第69話 さて、次の部族の所に行こうか
数日後。
人獅子族の従属を完了した僕達は、次の部族の所に行く準備を終えて、村の入り口の前に立っていた。
「本当にデネボラを連れて行かなくても良いのか?」
リオンさんはそう聞いて来る。
正直、連れて行けば文句なく人獅子族が従属していると分かるのだが。
デネボラさんが付いて行くのが、嫌そうだったので、連れて行くの止めたのもあるが、もう一つある。
「「………………」」
アマルティアとカーミラさんがジッと僕を見ているのだ。
その目はまるで、連れて行かないわよねと言っているようだ。
もし、連れて行けば、どんな目に遭うか分からないので、連れて行くの止めた。
それを聞いて、デネボラさんとネメアーさんは喜んでいた。
その代わり、シェルタンさんが手を挙げたが、リオンさんが却下した。
このシェルタンさんは、見た目が僕とそれほど年齢がそれほど変わらないようなので、却下したのだろうと思う。多分。
「まぁ、仕方がない。その内、娘の誰かをお前の領地に送るから、その時は可愛がってくれ」
「謹んでお断りしますっ」
二人の視線の圧力が増した気がしたので、お断りした。
「まぁ、そういうな。誰を送るかは、決めておくから楽しみにしておけよ」
「は、ははは」
苦笑いで誤魔化そう。
そして、挨拶をそこそこに僕達は人獅子族の村を後にした。
「ねぇ、リウイ。聞いてもいいかしら?」
「何でしょうか? カーミラさん」
「貴方、あの人獅子族の娘達の耳をジッと見ていたけど、触りたかったの?」
ドキンっという擬音が出る位驚いた。
バレない様に、さりげなく見ていたのに、どうしてバレたんだろう。
「な、なな、なんのことだが、ぼくにはさっぱり」
「ふ~ん。そう」
カーミラさんはそう言いながらも、信じていない顔をしていた。
「一応言っておくけど、向こうも見ているの気付いていたわよ」
「えっ⁈」
マジで⁉
「それと、人獅子族の女性の耳を触るというのは、家族か夫以外には触らせては駄目という掟があるんです。もし、男性に触られたら、その男を殺すか夫にするかのどちらかだそうです」
ガーン。人獅子族の耳にはそんな掟があったとは。
これじゃあ、気軽に触れないじゃないか。
ショックだ。生まれ変わっても、獣人にモフモフが出来ないとは。
「それで、次は何処の部族に行くのですか・」
「次は、決めてないな」
「このまま進めば、ダークエルフ族の里か、昆虫人の巣か、天人族の城のどちらかに行ける道に出ますよ」
「そうだな」
気を取り直して、少し考えるとしようか。
ダークエルフ、昆虫人、天人族。う~ん、何処にしようかな。
そう考えていると、何処からか金属がぶつかる音が聞こえてきた。
何だ。いったい?
「これは、戦闘しているようですね」
「何処の種族だろう」
「分かりません。どうしますか?」
「どうなっているか、見るだけ見ておこう」
僕達は、その戦闘している所に向かった。
少し歩くと、剣戟音と爆発する音が聞こえてきた。
誰が戦っているのだろう。
そう思い見て見ると、ダークエルフの部族の人達が誰かと戦っている。
相手は誰だと思い、ダークエルフ達の視線の先を辿ると、黒い翼を生やした人達が戦っていた。
「あれは?」
「どうやら、天人族のようですね」
「天人族? でも、天人族って白い翼を生やしている種族では?」
前世でも白い翼を生やした天人族しか見た事が無い。
「この樹海の天人族は、堕天使の末裔だと言っているそうで、だから全員黒い翼を生やしています」
堕天使の末裔ね。
これは、この樹海にしかいない種族なのかなと思いつつ、僕は戦闘を見る。