ししたら、参りますので出迎えをお願いします」

「し、承知した」

「では、わたしはこれで」

 ルーティは一礼して、その場を後にした。

「「「………………」」」

 族長達は何とも言えない顔で黙っていた。

 皆ここまで早く『奥地』にいる部族を全て従属させるとは思わなかったようだ。

「と、兎も角、出迎えせねばならないな」

「で、ですね」

 マルコシアスの言葉にラタトスクは答えた。

 皆、急いで準備を整えている中、アルネブは一人青い顔をしていた。

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