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第57話 話しを聞いてみました

 ル・ボンさんの後に続き、『奥地』の中に入っていく。

 こうやって森の中に入ると、あれだな。本当にジ〇リの風の谷に出てきた森のようだ。

 得体のしれない木が沢山生い茂り、時折トンボの様な身体で顔が蜥蜴の魔獣とか、テントウ虫のような魔獣が飛んでいた。

 魔獣の姿が見えたので、身構えていると。

「大丈夫です。あの魔獣達は、夜行性ですが温厚な性質です。危害を加えなければ、何もしてきませんよ」

 ル・ボンさんにそう言われて、僕達は身構えるのを止める。

 そして、ル・ボンさんの後に付いて行き歩く事数十分。

「ご覧ください。これが我が屋敷です」

 そう言って、ル・ボンさんが指差した先には、屋敷があった。

 十二氏族の人達が『奥地』と呼んでいる辺鄙な樹海の中で洋館が建っていた。

 これ、本当の建物だよな? 実は幻術であるように見せている訳じゃあないよなと思えるくらいに、立派な外観であった。

 僕達が屋敷の前の門に着くと、鉄門が音を立てて開く。

 そこから使用人と思われる人が立っていた。

 オシャレに左目にモノクルを付けた御年配の方であった。

「お帰りなさいませ。旦那様」

「うむ。客人を連れてきた。粗相のないようにな。アルフレッド」

「畏まりました」

 この御年配の方はアルフレッドと言うようだ。

 指示を終えると、ル・ボンさんは振り返った。

「わたしは先に応接間にて待たせてもらう。皆様方はゆるりと参られよ」

「はい。そうさせて頂きます」

「では、失礼」

 ル・ボンさんはそう言って、屋敷に入って行った。

 僕達はその背を見送り、アルフレッドさんを見る。

「では、ご案内いたしますので、どうぞ、わたくしめのあとに続いて下さい」

「了解した」

 僕達はアルフレッドさんの後に続いた。

 アーヌル達は流石にサイズの問題と、万が一の事を考えて、外で待機してもらった。

 なので、屋敷に入るのは僕とアリアンとアマルティアの三人だ。

 屋敷に入ると、アルフレッド以外の執事とメイドさん達が列を作っていた。

「「「ようこそ、当屋敷へ」」」

 この屋敷の使用人達は僕達に頭を下げる。

 アニメやドラマとかでこういうのを見た事があるけど、本当にしている所を見てるとは思わなかった。

 実家だと、こうして出迎えてくれる事はなかった。というよりも、何処かに出掛けて戻ってくると、イザドラ姉上とヘル姉さんのどちらかが出迎えてくれた。

 なので、こうして使用人達に出迎えられるというのは、経験した事がない。

 僕達はその使用人達の間を歩きながら、アルフレッドさんの後に付いて行くと画廊に入る。

「へぇ、絵画を飾っているんだ」

「旦那様は絵を描くのが趣味でして、良くこの大陸に行きその風景を描いています」

「じゃあ、この絵は全部ル・ボンの手書きなんですね」

「はい。その通りです」

 そのル・ボンさんが書いた絵で飾られた画廊を通り、応接間の前に着いた。

「旦那様。お客様をお連れしました」

『うむ。お通ししろ』

 部屋の中から、ル・ボンさんの声が聞こえてきた。

 アルフレッドさんは扉を開けて、僕達を通した。

 部屋の中に入ると、ソファーに座り茶を飲んでいるル・ボンさんがいた。

 隣に女性がいるけど、多分家族か何かだろう。

「ご苦労だった。アルフレッド」

「いえ、では、わたくしはこれで」

 アルフレッドは頭を下げると、部屋から出て行った。

「さぁ、御客人方。どうぞ、好きな所に座りたまえ」

「では、お言葉に甘えて」

 僕達はル・ボンさんの対面のソファーに座る。僕が座ると、右にアリアン、左にアマルティアが座る。

 五人掛けのソファーなので、座るのは問題ないのだが、どうして二人は僕の隣に座るかな。

 別に他にソファーはあるのだけど。

「わたしは護衛ですから」

 僕の思考を呼んだのか、アリアンがそう言ってきた。

 じゃあ、アマルティアはどうかと思い見ると。

「一人で座るのは寂しいので、駄目ですか?」

 そんな上目遣いで見ないでよ。

 駄目と言えないじゃないか。

「・・・・・・好きにしていいよ」

「はいっ」

 喜ぶアマルティア。

 おっと、その笑みに見惚れる所だった。

 そう思って居ると、ドアがノックされた。ル・ボンさんが「入りたまえ」と言うと、扉が開く。

 そこにはカートに何かを乗せたメイドが居た。

 メイドは茶器を僕達の前に置くと、ポットが傾き中に入っている液体を見た。

 僕はそれを見て、ギョッとした。

 だって、ポットから注がれた液体の色は緑色だったからだ。

 もしかして、緑茶? 茶を飲めるようになってからは飲めるようになったけど、ここでも茶葉が採れるのか。メイドがカップをソーサーごと僕達の前に置き、一礼して部屋から出て行った。

 そして、更に驚いたのが、茶菓子と一緒に置かれたのは、ミルクと砂糖だった。

 砂糖は上質な白砂糖ではないが、黒砂糖を玉にしていた。

 ミルクは何のミルクは分からないが、こうして出している所を見ると、この緑茶に入れろという事だろう。あれだ。某魔砲少女に出て来る提督が飲んでいる茶を飲むと言う事か。

 久しぶりに見るので、驚いたが僕は躊躇なくミルクと、砂糖玉を入れてティースプーンで掻き混ぜる。

 カップを持って飲んだ。うん。結構いけるな。

 カップを置くと、アマルティアが茶を凝視していた。

「どうかしたの?」

「い、いえ、緑色の茶など初めて見たので、少々驚いています」

「そちらでは、茶を飲むのか?」

「ええ、青茶といいます」

 それって確か、烏龍茶だったはず。成程十二氏族では茶葉を半発酵させるのか。

 同じ土地でも茶葉一つでも違うんだな。

「結構美味しいから、飲んでみたらどうだ?」

「はい」

 アマルティアはカップを持って飲んでみた。一口飲んでみたら、好みだったのか、もう一口飲む。

「如何かな? 我が領地で採れた茶の味は。今年の初摘みなのだよ」

「とても、美味しいです」

「それは良かった」

 ル・ボンさんは茶を飲むと、カップをソーサーに置いた。

「改めて名乗らせてもらおうか。わたしはこの屋敷の主で吸血鬼の王クルースニク=ドゥ=クルトシュ=カボイン=ナイトロードの臣下であるシャルル=ドゥ=ブルロワ=ヴァルゴーニュだ。そして隣に居るのが妻のシエーラ=ドゥ=バト―リ=ヴァルゴーニュだ」

 ル・ボンさんがそう紹介したのは、ミディアムヘヤ―の銀髪。赤い瞳。女性らしいメリハリがあるボデイ。綺麗な顔立ちの佳人だ。

「他にも一人娘がいるのだが、今はこの屋敷にいないので、容赦してほしい」

「いえ、お構いなく」

「それは助かる。さて、ここまで御足労頂いたのだ。本題に入るとしよう」

 僕達は居住まいを正した。

「この樹海、そちらは何と言っているか知らぬが我らは『オルレンピエーニュ樹海』と呼んでいる長いので略して『オルピー樹海』とも呼ばれている」

 オルピー樹海。何かケルピーの生息地のように聞こえる。

「この『オルピー樹海』には沢山の先住民族が暮らしている。巨人族、アラクネ、ワーライオンインセク、ダークエルフ、天人族、デュラハン、そしてリウイ殿が連れてきたアイゼンブルート族、最後に我ら吸血鬼族の計九つの種族が生息しています。それ故、日頃から小競り合いが絶えません」

 まぁ、それは当然だよな。この樹海がどれだけ広いか知らないが、九つの種族も生息していたら、毎日小競り合いが起こってもおかしくない。

 それにしても、エアレーの情報だと四つの種族しかいないとか言っていたが、まだ他にも五種族も居たのか。

「その中でも、我ら吸血鬼一族は特に好戦的でした」

「でした?」

「ええ、先王であるクドラク=ドゥ=ノルフ=ヴォワル=ナイトロード様が〝我ら吸血鬼族こそがこの地の支配者なり〟という考えを持っているお方でして、しょっちゅう他種族と争っていました」

「はぁ、独裁者みたいな感じかな」

「なので、他種族と戦っていたら、森の外から獣人が現れたのです。その者達が先王に交渉を持ちかけてきたのです。先王も最初は話を聞いていたのですが、途中から交渉が難航というか亀裂が生じまして、最後には」

「決裂したと?」

 ル・ボンさんは頷いた。

「それに怒った先王は部族の者達に、森の外に居る部族の集落を手あたり次第襲えと命じまして」

「成程。それで襲撃を受けたのですね」

「はい。先王の命とは言え、無用な争いをしてしまい申し訳ない」

 ル・ボンさんは頭を下げた。

「いえ、、気にしないでください。そんな命令を出した先王が悪いのですから」

「そう言っていただけると助かります」

「いやぁ、本当の事ですから」

「それで続きを」

「はい。元々、先王の行い頭を痛めていた臣下達も多く、中でも弟君で在られ当時は公爵であったクルースニク様が苦言を呈したのですが、先王は聞く耳を持ちませんでした。更にはあろう事か、弟君を害そうとしたのです」

「兄弟で殺し合いとか、悲惨だな」

「それにより、クルースニク様と先王との間に戦いが起こりまして、そして勝ったのが。弟君のクルースニク様です」

「成程」

「それに伴い、内部改革を行いましたので、そちらに襲撃のお詫びの使者を向かわせる余裕がなかったのです」

「そうですか」

 ここまで一気に聞いたので、一息つくために、僕は茶を飲んで喉を潤した。









 

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