第1話 プロローグ
新作です。
誤字修正あれば直ぐに直します。
キ~ンコンカンコ~ン、キンコ~ンカ~ンコン。
「今日はここまで、日直、号令」
「起立、礼」
日直が号令をかけ終わると、授業を教えていた先生が教室から出て行く。
今日はこれで授業は終わりなので、後は担任がSHRをしたら家に帰れる。
僕こと猪田信康は椅子にもたれながら、担任が来るのを待つ。
「今日の授業も難しかったね。猪田君」
隣の席に座っている椎名雪奈さんが机に出している教科書を鞄に詰め込みながら話しかけてきた。
腰まで伸びた茶髪。上品な顔立ち。豊かな胸にくびれた腰。もう、男子なら誰でも振り返りそうなくらいに可憐な女子だ。
僕の高校、修秀大付属高校の男子全員に聞いた我が校美人ランキングには同率一位なる程だ。
性格は大人しく温厚なのでクラスの女子にも慕われている。
そんな女子が隣の席にいるだけで、正直、これからの人生の運を殆ど使い切ったと言える。
僕はあまり話しかける方ではないのだが、何故か椎名さんが積極的に話しかけてくる。
「う、うん、そうだね。今日はついていくだけで精一杯だったね」
「まだ、高校生になって半年しか経ってないけど、今日は理解するのに時間が掛かったな」
椎名さんは苦笑する。
「へぇ、椎名さんでもそんな事あるんだ」
才色兼備で頭の良い人だと思っていたので、そんな事言うので驚いた。
しかし、僕が驚いていると、椎名さんはむくれたように唇を尖らせる。
「もう、その『椎名さん』は止めてって言ったじゃない」
「えっ、でも」
「中学の時に言ったでしょう。下の名前で読んでって」
うちの学校は小学校から大学までエスカレーター制だ。入学するのは大変だが、一旦入学したら留年しない限り、自然と大学までいける。
椎名さんとは中学一年生の時に編入してきて、その頃からの付き合いだ。
「流石に下の名前で呼ぶのは、ちょっと・・・・・・」
「駄目?」
首を傾げて、悲しそうな顔をして僕を見る。
(そ、そんな目で見ないでよ~~)
このままでは、自分が悪者になってしまう。どう言ったら納得してくれるか考えた。
「椎名、あまり猪田君をからかわないの。困っているわよ」
そんな声が後ろから聞こえたので、振り向くとそこには、端正な顔立ちで切れ長の眼差し。烏の濡羽色の髪をポニーテールにした女性がいた。
この人は張月亮と言う中国人と日本人のハーフの女性だ。
性格は冷静で無口な人だ。でも、僕にはよく話し掛けてくる。
実家は凄い富豪だとか、自分も実は事業を手伝っているとか、自分の事を良く話す。
そして一番すごい所は、クラスの中で一番胸が大きい事だ。
制服の上からでも分かる豊満な胸。
例えるなら、椎名さんの胸がメロンで、張さんの胸はスイカだ。
更に言うなら、張さんも美人ランキングには同率で一位だ。
ちなみに、小学校一年生の頃からの付き合いだ。
「ノブもはっきり言わないと駄目よ。そうじゃないと、将来大変よ」
張さんは僕の事をノブと言う。
「そ、そうだね。気をつけるよ」
「まぁ、ノブのそんな優しい所はわたしは好きよ」
張さんはそう言って、僕の横腹を突っつく。
プ二、プ二プ二。
「ほっほほほ、相も変わらず面白いくらいに弾力のある腹ね」
確かに普通の人に比べたら肥満だけどさ、僕の腹を玩具のようにするのは止めて欲しいな。
僕の体型は、それなりに大きい体なのだがぽっこり出ている腹と、不細工な顔なので女子受けしない。
それなのに、この二人と後もう一人の女子計三人は日頃から良く話かけてくる。
学校の男子達も、そんな僕が気に入らないのか、陰で僕の事を『イノブタ』と言っているの知っている。
だが、小学校の頃から今までいじめにあった事はない。
何度か因縁をつけられた事はあったが、次の日には何故か向こうが謝ってくる。
いったい何があったんだろうと思い、一度訊ねた事があるが、訊ねた人達は皆光を宿さない目でガタガタと震えながら。
『ごめんなさいごめんんさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい』
と謝り続けられて話にならなかった。
なので、分からずじまいだ。
「張さん、猪田君が嫌がっているでしょう。止めてあげて」
「ふん、これはわたしとノブとのスキンシップだ。ノブが言うなら止めるが、椎名に言われて止める道理はないな」
「それは、猪田君が優しいから言わないだけで、本当は嫌がっているのよ」
「椎名から見たらそうかもしれないが、ノブは別にいやがってはないわ。ねぇ、ノブ?」
「猪田君、嫌なら嫌って言わないと駄目だよ」
二人は僕を挟んで睨みだした。
僕は二人の間でオロオロしながら、どう宥めようと思った。
そんな二人を余所に僕の所に女子がもう一人来た。
「ノッ君、今日暇? 暇でしょう。じゃあ、買い物に付き合って、今日は服とか小物とか靴とか新しいのを買いたいから、荷物持ちに手伝ってっ!」
有無を言わせず、僕を荷物持ちにさせようとしている女性は真田舞華だ。
肩まで伸ばしたセミロングの黒い髪。中性的な顔立ち、つりあがった目。見ているだけで活動的な人だと分かる。
性格はマイペースで自己主張が激しく、自己中な所がある。それでいて面倒見が良いので男女問わず慕われている。ちなみに、僕に良く話し掛けるもう一人の女子だ。
舞華は家が近くなので、幼稚園の頃から付き合いで、幼なじみだ。
中学の時に読者モデルとして芸能界デビューしており、偶に週刊誌の表紙に写真で載っている。
見た目が花があるので、男性に声を掛けられ、良くデートに行く。
それは学校の男子だけではなく、芸能界のアイドルともしているそうだ。
何で、そんな事が分かるのかと言うと、舞華の家の前に芸能人が乗りそうな車を乗りつけてくる。
舞華かその車に乗って何処かに出かけていく。
夜になると、家に帰って来て、僕の部屋に来て、何があったか事細かく説明してくる。
デートはしているのに、何故か誰とも付き合うという話を聞かないので、何でだろうと思っている。
そして、偶に僕を買い物の荷物持ちにさせる。
「マイちゃん、一応、僕の都合も考えてから誘おうよ」
「え~、いいじゃん。別に暇でしょう?」
「それは暇だけどさ」
「なら、良いじゃん。はい、決定」
「もう~、強引なんだから」
昔から、一度決めたら何があっても曲げないという頑固な所があった。
仕方がないなあと思いつつ、僕は溜息を吐く。
「舞華、ノブの都合を考えずに誘うなっ、それに今日はノブはわたしと用事があるから、お前の買い物はキャンセルだ」
「えっ、そんな約束したっけ?」
「張さんも真田さんも違うわ。今日は猪田君はわたしのとの用事があるから、二人の用事は無理よ」
「いや、椎名さんとも約束していないけど・・・・・・」
僕はそう言っても、椎名さんは聞く耳持ってくれない。
しまいには、三人が僕を挟んで睨み合いになった。
「さ、三人とも、喧嘩は止めようよ」
僕がそう言っても三人は聞く様子はない。
仕方がないので、周りにいるクラスメート達に助けを貰おうと、目を向けると。
「ちっ、また始まったぜ」
「何で、我が校三大美女達が、あいつを巡って喧嘩なんかするんだっ?」
「俺が知るかっ! でも、羨ましい~~」
「やっぱり、時代はぽっちゃりなのか・・・・・・・・」
男子達は僕を睨みながら、好き勝手に言っている。
女子は何も言わないのだが、僕を軽蔑した目で見てくる。
何で、三人があんたの事で喧嘩しているのよと言っているようだ。
これでは、誰も助けてくれない。
僕はどうする事も出来ず、頭を抱える。
最後まで拙作を読んでいただきありがとうございます。