第54話 やって来ました。同行者が一人増えた。
霊亀の背に乗ってやってきました僕達。
着くころを見計らい、エアレー族長に出迎えに来てくれるように頼んだけど、アーヌル達と霊亀を見て驚いているようだった。
僕達を降ろすと、霊亀は首を持ち上げた。
『ではな、私はここまでだ。後はお主の才覚次第だ』
「ああ、助かった。ありがとう」
『何、大した事はしていない。また、縁があれば会おうぞ』
そう言って、霊亀は振り返り『清海』に身を沈めた。
僕は完全に見えなくなるまで、その姿を見送った。
霊亀の姿が完全に見えなくなると、僕は振り返りエアレーを見る。
「待たせたな」
「いやいや、こうして来ただけで十分じゃよ」
エアレーが手を横に振りながら言う。
そう言うなら、良い事にしよう。
「・・・・・・・・・(ジーッ)」
何故か、エアレーの隣にいる女性を僕をジッと見ているが、気にしないでおこう。
エアレーの隣に居るという事は、部族の中でも高位なのかそれとも親族なのか分からないが、その佇まいから、かなり出来ると思う。多分。
黒い髪を背中まで伸ばし、その隙間から額に小さい白い角があった。
紫色の瞳。可愛い顔立ち。
腰に剣を差しているので、剣士なのだろう。
驚くのは、魅惑的なプロポーションだ。
胸はボンっと突き出て、腰はキュッとしまっており、尻もボンと突き出ている。
目が合ったので、会釈した。
「僕はリウイ。貴方は?」
「わ、わたしは、アマルティアと申します。エアレーの孫です」
顔に出ていたのかな? 誰だろう思っていたのが分かったのかな?
「ところで、リウイ殿」
「何か?」
「このまま『奥地』に行くのは、流石に難しいじゃろうし、一度我が部族の領土に来て、準備を整えぬか?」
「そうだな・・・・・・」
準備と言っても、アーヌル達は食料は要らないし、準備と言っても特にする事はないのだが。
「マスター」
アリアンが僕の傍に来た。
なので、小声で話す。
「なに?」
「この者が封鎖した者と結託していないという証拠はありません。ここは向こうの領地に寄らず、このまま向かった方がよろしいかと」
「だが、封鎖されていると情報をくれたのだから、ある程度は信じても良いと思うが」
「そう思わせて、密かに封鎖している四部族の者達を呼んでいるかもしれません」
ふむ。その可能性もあるか。
「正直に言って、ここは敵地に等しい場所です。味方と言える者は皆無と思った方が良いと思います」
「確かに、そうだな」
「幸いわたし達は休憩が必要なほど疲れている訳ではありません。ですので、道案内の者だけもらい、このまま『奥地』に向かいましょう」
「・・・・・・・そうだな。そうしよう」
ここまで来て休んでいる所を奇襲されるなんて、目も当てられないからな。
そうと決めると、僕は前を向いた。
「いや、このまま『奥地』に向かいたいと思う。なので、道案内の者をくれるか?」
「い、いや、しかし」
「さっさと解決して、十二氏族と正式に交流を深めた方がいいからな」
「う、うむ。そうまで言うので、あれば仕方がないな」
「なので、誰でも良いので『奥地』への道のりを案内する者を用意してくれ」
「あい。わかった。では」
「御爺様。わたしが」
エアレーが誰かを呼ぼうしたら、隣にいるアマルティアが手を挙げた。
「ティア? お主がか?」
「はい。わたしも『奥地』までの道のりでしたら、十分に案内出来ますから」
「そうか」
エアレーは顎髭を撫でながら少し考えている。
「・・・・・・あい、わかった。お主の好きにせよ」
「っ⁉ ありがとうございます!」
頭を下げるアマルティア。
別に誰でも良かったのだが。まぁ、いいか。
「では、よろしく頼む」
「はい。こちらこそよろしくお願いします」
一礼するアマルティア。
そして、僕は連れてきた魔獣に跨り出発した。