第61話 どうしたものかな
綺麗な顔立ち。切れ長で赤い瞳。肩まで伸びた銀髪。
豊満な胸。くびれた腰。どんっと存在感を主張する尻。
その見事なプロポーションの肢体を包む露出が多い黒い服。
簡素な肩当てがついた赤い裏地の黒いマントを羽織っていた。
「お初にお目にかかります。ワタクシはカーミラ=ドゥ=ブルロワ=ヴァルゴー二ュと申します。以後お見知りおきを」
綺麗なカーテシーをするカーミラさん。
僕の見た目から、吸血鬼ではないと直ぐに分かっている筈なのにするとは、なかなか出来た人物のようだ。
「初めまして、リウイと申します」
僕のカーテシーをした。
それを見て、カーミラさんはル・ボンさんに尋ねた。
「御父様、こちらの方は?」
「シエーラの友人のハバキ様の息子だ」
「お名前でしたらうかがっていましたが、この者がそうですか」
「そして、この度は魔国を代表して、交渉にきたのだ」
「交渉?」
「そうだ。このオルピー樹海に住む全ての種族を魔国の領民にするために来たのだ」
ル・ボンさん。ちょっとあけすけすぎませんか?
その言い方だと、服従しろと言っているみたいじゃないですか。
「成程。それで魔人族の者が此処にいるのですね」
えっ!? 怒らないの?
普通は「無礼者! そのような無礼な口を叩けない様にしてくれる!」とか言って、襲いかかるものでは?
しかし、カーミラさんは何とも思っていない顔をしていた。
「それで、公王陛下は何と?」
「魔国の支配下に入る事お決めになられた」
「…………」
何とも言えない顔をするカーミラさん。
その顔を見ると、僕は何にも言えなかった。
内乱が起こった事で、魔国の支配を受け入れる事を屈辱だと思っているのか。それとも、妥当な判断だと思っているのか、僕には分からない。
「リウイ殿」
「はい。なんでしょうか?」
「わたしは娘と話したい事がありますので、申し訳ないが客間に行ってくれぬか?」
多分、婚約の件で話しをするのだろう。
「行くのは構いませんが、案内をつけてくれませんか。じゃないと、
道に迷いそうなので」
「そうだな」
ル・ボンさんはそう言って、手を叩いた。
すると、突然何もない所からメイドが現れた。
「おおっ!?」
ここは忍者屋敷なのか?
「客人を客間に案内しろ」
「畏まりました」
僕の驚きをよそに、ル・ボンさんはメイドに告げる。
「では、カーミラ。参ろうぞ」
「わかりました」
二人は何処かに行ってしまった。
今年の更新はこれで終わりです。皆様、良いお年を