第88話 巨人族の住処に着いたけど、それは無しでしょう
昆虫人族の巣で、適当に時間を潰していると、スイレンさんがやってきた。
「準備が出来たから、広場に来てくれる」
そう言われて、僕達は広場に向かう。
向かった先の広場には、各部族から選ばれた者達が居た。
皆、それぞれ各部族の特徴を持っていた。
よく見たら、ルーティさん達を止めようとした護衛の人達も居るな。
その人達は、僕を見ると何とも言えない顔をしだした。
鏡を見ないと分からないが、何となく、僕も護衛の人達と同じ顔をしているだろう。
「あの、ルーティさん達は如何しました?」
「あの三人は少しの間、この村で謹慎してもらう事してもらったわ」
謹慎か。まぁ、あれだけの騒ぎを起こしらのだから、仕方が無いか。
むしろ、謹慎で済むだけ良い方だな。
「ご迷惑をおかけして申し訳ありません」
「気にしなくていいわ。まぁ、代わりと言っては何だけど、あの子達も付いて行くそうよ」
あの子? 誰だろう。
そう思っていると、スイレンさんは指差した。
その指差した所を見ると、スピービーさんとアンビアさんが居た。
「あのお二人も付いて行くのですか?」
「ええ、そうよ」
スピービーさんは分かるけど、アンビアさんは何でか分からないな。
そう思っていると、スイレンさんが耳元で、他の人に聞こえない様に手で遮りながら話す。
「アペベーネ族の族長のビクインとアンビアは親友なのよ。だから、心配で付いて行く事にしたのでしょうよ」
はぁ、親友なんですか。
正直に言って、アンビアさんって、キツイ性格っぽいのに友達が居るんだ。
「温厚だけど面倒見が良いビクインが、我が強いアンビアの緩衝材をしていたという感じだったのよね。あの二人の関係って」
成程。面倒見が良いんだな。そのビクインさんという人は。
「さてと、はい。注目っ‼」
スイレンさんが手を叩き、広場にいる人達の意識をこちらに向けさせた。
「これから、巨人族の住処である『アウルゲルミル』に向かうわ。皆、準備は良いわね?」
スイレンさんの言葉に、皆頷いた。
「今回の任務の指揮は、ここに居るリウイ殿が指揮する事となったわ。異論がある者は言いなさいっ」
何故だろう。ここは僕が仕切る所なのに、どうしてスイレンさんが仕切るのだろう。
まぁ、僕が言うよりも、ここはスイレンさんにやらせた方がいいか。
僕は黙って見ていると、誰も異論を言わなかった。
てっきり、スピービーさん辺りが何か言うのではと思っていたが。
「姉貴。アルべ、ルピド、ニーグ。待っていろよ。叔父さんが助けてやるからなっ」
スピービーさんは意気込んでいる最中であった。
アンビアさんは羽根扇子で優雅に煽ごうとしているのだろうが、パタパタと早く動かしているので、気が急いているのだろう。
早く友達を助けたいんだなと思った。
「じゃあ、出発するわよっ」
「「「おおおおおおおっ‼」」」
スイレンさんが鬨をあげると、他の人達もそれに続いて、鬨をあげた。
昆虫人族の巣を出た僕達は、巨人族の住処に向かう。
場所自体は既に分かっているので、真っ直ぐに行ける。
途中、魔獣が襲ってきたが、護衛の人達と力を合わせて撃退した。
そんな事があったが、何とか巨人族の住処の前まで着いた。
さて、どうしようかな。
と考えていると。
「おらあああああああっ、四人共、待っていろよっっっ⁉」
スピービーさんが槍を掲げて、住処の中に突撃しだした。
ちょっ、ここに来て、それは止めてえええっ⁉
「っち、あの突撃馬鹿が、逸りおって。仕方がない。妾達も行くぞっ」
「「「おおおおおおおっっ‼」」」
ああ、アンビアさんと護衛の半分も突撃しだした⁉
もっと、綿密に計画を立てて行こうよ!
「あの、リウイ殿。我らはどうしましょう?」
残った護衛の人達はいきなりの展開についていけず、戸惑っている。
「あ~、とりあえず、少しここで待機して様子を見よう」
様子を伺い、それでどうするか考えよう。




