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第60話  対談

 案内の人と共に、僕達は謁見の間の前まで来た。 

 謁見する前に、僕は身なりを整える。

 無礼にならない様に、身なりは綺麗にしないと駄目だ。

 昔の偉人が小さい時、部屋を掃除しないで、汚くしていたので親が説教したが、その偉人は「国の為に働く者は自分の部屋の掃除などせず、国を掃除する者だ」と言う事を言ったそうだ。

 それを聞いて、それはどうだろうと思った。

 部屋は自分の心が現れると、心理学の本に書いてあった。

 それは、つまり部屋が汚いという事は、その人の心は澱んでいるという事だ。

 なので、前世の自分の部屋は綺麗にしていた。

 ただ、マイちゃんには「こんなに部屋を綺麗にされたら、掃除に来れないじゃん!」と意味が分からない事を言っていた。

 ちなみに、転生して体を自由に動かせる様になった時、部屋の掃除をしようとしたら、シャリュ達に止められた。なので、掃除はしていない。

「どうかしましたか?」

 昔の事を考えていると、アマルティアが首を傾げながら訊いてきた。

「何でもない。それよりも、どうだ?」

 その場で一回転して、二人に訊いた。

「問題ありません」

「ええ、とっても良くお似合いです」

 アリアンは思った通りに、アマルティアは頬を赤らめながら言う。

「そうか。手伝ってくれて感謝する」

「そんな。別に感謝される事はしていませんよ」

 何故、アマルティアが僕の身なりを正すのを手伝ってくれたのかと言うと、本人が手伝うと言ってくれたからだ。

 最初は断わったのだが、なかば強引に手伝ってきた。 

 アリアンも止めようとはしないで「手伝うくらい良いではありませんか」言ってきた。

 それで、良いのか護衛! と思ったが、僕を害する気持はなさそうだったので、好きにさせていた。

 僕達の準備が終わると、案内の人が「そろそろよろしいですか?」と聞いてきたので、僕達

はお互いを見て頷いて、案内の人を見た。

「では、参ります」

 案内の人が「開門」と言うと、扉が開いた。

 開いた扉から中に入ると、紫色の建材で出来た部屋が僕達を出迎えた。

 床も壁も天井を支える柱ですら、同じ材質だ。

 どんな材質で作られたのか気になるが、今は対談の方が先だと思い、僕は前を見た。

 視線の先には、この部屋の建材と同じ材質で出来た階段があり、その階段を数段歩いた所にル・ボンさんが居た。

 ル・ボンさんは僕を見ると、目で微笑んだ。

 そして、階段の頂上にある座席には男性が座っていた。

 綺麗な顔立ち。赤い瞳。銀色の髪を短髪にしていた。

 裏地が赤く黒いマントを羽織り、何処かの国の王が着ていそうな衣装を身に包んでいた。

「陛下。魔国の御使者の方々をお連れしました」

「ご苦労。下がって良いぞ」

「はっ」

 僕達を案内してくれた人は、陛下と呼んだ人に一礼すると、その場を後にした。

 扉が閉まる音がして僕達とル・ボンさんと陛下と呼ばれた人以外居なくなると、陛下と呼ばれた人が口を開いた。

「余はチェイシル公国の公王クルースニク=ドゥ=クルトシュ=カボイン=ナイトロードである。よくぞ、我ら吸血鬼族の都に来られた。森の外から来た魔国の王子よ」

 ふむ。その台詞から、僕がこの樹海に来た理由をル・ボンさんから訊いているようだ。

「お初にお目にかかります。公王陛下」

 僕は跪くべきかどうか考えていると、クルースニク様が手で制した。

「貴殿は我が国の臣民ではない。故に、頭を下げるだけで、十分だ」

 なるほど。話しの分かる人のようだ。

 なので、僕は言われた通りに頭を下げた。他の二人もどうように頭を下げた。

 それを見て、クルースニク様は満足そうに頷いた。

「貴殿がこの樹海に来た目的は概ね、そこにいるル・ボンから訊いている。こちらも情勢が落ち着いたので、後日、改めて謝罪の使者を送ろう」

「ありがとございます」

 これで頼まれ件は解決だ。後は僕の話しをするだけだ。


「では、これで話は終わったという事で良いか?」

「恐れながら、もう一つお話ししたい儀があります」

 僕がそう言うと、アリアンとアマルティアが、まだ何か話す事があったけという顔をした。

 二人の視線を身に受けながら、僕は言う。

「このような事があったのは、お互い交流が絶えていたからこそ、起こった悲劇だと思います」

「その通りだ」

「ですので、これを機にして、十二氏族の者達と交流を深めるというのは如何でしようか?」

「ふむ。確かに、そちの言う通りだ。だが、我らには伝手がない」

「ですので、不肖この身がそのお手伝いをしたいと思います」

「ほぅ」

 クルースニク様は面白い物を見る目になった。

 この対談が終わり、樹海を出たら十二氏族の者達と交流が出来る様になる。

 なので、伝手は出来る。少なくとも、今まで交流がなく襲撃して、何の音沙汰無しの吸血鬼族よりかは話が出来る。

 そして、僕はこの話を樹海で暮らしている全ての種族に話すつもりだ。

 話しをして、相手はどんな反応をするか分からないが、少なくとも嫌がりはしないだろう。

 この森では手に入らない物が手に入るのだから。

 そして、徐々に僕達が用意する物無しでは生活できない位にまで浸透させる。

 後は僕達の意見を受け入れる様にして、最終的にはこの樹海を領地に組み込むつもりだ。

 まずは、クルースニク公王に話して反応を見る事にする。

 どんな返事をするかと思っていると、予想外の答えが返ってきた。

「……成程。いずれはこの樹海の全てを領地に組み込むつもりなのだな」

 その言葉を聞いて、僕は冷や汗を流した。

 あの会話だけで、こちらの意図を読むとは、何て凄い計算だ

 もはや、予知みたいじゃないか。

 僕は生唾を飲み込み、話し出す。

「そうなった場合。公王陛下はどうなさいますか?」

 嘘をついても、話を誤魔化しても無駄だと思い、率直に思った事を尋ねた。

 クルースニク様は頬杖を付きながら答えた。

「滅ぼすつもりなら抵抗するが、そなたの領地の領民になれと言うのであれば、是非もない。従おう」

「えっ!?」

 聞き間違いか、僕の支配を受け入れるという感じの言葉が聞こえた気がする。

「……あの、もう一度言ってくれますか?」

「そなたの配下になろう、と言ったのだ」

 お、おおおおおおぉっ、マジか!?

 実は嘘とか、ないよね!!

 落ち着け、落ち着くんだ僕。ここは何故配下になるのか、理由を聞かないと。

「ど、どうして、でしょうか?」

「何、簡単な事だ。先の内乱で我ら吸血鬼族はかなりの数を失った。故に、何処かの勢力と同盟又は配下になるのは決まっていたのだ」

「成程」

 それなら、納得だ。

「次に、我らが魔国に迎合した事で、樹海にも変化が訪れる筈だ」

「変化ですか?」

「そうだ。故に、我らはそなたの下に降る」

 変化か。急激な変化は混乱をもたらす。そこら辺はちゃんと手綱を握っておくとしよう。

「話しはこれで終わりだな。余はこれから別の者と話しがある。今日の事は、後日、改めて話そう」

 そう言って、クルースニク様は玉座を立ち、謁見の間から出ていった。

 僕はクルースニク様を見送ると、ル・ボンさんと共に謁見の間を出た。

 部屋を出ると、扉の前に女性が立っていた。

「御父様」

「おや、カーミラではなないか」

 おとうさま? と言う事は、この人は。

「リウイ殿。紹介しよう。わたしの娘で名をカーミラという」

 ル・ボンさんが紹介したカーミラという女性は、僕達を見て頭を下げた。








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