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第14話 侯爵の研究所を訪ねる

 僕はアスクレイ侯爵に連れられて、侯爵の研究所に向かう。

 研究所は王宮内にあり、僕が居た会議室から歩いて数分もしない所にある。

 その部屋の前に来て、異臭を感じて鼻を覆う。

「な、なんですか。この臭いは?」

「わたしの研究所では国の発展に貢献出来る物を日夜研究しております。その際に生まれる臭いでしょう。これでも換気はしているのですが、どうも換気が追い付かないのです」

「成程、研究の際に出来た匂いですか。・・・・・・んっ、この臭い、何処かで?」

 良くこの臭いを嗅いでみたら、何処かで嗅いだ覚えがある。

「では、少々臭うかもしれませんが、そこは我慢していただけますかな」

 アスクレイ侯爵は扉を開けた。すると、扉越しで嗅いだ臭いが、扉が開いた事で先程の数倍強い臭いが漂い出してきた。

「ふんふん、・・・・・・この臭いは、硫黄?」

「イオウ? 何ですかな。それは?」

「僕の居た国では、こんな臭いを出す元素いや物質の事を言うのです」

 この世界の人に元素なんて言っても、分からないだろうから物質というしかない。

 アスクレイ侯爵は机に置かれていた黄色い結晶体を手に取り僕に見せた。

「ほぅ、貴方の国ではイオウと言うのですか、この世界ではソンファーと言われるのです」

「ソンファーと言うのですか」

「ええ、何でもこの物質で火を点ける石に使っていたから、その名が付いたそうです」

「へぇ、そうなのですか」

 僕は研究所の中を見た。

 何人もローブを着た人が大きな培養槽の前であれこれと話している。その培養槽の中は液体で満たされその中には、管で繋がれた宝石がある。

 その他にも、紙に液体を垂らして色が変わるかをチェックしている人もいれば、集団が輪になって議論している人達も居た。

「ささ、こちらへ」

 アスクレイ侯爵が案内され、僕は研究所の一番奥にある部屋に向かう。

 その途中、研究所に居た人達にジロジロ見られた。

(この制服だと、目立つな)

 自分達が着ている物よりも、派手な服だし材質も見当がつかないので、気になっているのだろう。

 無遠慮に見られる視線を肌で感じながら、部屋の前に着く。

「ここです。今開けるので、少々お待ちを」

 侯爵は懐を漁り、カギを出した。

 だが、そのカギを見て、僕は疑問に思った。

(この部屋、鍵穴なんてないぞ?)

 その疑問は直ぐにかき消えた。

 侯爵がカギを扉に刺すと、カギはズブズブッと扉に沈んでいく。そして、扉がノブを回していないのに自然と開いた。

「おおおおおおっ、凄い‼」

 これぞ魔法と言える物を、この世界で見たかもしれない。

「さぁさぁ、どうぞ。何もないつまらない部屋ですが」

「では、失礼します」

 僕は部屋の中に入った。最初は薄暗く何があるか分からなかった。すると、部屋の天井に吊るされたシャンデリアに明かりが灯る。

 部屋の中が見えたので見てみると、それほど大きくない部屋だ。大きさ的に言えば、四十畳ぐらいだ。

 テーブルと椅子が四つあるだけだ。

 僕はその椅子の一つに座り、侯爵は僕と対面の位置に座る。

「今、茶を持ってこさせますので、少々お待ちを」

「お構いなく」

「いえいえ、お話を聞くのですから、これくらいはしませんと」

 侯爵が手を叩くと、僕達が入って来た扉とは別に扉が現れた。その扉が開き、お盆にティーセットを乗せたメイドさんがやってきた。

「うん?」

 よく見ると、このメイドさんは肌が雪の様に白く、銀髪に真紅の瞳をしていた。

(それに、立ち振る舞いがこの城のメイドさんよりも、何か機械的に見えるな)

 そう思っている内に、メイドさんは僕と侯爵の前にティーカップを置き、一礼して来た扉へと戻る。

 メイドさんが扉を閉めると、扉は消えてしまった。

 僕はその光景を呆然と見ていたら、侯爵が茶を勧めて来た。

「さぁ、どうぞ、我が国で一番有名な茶園で作られた今年一番の茶です」

「・・・・・・いただきます」

 僕はティーカップをソーサーごと持って、カップに手をかけて飲む。

「美味しいですね」

 これは本当にそう思った。

 僕の家は食べ物に金を掛けるので、茶にしてもパックなどではなく。ちゃんとした茶葉で飲んでいる。

 なので、食には煩い方だ。

 この茶は、僕が今まで飲んだ中でも、かなり上位に入る。

「気にいただけて、何よりです」

 侯爵は嬉しそうに顔を緩ませて、茶を飲む。

「先程のメイドさんも王宮のですか?」

「いえ、あれはわたし付きのメイドです」

 茶を飲みながら、僕は考えた。

(こんな研究所を王宮内に持っているという事は、この人はこの国でもかなりの権力を持っている人と思った方がいいのだろうな。侯爵って確か爵位で言えば、上から二番目から三番目位の爵位だった筈)

 国によって爵位の順位は違うので、そこは聞いた方が良いだろう。

「侯爵と言う事ですから、公爵の下にある爵位ですよね?」

「いえ、辺境伯がありますので、わたしの爵位は三番目になります」

「他の爵位はなにがありますか?」

「他は伯爵、準伯爵、子爵、男爵、最後に卿ですな」

 この国の爵位は、公爵、辺境伯、侯爵、伯爵、準伯爵、子爵、男爵、卿の順のようだ。

 これだけで、この国の爵位の上下関係が分かった。







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