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第15話 この国の内情を知る

 貴族の上下関係が分かったので、僕はこの国についての事を聞く。

「国の内情について、お話できることで良ければ話していただけますか?」

「分かりました。わたしの知る限りの事をお話いたします」

 侯爵はそう言って、自分の知っている事を全て話してくれた。

 まつりごとは王様ではなく、王妃様と宰相達が属する『王統派』で行っていたが、ここ最近、王妃様が病に臥せってしまい、政治がうまくいっていない。

 その所為で、高位貴族からなる一派『貴族派』に最近押されているそうだ。

 僕達を呼ぶように王様に圧力をかけたのも貴族派の連中だそうだ。ちなみに、侯爵は王統派だそうだ。

 政治の方では貴族派が台頭しているが、軍部は王統派が多い。

 元々王様はこの国の騎士だったそうだ。なので、軍には強い影響力を持っている。

 会議に出ていた第一王女様もその影響で、軍部で顔は広い。

「貴族派に王統派か・・・・・・この国はどうやら、文官と武官で溝がありそうですね」

「正しくその通りです。困ったものです。今は人類の存亡が掛かっているというのに」

「貴族派と王統派以外にも派閥はありますか?」

「中立派と神殿派があります」

「中立派は分かりますけど、神殿派って何ですか?」

「簡単に申せば、宗教のつながりで出来た派閥です」

「宗教ですか。この国にはどれくらいの宗派があるのですか?」

「精霊、六大神、豊穣神、戦神、鍛冶、太陽、月、海、変わった所で樹木を信仰するのもあります」

「精霊と他の神は分かりますけど、六大神とは、火、水、風、土、光、闇の六つですか」

「その通りです。良く分かりましたね」

「まぁ、こっちの世界でも、似たような信仰がありましたから」

 僕達が居た日本でも、山岳信仰やら八百万の神信仰とかあったからな。

 それにファンタジーアニメや小説だったら、六属性は基本中の基本だ。

「樹木を信仰するのは、森司祭ドルイドとかエルフですか?」

「そうです。あと、狩人でも信仰している者が居るそうです」

 森で狩りをする人ならしてもおかしくないか。

「私からも、聞いてよいですか?」

「ええ、どうぞ」

「貴方の国では、魔法はあるのですか?」

「ないですね。その代わり化学いや、この世界風に言えば錬金術が発達しています」

「錬金術ですか。ほぅ、あれが発達した国という事か」

 この反応を見るに、この世界でも錬金術があるようだ。

 だったら、黒色火薬の作り方を教えたらどうだろう。

 無煙火薬に比べて黒色火薬は比較的に作りやすい物だ。

 無煙火薬になると、綿に濃硝酸と濃硫酸を混ぜた混酸で製造しないといけないので、大変手間が掛かるのだ。その点、黒色火薬なら、木炭に硫黄に硝石を混ぜたら出来るものだ。

 硫黄はこうしてあるぐらいだから、何処かに大量にある筈だ。硝石は動物の排泄物で作る事が出来る。

(将来的には、硝石丘を作りたいな、でも、確か出来るのに五年はかかるとか本に書いてあったな)

 でも、黒色火薬の配合率は知らないんだよな。そこは、研究してもらうしかないか。

「では、錬金術を使って我が国の力になる事はできますか?」

「そうですね。うろ覚えの所が多いですし、役に立つかどうかは試してみないと分からないとしかも申せません。そこの所は御理解を」

「成程、了解しました。では、貴方の知っている錬金術の知識を教えてもらいたい」

 僕は知っている事を全て話した。

 侯爵は僕の話を一言一句聞き洩らさないように傾聴している。

 その姿を見て、本当に知識に貪欲な人だと思う。

(まぁ、悪い人じゃないからいいか)

 僕の話が終ると、侯爵は背もたれにもたれながら、冷めた茶を飲む。

 話しをしていて喉が渇いたので、茶を飲んで喉を潤す。

(もう話せる事は全て話したし、もう帰らせてもらえないかな)

 そう思っていたら、侯爵がカップを置いて、しっかりと椅子に座り僕を見る。

「いやぁ、イノータ殿と話していると、自分が物を知らない凡人だと良く分かります」

「いえいえ、侯爵に比べたら、僕なんてただの若輩者ですよ」

「はっははは、自分の才能というものは、得てして自分では分からないものです」

「そうでしょうか?」

「ええ、そうゆものです」

 侯爵が茶のお代わりを頼もうと手を叩こうとしたら、ゴーンゴーンと鐘の音が聞こえる。

(鐘が鳴っているけど、この部屋窓がないから今が何時か分からないな)

「おお、もうこんな時間か、随分と拘束していたようだ。イノータ殿、申し訳ない」

「いえ、気にしないで下さい」

「お詫びに後日、わたしの屋敷にご招待いたします」

「屋敷にですか?」

 長時間話していたが、別に屋敷に誘われるほどではないぞ。

 これは何か裏が在りそうだ。

(でも、あの大司教みたいに何を考えているか分からないよりも、いいか)

 あの大司教を見た瞬間、僕は何か信用できないと思った。僕達を召喚した時、ライデルが僕達を見る目がどうも怪しいのだ。なので、僕はあの大司教を信じてない。

 まぁ、今はそんな事よりも侯爵の事だ。

(どうしようかな、断っても、また何かしら理由つけて誘われそうだし)

 少し考える。そうしていたら、侯爵が呼ぶ理由を話し出す。

「実を申しますと、近々我が家に知り合いから変わった物が届くのです。それを見て頂けませんか?」

「変わった物?」

「ええ、知り合いもどう使ったら良いのか分からないので、わたしに送るそうです」

「へぇ、それは興味深いですね」

「手紙でもどんな物か書かれているのですが、わたしにもサッパリ分からないのです」

「それで、異世界の知識を持っている僕なら分かるかもしれないと?」

「端的申せばそうです」

 この侯爵は博識だ。それなのに、知らないとは余程珍しい物なのだろう。

 ちょっと興味がでてきた。

「・・・・・・何時頃行けば良いのでしょうか?」

「一週間後に届くそうです。その頃に御呼びいたします」

「分かりました。じゃあ、今日はこれで」

「ええ、今日はありがとうございました」

 侯爵が扉を開けて、研究所の外まで見送ってくれた。

 さて、明日から訓練だ。今日はしっかり休んで、明日に備えよう。







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